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笑いって奥が深い!笑いのプロ、芸人の生きざまにしびれる映画5選

2018.09.26(Wed) | 谷直美

映画・舞台・ドラマといった様々な芸能において、観客の心を動かすのがもっとも難しいのは笑いを生み出すことだとよく言われます。
喜怒哀楽の中で一番お気楽なはずの「笑い」が実はもっとも奥深く、ままならない。そんな笑いの世界に魅入られた「笑いを生み出す芸人たち」をモチーフにした作品を紹介します。

やっぱり欽ちゃんは普通のおじいちゃんじゃない!『We Love Television?』
We Love Television
1990年代の人気バラエティー番組「電波少年」の名物プロデューサー土屋敏男が、かつて一世を風靡した大人気芸人“欽ちゃん”こと萩本欽一の自宅に突然押しかけ、「一緒に視聴率30%番組を作りませんか?」と提案。その場で快諾した欽ちゃんの再起をかけた舞台づくりの日々を追った映像ドキュメンタリーです。

仕事場に据え置かれたハンディカメラで自撮りしてその日の思いをひとりごちる76才の欽ちゃん。はじめて見る大御所の「素」の姿が興味深いです。
そして、70才を過ぎた老人とはとても思えぬほどの舞台にかける少年のようなエネルギー。気力だけでなく、その粘り強さにも驚かされます。一度だめなら次はこうしてみよう!と常に前だけを見据えている姿勢は、「あきらめなければ最終的に負けはない」という欽ちゃんの最強哲学。
見栄もプライドもなく真っ向勝負し続ける「芸人魂」に圧倒されます。
芸人にとって相方とは全てを超えた関係『ショコラ 君がいて、僕がいる』
ショコラ
100年前にフランスに実在した伝説の白人と黒人のコンビ芸人の半生を描いた作品です。 白人芸人フティットを演じたチャップリンの実の孫ジェームス・ティエレは、自身も4才からサーカスの舞台に立つ優れたパフォーマー。ステージでの身のこなしや、感情を抑えた哀愁漂う演技が見事です。
相方の黒人芸人を演じた俳優兼コメディアンのオマール・シーも、ストイックでシリアスなフティットと対照的な、無邪気で素直なショコラを持ち前のチャーミングさで演じています。

20世紀初頭の見世物小屋に生きる異形の人々の暮らしぶり、ショービジネスの光と影が、緻密な美術によって魅惑的に再現されています。
当時のフランスにおける人種差別と人種を超えた友情もこの作品のテーマ。芸人としての大成功に喜んだのも束の間、差別と偏見に苦しみ堕落していくショコラをフティットはなんとか助けようとします。
芸人同志の関係性とは不思議なもの。相方は友だちでも家族でもないけれど運命共同体であり、お互いを嫌になるほど分かり合っているからこそ、尊敬や憎しみもまた深い。

あまりに長い紆余曲折を経て、ようやくふたりが再会するまでの道のりを通して、差別について深く考えさせられます。
芸人というアウトサイダーたちへのラブレター『火花』
火花
お笑い芸人ピースの又吉直樹の処女作にして芥川賞受賞作の同名小説の映画化。自身も芸人の板尾創路が監督・脚本をつとめており、それゆえ芸人に対して深いシンパシーと愛情をもって描かれています。

破天荒な先輩芸人神谷に魅せられ、弟のように神谷を慕い追いかけた徳永は、やがて自らの才能、そして神谷にも見切りをつけざるをえなくなってゆく。
芸人を志したふたりの若者の奇妙で純粋な友情の終わりは、同時に青春の終わりのせつなさを感じさせます。

良くも悪くも非凡で反社会的な彼らの生き方は、格好良くてみっともなくて、純粋でいかがわしく、いい加減なのに同時にこの上なく真摯。本作に登場する芸人たちを見ていると、そんな相反する感情がかきたてられます。

主演の相方たちをはじめ、お笑い芸人が多くキャスティングされておりリアリティーがあります。不器用で人間くさい人々の織りなすドラマがやるせなく愛おしい。
「芸人という生き方」を肌で感じられる作品です。
笑いですべてを乗り越えろ『エミアビのはじまりとはじまり』
エミアビのはじまりとはじまり
芸人が芸人を描いた「火花」と違い、お笑いを生業としない人たちだけで芸人の世界を描いたのが本作。

この作品は「コンビ芸人」「先輩芸人・後輩芸人」「恋する男女」という3つの人間関係の喪失を、時に暴力的に、時にファンタジックな表現で描き出しています。
それぞれの間柄に注がれるまなざしが優しく、見終わった後は温かい気持ちに包まれます。

絶対に笑えない究極的にシリアスなシチュエーションのさなかで「さあ、今ここで俺を笑わせてみろ!」と強要をされ、芸人が相手に芸を披露するシーンが劇中幾度も形を変えて登場します。
追いつめられ、すべてをかなぐり捨てて、捨て身でアホな芸を繰り広げる芸人魂。
最終的に「笑わせる」ことは叶わず、思いがけない失態で「笑われる」ことで相手は爆笑して窮地を脱するのだけど、ほっとするやら痛々しいやら。

笑いとは、最強であり残酷なもの。笑いのプロの矜持は「笑わせることと笑われることは違う」なのかもしれないけれど、笑われることも含めて徹底して格好悪くなれるがゆえに芸人は真のヒーローなんだというメッセージに作り手の愛を感じます。
理屈はさておき高座を見よ『映画 立川談志 ディレクターズカット』
立川談志
2011年にがんで亡くなった孤高の天才落語家、立川談志の一周忌を記念して作られた作品。
談志が自分自身について語る映像なども含まれているものの、何と言っても見どころは在りし日の高座のノーカット映像です。

談志の芸を象徴するものとしてもっとも知られている、「落語とはイリュージョンである」「落語とは人間の業を肯定するものである」というふたつの言葉。
本作ではイリュージョン落語として高座「やかん」を、そして人間の業をありありと描いて談志の十八番になった高座「芝浜」を通じて立川談志の落語哲学の本質に迫ります。

信者のような熱狂的なファンが多い反面、個性が強いために好き嫌いの分かれる立川談志の落語。
百聞は一見にしかず。ファンはもちろん、落語に興味がある人は理屈抜きで天才の芸をまずは味わってみてはいかが。

まさに体当たりで生きる芸人の人生は厳しくリスキーだけれど、清々しくてどこかうらやましくもあります。普通の人生ではなかなか味わえないアウトローな芸人の生き方を、映画でぜひ追体験してみて。

Writer | 谷直美

映画と旅と赤ワインをこよなく愛するフリーライター。映画レビュー・コラムのほか、人物インタビューやイベント取材など幅広いジャンルで執筆中です。

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