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悪い女だからこそ存在価値はある!ヴィラン女子上等映画!

2018.09.05(Wed) | 仲谷暢之

最近時折耳にしたり目にするのが「ヴィラン」。悪役や怪人、悪者のことを指す言葉。アメコミなどでは常識的な言葉なんですが、よく考えたら一般映画にも多くのヴィランがいます。しかも女性で!そこで今回は悪役女性をヴィラン女子と名付け、映画の中で悪の華として黒い魅力を発揮している、映画5本を紹介します。

『レディ・ガイ』
レディ・ガイ
 映画見てびっくり。なんという設定!70年代の劇画漫画みたいやなぁと(実際に映画になる前に劇画化されてる)。そしてさすがウォルター・ヒル!老いてもなお、これほどの荒削りすぎる映画を作ることのできるパワーに驚嘆。

 凄腕の殺し屋フランクが銃撃戦で負傷、意識を失う。次に目覚めた時、なんと女性になっていた!彼は眠っている間に謎の女医に性転換手術を施されていたのだった!なぜ自分は女に!?そして、なぜ女医は自分を女にしたのか!?そこには驚きの復讐劇が隠されていた~~~~っ!ってな仮面ライダー的な話なんですが、不思議な映画でした。

 男から女に、望んでもいないのに改造されるフランクを演じているのはアニキ女優のミシェル・ロドリゲス。「ガールファイト」から始まって「ワイルド・スピード」シリーズや「バイオ・ハザード」シリーズ、このあと紹介する「マチェーテ」シリーズにも登場の、とにかく出る映画、出る映画ずっと闘ってはる方です。それにしてもこういうとんでもキャラクターに対しても体当たりで真摯に演じるミシェル・ロドリゲスにひれ伏したくなります。なんてったって、男ん時も彼女が演じてますからね。しかも俺、男ですねん!っていうシーンも体張って(いや、体に貼っての方がいいか)見せてくれてますし、女となってしまってからも大林宣彦監督の「転校生」で小林聡美ばりの確認シーンもちゃんとしてはりますし・・・。でもって、今作でヴィラン女子となるのはロドリゲス姐さんでなく、彼女に改造手術を施した女医役のシガニー・ウィバー。アニキ女優界があるなら幹部クラスのお方。なんといっても「エイリアン」のリプリー役でSF映画界のレジェンドキャラのひとりです。そんな彼女がハンニバル・レクター的出で立ちでなぜ自分が勝手に性転換手術をやっちゃったかを語るのですが(話を聞かされる相手は「探偵モンク」のトニー・シャループ!)、狂ってはるやん!ぶりがええ塩梅でヴィラン臭をたっぷり出しておられます。
 とはいえ欲を言えば、アニキ女優ふたりの、五社英雄監督の「吉原炎上」並みの地に足着いた女闘美を見てみたかったですが、それがなかったのがちょっと残念。
『人の善意を骨の髄まで吸い尽くす女』
人の善意
 この作品は主演の山田真歩(役名も山田真歩!)に尽きます。とある劇団に入っている女優(半ば自称的)、山田真歩が世の中に出たい!、前へ前へ出たい!という気持ちからネットドラマの存在を知り、自分もやってみたら有名になるんちゃうかなと思いつき、周りの人間を巻き込み、地方のフィルムコミッションをうまく使いながらドラマを作ろうとするんですが、さて無事に完成するのか!って話なんですが、とりあえずこの女、絵に描いたようなヴィラン女子。

 一応、外ヅラはいいんやけど、とりあえず自分勝手で自己顕示欲が強く、基本、自分中心で世界が回っているから空気は読まない。自分のわがままや意見を聞いてくれる相手にはとことんつけあがる、まさにタイトル通りの「人の善意を骨の髄まで吸い尽くす」女。こういう女性って、同性から見るとどんな風に感じるんやろう。ひたすら関わりたくないか、それともマウンティングしあうのか、意外にも共感するのか・・・。この映画見た後、お酒飲みながら話してみたいわぁ。
 反対に男性はどうなんやろ。とはいえ、こういうヴィラン女子に目をつけられる人も多いよね。しかも気づいてない的な無意識M男子が・・・。個人的には、大昔に見て嫌な気持ちになったエリック・ロメール監督の「緑の光線」の主人公デルフィーヌが頭に浮かび、改めて見直して、比べたいなぁと思ったり。

