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映画関係者が称賛!デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の世界

2018.10.03(Wed) | 清水久美子

多くの映画ファンから愛され、評論家からも絶賛されている奇才デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督。まだ長編は3作しか監督していないにもかかわらず、3作とも脚本も担当し、高い評価を得ています。特に2作目の『イット・フォローズ』は、あのクエンティン・タランティーノに「とにかく怖い! こんな設定のホラーは観たことがない」と称賛され、世界中で大ヒットを記録しました。

独特の世界観を持ち、異なるジャンルの3作品で観客を魅了してきたデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督。今回は、最新作『アンダー・ザ・シルバーレイク』の日本公開を記念し、ミッチェル監督の全3作を紹介します。

ミッチェル監督があなたの頭の中をかき乱す『アンダー・ザ・シルバーレイク』
アンダー・ザ・シルバーレイク
ロサンゼルス(LA)のダウンタウンとハリウッドの間に位置し、セレブやアーティストなど多くのクリエイティブな人々が暮らす住宅地<シルバーレイク>を舞台に、暗号や陰謀論にとりつかれたオタク青年の主人公が、シルバーレイクに隠された巨大な闇へと近づいていく、暴走と迷走を描くネオノワール・サスペンス。第71回カンヌ国際映画祭コンペディション部門正式出品作品。

夢と光が溢れる煌びやかな街LAに“大物”になる夢を抱いてやって来て、シルバーレイクで暮らしているサム(アンドリュー・ガーフィールド)。でも、気づけば30代になっても何も成し遂げておらず、仕事も夢もなく、人生に失望し、アパートの家賃も滞納する始末。暇を持て余すサムが双眼鏡でアパートの中庭を覗いていると、向かいに越してきた美女サラ(ライリー・キーオ)の姿が。サラに一目惚れしたサムは、彼女とお近づきになったものの、翌日サラは忽然と消えてしまいます。彼女がいた部屋の壁に書かれた奇妙な記号を見つけたサムは、陰謀の匂いをかぎ取り、“シルバーレイクの下”にうごめく闇を探っていきます…。

シルバーレイクというのは、ハリウッドの東にある貯水池の名前で、その周辺の住宅地もそう呼ばれています。サムはサラの失踪の裏には何か陰謀があり、それがシルバーレイクと関係があると睨みます。オタクなサムは以前から暗号や陰謀論に興味があり、様々な知識を持っていて、彼と同じような奇妙な人々に近づき情報を得ていきます。本作には謎解きミステリーの要素がありますが、その世界観はとにかく独特。ところどころ不快な描写もあり、ミッチェル監督が観客の心を翻弄すると同時に、抜けられない“ワールド”へと引き込みます。

『裏窓』や『めまい』、『ロング・グッドバイ』などへのオマージュが盛り込まれ、ミッチェル監督の映画愛がヒシヒシと伝わってくるのも魅力。主演のアンドリュー・ガーフィールドは好青年のイメージが強いですが、本作ではそのイメージをかなぐり捨てているような怪演ぶりがスゴイです! 一度ハマるとクセになるミッチェル監督の最新作は、頭の中をグチャグチャにされますが、映画ファンなら押さえておくべき1本です。

◆『アンダー・ザ・シルバーレイク
10月13日(土) 全国順次ロードショー
© 2017 Under the LL Sea, LLC
何だか分からないから無性に怖い『イット・フォローズ』
イット・フォローズ
デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の長編2作目で、これまでにないタイプの新感覚ホラー。怖さと面白さが口コミで広がって、全米では4館から1600館という異例の拡大公開となり、辛口批評家サイト「Rotten Tomatoes」では96%フレッシュをキープし続けました。この映画でミッチェル監督の知名度は一気に上がり、ホラー映画としては異例とも言えるほど各映画祭で受賞やノミネートを繰り返したサプライズ・ヒットの話題作です。

19歳のジェイ(マイカ・モンロー)は、デートしたヒュー(ジェイク・ウィアリー)から“それ”をうつしたと告げられます。性行為によって“それ”をうつされると、様々な人の姿になってついてこられ、“それ”に捕まったら殺されます。“それ”の姿は自分にしか見えず、ジェイは恐怖の日々を送ることに…。

“それ”は全く知らない人の姿をしていたかと思えば、知人の姿になったりしますが、裸だったり、汚かったりなど、とにかく不気味。ゆっくり歩いて近づいてくる様子が本当に怖いです。性行為で誰かにうつしても、その相手が殺されてしまうと、また自分に戻ってきてしまう“それ”。ずーっとついてくる“それ”の恐怖は、これまでのホラー映画では体験したことのない新しい怖さで、「“それ”って何なの!?」と混乱しつつ、ミッチェル監督の凄さを肌で感じることができます。
デビュー作は美しい青春群像劇『アメリカン・スリープオーバー』
アメリカン・スリープオーバー
デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の長編デビュー作。スリープオーバー(お泊り会)を背景に描かれる本作は、前出の2作目、3作目とは全く雰囲気の異なる、キラキラ輝いている10代の美しい神話のような青春群像劇です。デビュー作にして、カンヌ国際映画祭の国際批評家週間部門で初上映。大注目の新人監督となりました。

舞台はデトロイト郊外。夏休みの最後の週末に、物足りなさを感じているマギー(クレア・スロマ)は、「もっと楽しい“何か”をするべきじゃないか」と考えます。一方、スーパーで見かけた美少女に一目惚れしたロブ(マーロン・モートン)は、その夜、彼女を捜し出そうと奔走。新しい友達の家のお泊り会に参加したクラウディア(アマンダ・バウアー)は、恋愛問題でトラブルに。スコット(ブレット・ヤコブセン)は、恋した双子の女の子に会いに行くために車を走らせます…。

米国の夏休みの終わりの恒例行事、スリープオーバー。いくつかのスリープオーバーが同時に開かれているある夜、それぞれの場所で繰り広げられる青春ドラマに胸がキュンとなります。ミッチェル監督によるティーンエイジャーの何気ない一コマが、美しい映像の中に描出され、いつまでも心に残る爽やかな作品です。『イット・フォローズ』とは大きく印象の違う映画ですが、舞台がどちらもデトロイト郊外で、同じ高校名が出てくるなど、つながりを見つけるのも面白いです。

失速することなくファンを増やし続け、評論家からも高く評価され続けているデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督。幻想的な映像美と印象的な音楽、映画に対する深い愛、様々な巨匠へのオマージュが感じられるミッチェル監督の3作を楽しんで、ぜひ映画愛を深めてください。

Writer | 清水久美子

映画・海外ドラマ・音楽ライター。昼はメーカーでOL、夜は音楽雑誌の編集アシスタントをこなした後、パソコン雑誌で編集業務に就く。その後フリーライターとなり、俳優や監督・ミュージシャンのインタビュー、執筆に日々奔走。試写室通いで時には1日4本の映画を観ることも。移動中もスマホは目が疲れるので、いつもポータブルDVDプレイヤー持参で何かしら観ています。

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