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開催間近!!東京国際映画祭 観客賞受賞作品特集

2018.10.24(Wed) | 春錵かつら

今年もいよいよ10月25日から東京国際映画祭(Tokyo International Film Festival, TIFF)が始まります。毎年10月に東京で開催されるこの映画祭は、世界の選りすぐりの長編作品が一堂に会し、今年で31回目を迎えます。
「コンペティション」「特別招待作品」「アジアの未来」「国際交流基金アジアセンター presents CROSSCUT ASIA」「日本映画・スプラッシュ」「ワールド・フォーカス」「特別上映」といった部門がありますが、中でも「コンペティション」上映作を対象に贈られる「観客賞」は、実際に作品を観た観客の投票で決定する言わば「生の声」。より多くの観る者のハートをつかんだ作品だけが手にすることが出来るもっとも栄誉ある賞のひとつです。
そこで今回は東京国際映画祭で観客賞に輝いた作品5作をピックアップしてご紹介します。

第31回東京国際映画祭(2018)
2018年10月26日[THU]-11月3日[SAT]

『サラの鍵』2010年 第23回東京国際映画祭観客賞受賞
サラの鍵
2010年に観客賞を受賞したのは、ナチス占領下のフランス・パリで行われたユダヤ人迫害「ヴェルディヴ事件」を題材に、ユダヤ人一家に起こった悲劇を描いたフランス発の社会派ドラマ。世界中で300万部を売り上げたタチアナ・ド・ロネの原作を基に製作されました。
2009年。夫と娘と共にパリで暮らすアメリカ人女性ジャーナリストのジュリアは夫の両親が住んでいた古いアパートを譲り受けて住むことになります。その家はかつてユダヤ人から没収された家で、貸金庫にあった手紙を読んだジュリアはユダヤ人の少女・サラに興味を持つようになります。時は遡り1942年7月16日早朝。パリのマレ地区・サントンジュで行われた、フランス警察によるユダヤ人の一斉検挙。10歳のサラは弟・ミシェルを守ろうと納戸に隠し、鍵をかけ連行されます。
過去と現代を交錯させながらミステリーのように紐解かれていく史実と驚愕の歴史。戦禍がもたらす傷痕に今もまだ嘆き苦しむ人がいることを知る、静かな秀作です。
『レッド・ファミリー』2013年 第26回東京国際映画祭観客賞受賞
レッド・ファミリー
2013年の観客賞受賞はキム・ギドクが製作総指揮・脚本を、イ・ジュヒョンが初となる長編映画監督を務めたこの一作。
舞台は韓国。まるで絵に描いたような誰もがうらやむ理想の家族。ですがその正体は、母国からの密命を遂行するために韓国に潜入している北朝鮮の工作員チーム、サザンカ班でした。一方で彼らの隣りには何かと押し掛けてくるやっかいな韓国人一家が暮らしています。彼らを資本主義の隷属者と見下しながらも密かに憧れ、母国の命令を重んじて来た4人は、家族的な絆を育むようになり……。
仲の良さそうな擬似家族と、ケンカの絶えない韓国人家族。対照的な2つの家族の交流から、現在の朝鮮半島における問題を浮き彫りにした社会派ドラマ。幸せそうな疑似家族たちには、母国に人質にとられた本物の家族がいるのです。戦争で犠牲になるのはいつだって庶民。コミカルさがより一層切なさを際立たせる価値ある一作。
『紙の月』2014年 第27回東京国際映画祭観客賞受賞
紙の月
角田光代によるサスペンス小説の映画化作品が2014年の観客賞受賞作。銀行勤めの平凡な主婦が引き起こした大金横領事件を描き、映画では宮沢りえが主演を務めましたが、テレビドラマでは原田知世が主演を務めました。