 山田真歩のヴィラン女子は、そんな見る者に様々な考慮の余白を残しつつ、イヤな存在感と絶妙な可愛げを醸し出してます。これがデビュー作とは思えない彼女が今、女優としてノリにノっているのも、うなづけます。
『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』
KUBO
 以前、「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」が劇場公開された時に取り上げさせていただきましたが、皆さん、今作見てますか?まだ見ていないなら絶対見て損はない映画!しかも出番はそう多くないながらもちゃーんとヴィラン女子もしっかり出てきます。

 封建時代の日本が舞台。不吉な子供として生まれた少年クボがお供の猿や折り紙のクワガタ侍と、亡くなった母の敵討ちの冒険に出るというお話。
 ストップモーションアニメーションで繰り広げられるその冒険譚の素晴らしいこと!浮世絵や折り紙をモチーフにしてるだけあってインバウンド効果も抜群!?もう正直、間違った日本感なんてなく、日本をどんな日本人よりも理解して映画のモチーフとして咀嚼し昇華させています。

 そんな中に登場するヴィラン女子は、クボの母親の妹で、彼の叔母にあたる二人の闇の姉妹カラスとワシ。故・山口小夜子似のつり目の能面顔で「目玉くれ~目玉くれ~」と言いながら刺客としてクボの命を狙います。この場面、そして猿との死闘はこれがストップモーションアニメとは思えない、これマジで一コマ一コマ、人が動かしながら撮影したもんなん!?と驚愕するほど手に汗握ります。しかもヴィラン女子ですから手加減一切なしの冷徹すぎる戦いを繰り広げます。ちなみにルーニー・マーラのオリジナルももちろんいいですが、日本語吹き替え版で見る方が映像も含めて堪能できるとも思います。
『マチェーテ・キルズ』
マチェーテキルズ
 かつてB級映画やエクスプロイテーション映画などを数本立てにして公開していた映画スタイルにオマージュを捧げた映画「グラインドハウス」の公開時に、フェイク映画の予告が挟み込まれておりその一本が「マチェーテ」。で、予告編を作ったロバート・ロドリゲス監督に創作の火がついたのか、まさかの長編作としてマジ映画に。しかもそれがそこそこヒットし、続編まで。それがこの「マチェーテ・キルズ」。
 続編やし、もう好きにさせてもらいまっさとばかり、オープニングから宇宙を舞台に「007/ムーンレイカー」や「スター・ウォーズ」のパロディでマチェーテが戦っておりますが、これはフェイクな予告編。で本編。

 話としては、麻薬捜査官のマチェーテがアメリカ大統領(カルロス・エズテベスことチャーリー・シーン!)からメキシコの麻薬王を倒せという指令が。でも、麻薬王は心臓が止まると同時にワシントンへミサイルが飛ぶように仕掛けが施されており、殺せない、しかもそれを解錠できるのは世界一の武器商人(メル・ギブソン!)だけ。さぁマチェーテ、どう解決するのか?というもんなんですが、ことごとくデタラメでことごとく過剰。
 コワモテ俳優、ダニー・トレホさんが前作に引き続き、無口ですが最強でモテモテ男を演じてます。でもね、おじいさんですよ。70歳過ぎてますからね。日本なら丹古母鬼馬二さんが主演するようなもんかもしれません。とにかく不死身!そして表情ひとつかえずアクションやってます。そんな彼の前に次々現れるのがヴィラン女子たち。
 ソフィア・ベルガラ扮する娼婦館の女将たちはモンスター級だし、ある意味コメディリリーフ。娼館開店前の訓示では「うちの店では勃った瞬間からお金を取る!」という名言を発し、その後、館を訪れたマチェーテに、女将がヴィンセント・プライス主演のモンド映画「ビキニマシン」や、リンゼイ・ワグナー主演のテレビドラマ「地上最強の美女バイオニックジェニー」、「オースティン・パワーズ」にも出てきたフェムボットみたく、ガトリング銃を仕込んだブラジャーや股間銃というガジェットで襲うんですが、失敗。こうなったらマチェーテのタマ獲ったる~!とばかり、ちょこちょこ登場し襲撃するものの、反撃されるパターンを繰り返します。この存在、まるで「グレートレース」や「チキチキマシーン猛レース」やアニメ「ロードランナーとワイリー・コヨーテ」みたい。ストーリーにあまり関係ないキャラというデタラメさもいい。
 そしてカメレオンという次々に存在を変える殺し屋で登場するレディ・ガガのこれまたヴィラン女子ぶりが最高。助けを求めるトラック運転手に「慈悲の代わりに3発の銃弾をあげる」ってなイカすセリフを吐いてくれるのが痺れます。でもトドメは、マチェーテと大統領とのパイプ役であるミス・サンアントニオもヴィラン女子上等な役どころ。
 演じるは、私生活でもバイセクシャルで、ジョニー・デップと結婚し、DV受けて離婚。その後、悪い意味で今年、何かと話題を振りまいているテスラのCEOであるイーロン・マスクと付き合ってて(のちに破局)、「アクアマン」の妻でもあるアンバー・ハード。この人のヴィラン女子ぶり最高!しかもアニキ女優、ミシェル・ロドリゲスとタイマン張ってくれますねん。この時もミシェルアニキが「ビッチのニオイがするね」と、アンバーを腐すと「このドレスはあんたの命より高いの」な~んて、アニキを怒らしたら後でえらいことなるのにポーンとかましよりますねん。で、案の定ヴィラン女子が迎える最高の結末をアンバーさん体験しはります。ここスカッとします。

