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紆余曲折あって“1つ”になる…映画に見る、さまざな夫婦のカタチ

2018.09.19(Wed) | 上原礼子

出会いや結婚に至るまでのプロセスも、結婚生活そのものも、カップルの数だけカタチがあります。もしも、最愛の人がけんか別れをしたまま昏睡状態となってしまったら? “バツイチにならないと幸せになれない”という奇妙なジンクスを、相手が真剣に信じていたら? それぞれに思惑を抱えながら夫婦になること、家族になることを模索している人たちを描く映画は多いもの。今回は、夫婦の始まりから終焉まで、さまざまカタチを映画から見つめてみようと思います。

大病を通じて気づく本当の想い…『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』
ビッグシック
全米わずか5館のスタートながら、まるで日本の『カメラを止めるな!』のごとく、口コミにより2,600スクリーンにまで拡大公開され、大ヒットとなった本作。海外ドラマ「シリコンバレー」などに出演するパキスタン出身のコメディアン、クメイル・ナンジアニと妻エミリーとの実話を彼ら自身が脚本にし、アカデミー賞にもノミネートされたロマンチック・コメディです。はじまりのうたや『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』などで知られるジャド・アパトーがプロデュース。

クメイルは毎週、家族の食事会にやってくる同郷の独身女性との“お見合い”に閉口気味。両親が希望する弁護士になる気もなく、スタンダップコメディアンを目指しています。ある日、ライブを見にきていたエミリーと意気投合、交際をスタートさせますが、“お見合い”の件がバレてけんか別れに。

そんな中、原因不明の病に倒れたエミリー。クメイルは彼女の両親とともに回復を待つ間、彼らを通じてより深くエミリーを知るとともに、両親夫婦が抱える問題までも目の当たりにすることに! 文字どおり大病(ビッグ・シック)が、この異文化交際を大きく動かすことになります。エミリー役ゾーイ・カザンがキュートなのはもちろん、彼女の母親を演じたホリー・ハンターの気概にも圧倒されます。
幸せになりたいから、別れましょう!?『バツイチは恋のはじまり』
バツイチは恋のはじまり
完璧彼氏との結婚を考えるようになったヒロインが、「一度目の結婚は必ず失敗する」という一族に伝わるジンクスのために右往左往する、シュールなフレンチ・ラブコメディ。最強のふたりの製作チームが手がけ、「フランス映画祭2014」で観客賞に選ばれています。

10年つき合ったピエールとの結婚式を数か月後に控えたイザベル(ダイアン・クルーガー)。一族に代々伝わる呪いのようなジンクスに従って「何とかしてバツイチにならなくては!」と、偶然出会ったお調子者の旅行ガイドブック編集者ジャン=イヴ(ダニー・ブーン)と結婚、そして即離婚するために、ケニアからモスクワへ、彼の世界半周旅行に同行することに……。

『女は二度決断する』でひと皮むけた演技を見せ、昨年のカンヌ映画祭主演女優賞に輝いたダイアン・クルーガーの、これまた珍しいドタバタなラブコメは必見。かなりの荒療治ではありますが、彼女が演じたヒロイン・イザベルは、そこまでしないと自分の本音に気づけなかったのかもしれません。
ずいぶん遠回りをしてたどり着いた…『しあわせはどこにある』
しあわせはどこにある
サイモン・ペッグ演じる本作の主人公ヘンリーも、中国・上海、チベット、アフリカ、そしてロサンゼルスと、地球を半周以上も旅してようやく“答え”にたどり着けたようです。

美人でしっかり者の恋人・クララと何不自由なく暮らしていた精神科医のへクターですが、一向に幸せにならない患者たちを見て、“幸せ探し”の旅に出ることを決意します。それは昔懐かしい友人や元恋人を訪ねる旅でもあり、もしかして“中年の危機”? いずれにせよ、へクターはこの“幸せ探し”の旅の果てに、ある大切なものに気づくことができたのです。