裕福な家庭で育ち、カード会社勤務で安定した収入を得ていた梅澤梨花は、結婚を機に家庭に入ります。子供のいない専業主婦の暮らしに耐えられなくなった梨花は再び銀行で営業の仕事を始めますが、顧客先で出会った若い青年にのぼせあげ、顧客の現金を拝借して高級化粧品を購入したのを機に、少しずつ狂い始めます。
善意から犯した罪の正当化が、いつのまにか欲望から犯す罪の正当化へ、欲望は留まるところを知りません。容姿もとりまく環境も平凡すぎる彼女が犯罪に染まって行くほどに、美しく輝きだす不思議。小林聡美の存在感も特筆したい業(ごう)のドラマです。
『神様の思し召し』2015年 第28回東京国際映画祭観客賞受賞
神様の思し召し
腕は良いが傲慢な心臓外科医トンマーゾ。その性格から周囲からも面倒がられている彼は、ある日、息子の思いがけない告白に動揺することになります。その告白とは、「神父になりたい」。てっきり自分の跡を継ぐものだと思っていたトンマーゾは、息子が慕うピエトロ神父の本性を暴くために、信者を装って教会に潜り込みます。
型破りな神父との交流を通じて人生を見つめ直す男の姿を描いたヒューマンドラマが2015年の観客賞。エリート医師と前科者のカリスマ神父の間にはいつの間にか友情が芽生えていきます。年齢を重ねれば重ねるほど考えは凝り固まって、柔軟になることは難しい。これまでの自分を否定するようで変化することは苦しく、難しい。そんなとき、説教臭さを感じさせることなくユニークに導いてくれる素敵な一作。偏見や固定概念、そして未知のものを、知り許容することが大切だと実感できます。
『勝手にふるえてろ』2017年 第30回東京国際映画祭 観客賞受賞
勝手にふるえてろ_poster
綿矢りさによる同名小説の映画化が昨年の観客賞受賞作です。
24年間恋愛経験ゼロのOLヨシカは、日々、中学時代から片思いをしている一宮(イチ)との「脳内恋愛」を楽しんでいます。ある日、ヨシカは同期の霧島(二)から、生まれて初めての告白をされ、歓喜に沸きます。浮かれるヨシカですが、イチの存在がチラついて二とのつきあいに今ひとつ気分が乗らない。そんな中、ヨシカはとあるきっかけから、イチと会うために同窓会を計画します。
超こじらせ女子の妄想と現実を描いたラブストーリー。
で、兎にも角にも、ヨシカを演じた吉岡美優が素晴らしい。脳内はあんなに饒舌なヨシカですが、現実世界では口下手。脳内は彼女のオアシス。妄想だけが彼女のエネルギー。やっと適応し始めた現実は、果たしてヨシカにとって明るい世界なのでしょうか。
向かい合うべき現実・慈しむべき現実をつきつけてくれる一作です。

世界中で行われる映画祭を見てみても、アカデミー賞やヒットへの影響が高く、面白さの信憑性が高い「観客賞」。東京国際映画祭以外にも例を挙げると『ベイビー・ドライバー』はSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)映画祭で観客賞を受賞していますし、ルーム世界にひとつのプレイブック英国王のスピーチなどはトロント国際映画祭で観客賞を受賞しています。 今年の東京国際映画祭も既にラインナップが発表されていますから、あなたの手で投票するもよし、後で観るもよし。ぜひこれから「観客賞」、頭の片隅に置いてみてください。 あなたの人生に影響するような思わぬ良作に出会えるかもしれません。

Writer | 春錵かつら

映画を主軸にムックや月刊誌、WEBで活動中のフリーライター。 CMのデータ会社にて年間15,000本を超えるCMの編集業務に携わる傍ら、映画のTVCMのコラムを某有名メールマガジンにて連載。 フリーに転身後、大手コンピュータ会社の映画コンテンツのディレクターを務める。料理本、漫画/映画解説本、ペット関連、ビジネス本など、 幅広いジャンルで執筆中。著書に「絶対に見逃すな! 犬の症状これだけは!」など。

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