 映画としては、いろんな要素を詰め込み過ぎて、粗かったり、笑いに逃げたり、風呂敷広げたままになってるとこありますけど、ヴィラン女子中心で見ると確実に楽しめますんでぜひ!
『ヘイトフル・エイト』
ヘイトフルエイト
 クエンティン・タランティーノ監督8本目の作品は「ジャンゴ 繋がれざる者」に次ぐ西部劇。しかし、今回は荒野を舞台に銃をバンバンてな展開ではなく、雪に覆われた白銀の世界。さらに吹雪に閉ざされたカフェ兼日用品、武器など売ってるなんでも屋が舞台。そこを訪れた重罪犯の女を連行した賞金稼ぎたちと、新任保安官。店には主人はおらず、店番を任された男と先客たちがいて、揃い揃った8人のワケあり男女が、あるきっかけから血みどろの闘いを繰り広げるという話。
 ひたすら冷え切った店の中で全員が徐々に疑心暗鬼を繰り広げ、そして自身も店も血だらけにし、やがて壮絶な結末を迎えます。

 サミュエル・L・ジャクソン、ティム・ロス、マイケル・マドセンらタランティーノ監督作品ではおなじみの面々に加え、カート・ラッセル、ブルース・ダーンら久しぶりの方たちと相変わらず濃いオヤジたちがいぶし銀の芸達者ぶりを発揮していますが、こんな中で、負けず劣らず、いや、完全に勝ってるのが、ヴィラン女子として8人の中の紅一点として初参加のジェニファー・ジェイソン・リー。彼女が演じるのは1万ドルの賞金をかけられている女盗賊デイジー。
 とにかく口が悪いし、態度も悪い、汚いし、手鼻もするといったひと目見るだけで育ちが悪いとわかる振る舞い&出で立ち。悪態を吐くたびに賞金稼ぎのカート・ラッセルからボコられる。血を流し、歯が折れても平然としている女。
 ジェニファー・ジェイソン・リーと言えば同化する女を演じた「ルーム・メイト」や母親の犯罪と対峙する娘役を演じた「黙秘」、脚本家を目指しながらも酒に溺れていく女性役で数々の賞に輝いた「ミセス・パーカー/ジャズエイジの華」というそれぞれがひと癖もふた癖もある役柄を演じる女優の印象が強いのだけど、さすがにこの役はミスキャストなんじゃないかなと思ってみたら、ヴィラン女子の煮こごりみたいで圧倒的な存在感!オヤジたちを揉めさすだけ揉めさせるし、ギターを弾いて歌まで披露、最初の出からすでに汚いのに、物語が進むにつれてさらに汚くなる。ある意味、女優なら最高なんやないでしょうか。

 個人的にフランシス・マクドーマンドが「デブラ・ウィンガーを探して」というドキュメンタリー映画のインタビュー中「40代に入った女性は外野に追いやられる」という言葉が印象に残っていて、年齢を重ねていく上でどうしても役が変わっていく現実に、自分がついていけるかどうかを語ったもの。今作も40代をとうに過ぎ、50代になってはるジェニファーにとって、このオファーはヨダレが出るほど演じたい役やったんやろなぁと。事実、デイジーというヴィラン女子無くしてこの作品の面白さは成立しないですから。
 今作も最後はヴィラン女子らしい因果な最後を迎えますが、このシーンばかりはちょっとタランティーノ監督、ひどいなぁとデイジーに同情してまいました。

悪役が女性だからこそ輝いた作品5本、どれも悪を競ってこそ存在という爪痕を残したものたちばかり。ほかにもまだまだヴィラン女子が活躍、暗躍する映画は山ほどあります。これをきっかけに探して鑑賞してみませんか。

Writer | 仲谷暢之

ライター、関西を中心に映画や演劇、お笑い、料理ネタなどなどいろいろ書いてます。

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