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カンヌ、ベルリンに並ぶ世界三大映画祭。ベネチア国際映画祭特集

2018.08.29(Wed) | 足立美由紀

カンヌ、ベルリンに並ぶ世界三大映画祭であるベネチア国際映画祭が、8月29日(水)~9月8日(土)の会期で行われます。オープニングは『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督×ライアン・ゴズリングが再タッグした新作映画『ファースト・マン』。そして塚本晋也監督の時代劇『斬、』がコンペティション部門に選出されるなど、賞レースにも期待がかかります。ということで今回はベネチア国際映画祭特集です!

夢と切なさが詰まった極上のミュージカル!『ラ・ラ・ランド』
ラ・ラ・ランド
セッションの新鋭デイミアン・チャゼル監督がライアン・ゴズリング&エマ・ストーンを主演につむぐ極上のミュージカル。第73回ベネチア国際映画祭ではエマ・ストーンがヴォルピ杯(最優秀女優賞)を受賞しています。

有名女優になることを夢見るミア(ストーン)は、最悪な出会い方をした売れないジャズピアニストのセバスチャン(ゴズリング)と恋に落ちます。2人が美しい夜景をバックに披露するダンスでは、一生に一度の恋に浮き立つ幸福感がスクリーンいっぱいに広がりうっとり。しかしその後、方向性の違いから2人は徐々にすれ違い始め……。

当初はジャズを扱ったミュージカル映画ということで資金調達に苦労したという本作。「ミュージカルやジャズが嫌いな人こそ観て、新たな発見をして欲しい」とチャゼル監督は語っています。その言葉通り、華やかなショービスジネスの街・ハリウッドの狂騒感や夢追い人たちの想いが、歌やダンスで表現されることによってダイレクトに響いてくる面白さは体験してこそ。本作の最大の見どころとなった、ロサンゼルスの高速道路上での6分間のワンカットシーンもお楽しみに!
人生を取り戻そうとした女性の実話『あなたを抱きしめる日まで』
あなたを抱きしめる日まで
マーティン・シックススミスによるベストセラー小説を映画化。幼い頃に生き別れた息子を探し続けた女性の、愛と哀しみをつづった感動の実話です。第70回ベネチア国際映画祭、最優秀脚本賞受賞作品。

アイルランド。10代で妊娠をした未婚女性フィロミナ(ジュディ・デンチ)は、父親によって修道院に入れられてしまいます。そして産まれた息子アンソニーは、3歳の時に養子に出され、遠い地に。その後フィロミナは結婚をして別の人生を歩みますが、思い悩んだ末50年間隠し続けてきた事実を娘に告げるのです。

元エリート記者というマーティン(スティーブ・クーガン)と共に、アメリカに渡ったというアンソニーを探す旅に出るフィロミナ。苦悩する高齢女性ながらとぼけたところもあるフィロミナを演じたジュディ・デンチと、落ちぶれ記者マーティンに扮したスティーブ・クーガンのユーモラスな掛け合いが笑いを誘います。次第に明らかになる事実は衝撃的ですが、本作でアカデミー賞(主演女優賞)にもノミネートされたデンチの熱演が切なくもしみじみとした感動を与えてくれる作品です。
愛する者を失った1人の男の孤独を耽美に映す『シングルマン』
シングルマン
世界的ファッションデザイナー、トム・フォードによる初監督作品。ゲイの作家としても知られるクリストファー・イシャーウッドの小説を原作としています。長年のパートナーを事故で亡くし、意気消沈するゲイの男性を名優コリン・ファースがセクシーに好演。第66回ベネチア国際映画祭ではファースがヴォルピ杯(主演男優賞)を受賞した他、フォードの初メガホンが世界でも高く評価されています。

大学教授のジョージ(ファース)は、16年間共に過ごしたパートナー、ジム(マシュー・グッド)を事故で亡くした喪失感から立ち直れず、自殺を企てます。そんな彼を引き留めるかのように、体を重ねたこともある古い友人シャーロット(ジュリアン・ムーア)や、教え子ケニー(ニコラス・ホルト)が急接近してきて。

机の上はもちろん貸金庫の中身までもキッチリと整理し、自分の葬式でしめるネクタイの結び目まで遺言で指定するジョージ。コリン・ファースは生真面目な英国人男性ジョージを完璧に体現しています。トム・フォードはそのカリスマ的芸術センスを映画製作においても発揮。ふとしたきっかけで世界の美しさに覚醒するという孤独な中年男性の美意識を、ストイックな美しさでスクリーンに刻み付けています。
誰もがいつか失う魂の重さ『21グラム』
21グラム
ペインの鬼才アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督が放つ、珠玉の人間ドラマ。第60回ベネチア国際映画祭でショーン・ペンがヴォルピ杯(主演男優賞)を受賞した作品です。

重い心臓病を抱える大学教授の(ショーン・ペン)。建築家の夫と可愛い2人の娘を生きがいとして暮らすクリスティーナ(ナオミ・ワッツ)。そして信心深い前科者のジャック(ベニチオ・デル・トロ)。見ず知らずの3人の男女の運命が、ある事件によって鋭い痛みを伴い交差します。

本作では「命を失う時に、人は21グラムだけ軽くなる」という提唱をテーマに、魂、愛、死、罪悪感など生きていく上で背負う“人生の重さ”について、極限まで突き詰められて描かれています。現在、過去と小刻みに時間軸を行き来して描かれるストーリーと、心情を全て映し撮ろうとするかのように肉薄するカメラワーク。その手持ちカメラによる不安定な映像のように、やるせない運命に揺れ動く登場人物たちを実力派俳優たちが圧巻の演技で魅せています。
園子温監督が描く、震災直後の日本をサバイブする若者の青春ドラマ『ヒミズ』
ヒミズ
「行け!稲中卓球部」の漫画家・古谷実の衝撃的コミックを、愛のむきだしの園子温監督が実写化。舞台を震災直後の日本に移し、絶望と狂気に陥っていく若者の姿を描き出しています。主演を務めた染谷将太と二階堂ふみは、第64回ベネチア国際映画祭でマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)をW受賞。世界が絶賛した青春ドラマです。

被災地で暮らす15歳の祐一(染谷)の夢は「モグラ(=ヒミズ)のように一生ひっそりと暮らす」こと。そんな祐一を追いかけまわす景子(二階堂)は、「愛する人を守り守られ、楽しく過ごす」ことを夢見ています。しかしある事件から2人の運命は大きく横道へとそれ始め……。

祐一と景子は、日常的に親から肉体的にも精神的にも虐待されています。2人が “普通の生活”や“愛ある日々”を願うのは、現実があまりに夢とは真逆で過酷だから。めちゃくちゃな環境の中で明日が見えない虚無感に苛まれながらも、必死に生きようとする2人の姿が胸に刺さります。またその一方で絶望の中に薫るかすかな希望……。切なくてパワフルな2人の姿に、誰しも温かい涙を流すハズ!

1932年に世界最大級の国際美術展覧会「ベネチア・ビエンナーレ」の1部門として始まった、ベネチア国際映画祭。世界最古の映画祭としても知られています。まずは今回ご紹介した5作品で、由緒正しきベネチア国際映画祭の風を感じてみてはいかがでしょうか?

Writer | 足立美由紀

フリーライター&エディター。某インターネットプロバイダで映画情報サイトを立ち上げた後、フリーランスへ。現在は各種情報誌&劇場用映画情報誌などの紙媒体、ネット情報サービスほかにて映画レビューや俳優・監督のインタビュー記事を執筆。時には映画パンフレットのお手伝いも!試写室と自宅を往復する毎日です。

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