彼の帰りを待つクララ役には、『ゴーン・ガール』の恐妻(狂妻?)とはまるで別人のロザムンド・パイク。へクターが旅先で出会う“幸せ案内人”には、『マンマ・ミーア!』のステラン・スカルスガルド、『レオン』のジャン・レノ、マイ・ベスト・フレンドのトニ・コレット、人生はビギナーズ『ゲティ家の身代金』のクリストファー・プラマーと大物ばかり。繊細で人の良さがにじみ出るペッグ自身の魅力も相まって、観る者を幸せな気分にさせる波乱万丈の旅路となっております。
いつだって自分には正直に『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』
マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ [DVD]
初監督作『レディ・バード』が絶賛された米インディペンデント映画界のミューズ、グレタ・ガーヴィグと、インテリのダメ男がハマるイーサン・ホーク、バリキャリの教授役が似合いすぎるジュリアン・ムーアで贈る、ニューヨークが舞台のハートフル・ラブコメディ。

特定の相手との関係が半年以上続いたことのないマギーは、早く母親になりたいと大学の同級生・ガイ(トラヴィス・フィメル)の精子をもらい受けることに。しかし、同じころ“ポストモダン”の文化人類学者ジョン(イーサン)と出会い、妊娠がわかって結婚。やがてジョンとの結婚生活に不安を感じ始めたマギーは、彼の前妻ジョーゼット(ジュリアン)と結託し、カナダ・ケベックでの学会を機に“夫を返す”ことを計画するのですが…。

時にはジョン&ジョーゼット夫妻の子どもたちの面倒も見ていたマギー。結局、マギーがあらゆる面で妥協していたからこそ、その結婚生活は何とか回っていたのです。一度できてしまった夫婦の溝は、日増しに深まっていくもの。グレタ演じる猪突猛進型のヒロインが考えたプランの行方に注目です。
老夫婦が向かう旅路の果て『ロング,ロング・バケーション』
ロングロングバケーション
本作では、半世紀近くも添い遂げた70代の夫婦が主人公。『クィーン』でアカデミー賞を獲得し、本作でゴールデン・グローブ賞にノミネートされたヘレン・ミレンと、アカデミー賞名誉賞を授与されたドナルド・サザーランドという名優2人によるロードムービーです。

アルツハイマー型認知症の元文学教師ジョンと、がんが全身に転移している妻エラ。子どもたちは巣立ち、孫にも恵まれた老夫婦は、愛用のキャンピングカー「レジャー・シーカー」に乗り、ボストンから一路南へ。ジョンが敬愛するヘミングウェイの家があるフロリダの最南端キーウェストを目指します。

最後の夫婦水入らずの旅。明るく振る舞うエラも次第に体がつらくなりますが、記憶が飛んでは戻ってくるジョンと、夫婦と家族の歴史を映し出すスライドを夜な夜な眺めるときには、少しだけ“痛み”が癒されるようです。2人にはもう、恐れるものなど何もありません。日ごとに近づく人生のゴールへのカウントダウン、そのゴールテープをいかにして切るのかも夫婦次第、なのでしょうか。衝撃のラストに、あなたは何を感じるでしょうか。

大切な人の病気という“あたりまえの日常の破壊”は、自分探しはもちろんのこと、カップルや夫婦関係の見直しや修復・改善に大きな影響を与えます。また、人生はしばしば旅に例えられますが、旅に出るという非日常体験も、ときにピリッとしたスパイスのように日常に刺激を与えてくれるもの。もし2人が倦怠期であれば、なおさらです。そんな何らかの迷いにそっと答えを照らしてくれる映画を、秋の夜長にいかがでしょう?

Writer | 上原礼子

情報誌・女性誌等の編集・ライターをへて、現在はWEBを中心にフリーに。1児の母。子ども、ネコ、英国俳優などが弱点。看護師専門誌で映画&DVDコーナーを14年担当し、医療や死生観などにも関心アリ。試写(映画館)忘備録を随時更新中。映画を通じて悲嘆を癒やす【映画でグリーフワーク】を試みています。

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