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自主映画の祭典<PFFぴあフィルムフェスティバル>開幕!今年は第40回のアニバーサリー

2018.09.07(Fri) | 水上賢治

9月8日(土)より<PFFぴあフィルムフェスティバル>の開催がスタートする。自主映画の祭典として才能ある若手映画作家を多数発掘してきた同映画祭だが、今年は第40回のアニバーサリー。その記念すべき開催で、メイン・プログラムとなるコンペティション部門<PFFアワード2018>には、18作品が入選を果たしている。

◆「第40回 ぴあフィルムフェスティバル
会期:2018年9月8日(土)~9月22日(土)
会場:国立映画アーカイブ

※映画祭初日より同時配信!ご自宅でもご覧いただけます!
配信期間:2018年9月8日(土)~10月24日(水)
配信サイト:青山シアター

「第40回ぴあフィルムフェスティバル」メインビジュアル
過去と今回のPFFアワードを単純に比較して、その傾向を読み解くことはなかなか難しい。ただ、あくまで個人的な見解ではあるが、ここ数年は映画に関する学科のある大学の修了作品が増えた影響もあるのか、総じてクオリティが高く、描かれる物語の内容も明快、ストーリーラインも起承転結がしっかりしていて、描き方も演出法も的を得ている。そんなソツのない作品が多いような印象を全体として感じた。

ただ、今年はもっとエモーショナルといえばいいだろうか。作り手の情熱だけで成立しているというか。不器用でも自分の中から出てきたやむにやまれぬものを思い切り表現してとりあえず形にしてみたような粗削りだけど、その思いだけはひしひしと伝わってくる作品や、商業映画では二の足を踏みそうな題材に果敢にチャレンジした作品ばかりの印象。それぞれの監督の顔やカラーが見えてくる。ここ数年の流れと同様に大学の修了作品映画は多いものの、既存の映画と対峙するような自身の視点や独特の感性を前面に押し出し、作り手の生の声が聴こえてくるような作品が顔を揃えた印象だ。
一文字
まず、半端じゃない映画への情熱、いやアクション映画への愛が炸裂しているのが『一文字拳 序章-最強カンフー少年対地獄の殺人空手使い-』。手掛けた中元雄監督のやりたいこと、大好きな映画は実に明快で、ジャッキー(・チェン)映画であり香港アクションにほかならない。それらのアクション作にオマージュを捧ぐべく、ストーリーはいたってシンプル。ひとりの武術家を主人公にした勧善懲悪のドラマを、気合の入ったアクション・シーンの数々で見せ切る。中元監督のアクションへのこだわりと熱量、それに応えた役者陣の頑張りは、エンドクレジットとともに映されるNGテイク集を見れば一目瞭然。体を張った本気のアクションを見てほしい。
カルチェ
次にあげる植木咲楽監督の『カルチェ』は、現実にも寓話にもSFにも感じられるストーリーに不思議な魅力が宿る。その物語は、とあるプールから誕生する生命体を人間が一定期間育てる世界、ある妊婦の出産までの日常の世界という2つの世界のエピソードが同時進行。いわばパラレルワールド的な構造になっているのだが、その2つの世界が時にリンクし、シンクロしたとき、命の誕生、死後の世界をはじめとした、人類が繰り返してきた生命の営みという壮大なテーマがにわかに浮かんでくる。植木監督の生み出したその個性際立つ物語に注目してほしい。
19歳
自らの内から出てきたという点で言えば、道本咲希監督の『19歳』は、撮影当時の自分の心を打ち明けた1作。20歳を目前に絶望の未来しか描けない女の子が抱く不安と焦燥と混乱を、自らの体と声をもってダイレクトに伝えてくる。時に限りなくフィクションのようで、時に限りなくノンフィクションにも感じられるその独白の数々からは、監督自身の本音が垣間見え、リアルな声となってこちらに届いてくる。
からっぽ
野村奈央監督の『からっぽ』もまた若い女性の本心がつまっているといっていい。主人公は、器用貧乏な女の子。なんでも首尾よくこなすことこそがこのヒロインの最大の得手で欠点でもある。ようは他人よりも秀でた才能がない。そのことを自覚する彼女は、才能ある人間に近づくことで自己の何かを満たし、納得しようとする。「からっぽ」というタイトルが指し示す、このヒロインが味わう虚無感は、おそらく市井の人びとのほとんどがどこかで味わっていること。それゆえ切実な思いとして伝わってくる。それはまた現代の空気もまとっている。
山河の子
一方、『山河の子』は本格派のドキュメンタリー映画。中国出身の胡旭彤監督が、都会から離れた中国の農村部に入り、そこで暮らす何組かの家族に眼差しを注ぐ。胡監督は、まだ20代前半と若いが、人間を真摯に見つめ、現場に何かを見い出すドキュメンタリストとしての眼力はなかなかのもの。現地の人びととしっかりと信頼関係を結び、普通ならば聞き逃してしまいそうな彼らのふとこぼす声までを掬い上げる。その実直な姿勢があってこそだろう。村の厳しい現実にさらされた、とりわけ子どもたちが重い口を開く。彼らの言葉、表情、しぐさから、抱えた問題の深刻さが浮かび上がり、それはやがて現代の中国の一面へとつながっていく。若きドキュメンタリストの温かくも鋭い眼差しが光る。
最期の星
そのほか、女優としても活躍中の小川紗良監督の『最期の星』、今回が2度目のPFFアワード入選となる山本英監督の『小さな声で囁いて』、パート主婦のちょっとしたショート・トリップが軽快なリズムで描かれた芦澤麻有子監督の『貴美子のまち』、役者として活動してきたキャリアを持つ亀井史興監督の『シャシャシャ』など、オリジナルな視点、ユニークなものの見方をした作品が並ぶ。あと、『ある日本の絵描き少年』と『モフモフィクション』というアニメーション作品も作り手のユニークな発想とアイデア、アニメの技法を追求した作品になっている。

森田芳光、石井岳龍、黒沢清、園子温、橋口亮輔、塚本晋也、矢口史靖、荻上直子、タナダユキ、石井裕也、山戸結希ら、PFFはゆうに100名を超えるプロの映画監督を輩出してきた。それに続く可能性を大いに秘めた逸材が今回の選ばれし18名の入選監督にほかならない。若きクリエイターの自由な発想から生まれたオリジナルな作品の数々に出会ってほしい。

Writer | 水上賢治

映画を主としたライター。基本的にどんな映画でも見るが、中でもドキュメンタリーやインディペンデントを中心にした日本映画を愛する。現在はウェブ「ぴあ映画生活」「リアルサウンド映画部」や雑誌「AJ」、テレビガイド誌などで執筆中。PFFセレクションメンバーの経験あり。

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