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北欧のお洒落イメージを切り裂く、キレキレの鋭いスリルがクセになる北欧ミステリー5選

2018.10.10(Wed) | 斎藤香

北欧はインテリアが人気ゆえに「お洒落」なイメージがありますが、その一方、北欧映画界には強烈なスリラー作品も多いのです。スタイリッシュかつエグイという北欧スリラー&ミステリーのオススメ5作品ピックアップしました。

北欧スピリチュアルサスペンスは、女性の自立を描いた感動作『テルマ』
テルマ
北欧映画界の鬼才ラース・フォン・トリアーの親類であるヨアキム・トリアー監督作で、スリラーのスタイルで女性の自立を描いているところが実に新鮮な作品です。

厳格な家庭に育ったテルマ(エイリ・ハーボー)は、オスロの大学へ進学。社交性があまりなく、友達がなかなかできなかった彼女ですが、てんかんの症状を発症したときに助けてくれたアンニャ(カヤ・ウィルキンス)と仲良くなります。しかし、たびたび起こるてんかん症状と周囲で起こる不吉な出来事が気になった彼女は、診察を受けることに。すると意外な事実が発覚するのです。

父の強烈な支配にもがいていたヒロインが、自立を機に、必死に新しい社会に溶け込もうと努力する姿がとてもけなげ。上京して孤独を経験したことがある人が見たら、深く共感しそうです。しかし、テルマが倒れて意識不明になっている間に恐ろしいことが次々起こるのが不気味だし、真実を究明していくうちに初めて知る家族の秘密にも驚きが……。映像が美しく、描写もセンス良く、女性にオススメのスピリチュアルサスペンスです。

◆『テルマ』10/20(土)公開
(C)PaalAudestad/Motlys gaga.ne.jp/thelma
『ドラゴン・タトゥーの女』のオリジナル映画はコレ!『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』
ミレニアム ドラゴンタトゥーの女
スティーグ・ラーソンの原作の映画化作品としては、デヴィッド・フィンチャー監督作『ドラゴン・タトゥーの女』のほうが有名かもしれませんが、映画化は北欧版の本作が先です。こちらも大ヒットして、リスベッドを演じたノオミ・ラパスは、スター女優の仲間入りを果たしました。

大財閥の会長から,40年前に行方不明になった孫娘の迷宮入り事件の調査を依頼されたジャーナリストのミカエル(ミカエル・ニクヴィスト)。しかし、会長はミカエル自身の調査を天才ハッカーのリスベット(ノオミ・ラパス)に依頼していました。彼女はミカエルの調査をするうち、事件をひも解く鍵をつかみ、図らずもミカエルに協力することに……。

天才ハッカーながら、ルックスも生き方も破天荒な媚びない女リスベットがかっこよい。誰にも頼らず、危険な場所に体当たりで臨む行動力が映画を躍動感あるものにしています。迷宮入り事件は実におどろおどろしく、北欧版・金田一耕助シリーズのような複雑な一族のミステリー。本格推理のような謎解きがあるので、ミステリー好きはワクワクですよ。
美少女が獣に変身? 恐ろしくて切ないサスペンス『獣は月夜に夢を見る』
獣は月夜に夢を見る
美しい女性が狂暴になっていくスリルと同時に純愛を描き、恐ろしさと同時に胸が熱くなる感動も味わえる良作です。

デンマークの漁村で両親と暮らすマリー(ソニア・ズー)。母は難病で車いす生活をしており、マリーも定期的に健康診断を受けていました。母の病気の遺伝を防ぐためかもしれませんが、その病が何かは定かではありません。やがて彼女は水産工場の同僚ダニエル(ヤーコブ・オフテブロ)と恋に落ちますが、同じ頃、体に異変が生じます。彼女の身に起こったこととは……。

男しかいない水産工場で働くマリーは、いじめにあっていましたが、ダニエルだけは彼女にやさしく、二人のシーンは心がほっこり。しかし、彼女の体がどんどん変化していくのが恐ろしい。途中から真相はなんとなくわかるのですが、それでも引き付けられるのは、ダニエルとマリーの恋の行方に心が掴まれるから。本作、表向きはスリラーですが、根底に流れるのは愛。究極の愛の姿に心救われること必至です。
亡くなった母の死に向き合う夫と息子たちを描いた人間ミステリー『母の残像』
母の残像
イザベル・ユペール、ガブリエル・バーン、ジェシー・アイゼンバーグという実力派のスターが共演した作品で、『テルマ』のヨアキム・トリアー監督作です。

戦争写真家のイザベル(イザベル・ユペール)が亡くなり、夫のジーン(ガブリエル・バーン)、長男のジョナ(ジェシー・アイゼンバーグ)、次男のコンラッド(デヴィン・ドルイド)は、喪失感を抱えています。イザベルの写真展を開催することになったり、友人の新聞記者がイザベルの記事を書きたいと許可を願い出てきたり、イザベルの死後も、家族は彼女の存在にかき乱されていくのです。

イザベルは撮影旅行が多く、家庭人ではありませんでした。それでも家族は彼女を深く愛していたので、喪失感は大きいわけです。子供が生まれたのに元カノと浮気するジョナ、引きこもりのコンラッド、学校の教師と寝てしまうジーン。男たちが弱さのあまり、常に逃げ場を求めてさまよう感じに男性は共感、女性はしょーもないと思うかも。またイザベルの秘密を知っても、攻める気にならず、彼女の存在感に感動してしまうのは、演じるイザベル・ユペールの凄さかもしれません。
残酷な殺人事件をじっくり追う、ゾゾっと気味の悪い北欧サスペンス『静寂の森の凍えた姉妹』
静寂の森の凍えた姉妹
アイスランドで起こった姉妹の殺人事件を捜査する二人の刑事が驚愕の真相にたどり着くまでを描いた北欧ミステリー。寒々とした空気がまさに北欧映画を感じさせる作品です。

森林公園で姉妹の死体が発見され、ひとりは絞殺、ひとりは暴行死、加えて虐待のあともありました。性犯罪の可能性を視野に入れ、エッダ刑事(マルグレット・ヴィルヒャムスドッティル)は、逮捕歴がある性犯罪者をピックアップして、取り調べを開始します。一方、目撃情報もありましたが、最重要の目撃者である夫婦が語る犯人の風貌がまったく異なり、捜査は混乱していくのです……。

寒々としたアイスランドで起こった姉妹殺人事件は、容疑者への取り調べを丹念に積み重ねるという正統派の方法で進んでいきますが、気味悪さをずっと感じるのは、おそらく性犯罪をクローズアップしているからかも。次々と性犯罪者が取調べをされるシーンは居心地悪いし、暴力的なシーンもあり、全編、陰鬱な空気に覆われていて背筋がゾっとします。北欧サスペンスの王道を行く作品でしょう。

北欧ミステリーの特徴は寒々とした空気と猟奇的で陰湿な雰囲気の同居。その中でもドロドロした空気をスタイリッシュな演出で排除しているヨアキム・トリアー監督は21世紀の北欧映画界を引っ張っていく存在になりそう。鋭い刃物のような北欧スリラーの世界を大いに楽しんでください。

Writer | 斎藤香

映画ライター 映画誌の編集者を経てフリーに。映画レビュー、監督&俳優へのインタビュー、書籍ライティングなどで活動中。映画のほかには教育関連の取材執筆もいたします。好きな監督はウディ・アレン、トーマス・アルフレッドソン、アルフレッド・ヒッチコックなど多数。

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