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電車が出ている映画が好きな人【映鉄】に捧げる6本

2018.11.07(Wed) | 仲谷暢之

電車を乗ることが好きな【乗り鉄】。電車をカメラに収めたい【撮り鉄】。自宅などで鉄道を自分のものにしたい【模型鉄】。鉄道に関する様々な音にシビれる【音鉄】。時刻表を見て妄想を膨らませたりする【スジ鉄】。鉄道の技術的な部分が大好きな【技術鉄】。食通の延長である【駅弁鉄】。グッズを集める【収集鉄】。駅のスタンプを押し集める【押し鉄】などなど、一概に“鉄道ヲタク”と言っても今や前記した様にさまざまなカテゴリーに細分化されて、それぞれ沼にズッポリハマるが如く、抜け出せないまま浸っている(いや、追求されている)方も多いですね。

かくいう自分も鉄道は嫌いではありません。むしろ好きかも。でもまだ沼にハマるまではいかず、浅瀬でチャプチャプと戯れている程度。でも、でも、鉄道が登場する映画は大好き。そういや鉄道映画好きを【映鉄】というのを聞いたことないですね。もっと【映鉄】な方がいたらいいなぁということで今回は青山シアターで見ること【映鉄】オススメの作品を6本ご紹介します。

『えちてつ物語~わたし、故郷に帰ってきました。~』
©2018『ローカル線ガールズ』製作委員会
まずは11月23日(金曜日)より公開される『えちてつ物語』。

横澤夏子演じる山咲いづみは、お笑い芸人を目指して福井から上京するものの、現実は甘くなく、コンビ解散目前。そんなタイミングで友人の結婚式で帰郷。
そこで、ひょんなことから出会ったえちぜん鉄道、通称えちてつの社長から車内でアテンダントとしてスカウトされ、地元で新しい道を歩むものの、なかなか腰掛け気分が抜けない。しかも実家では、昔のわだかまりから血の繋がらない兄との関係でギクシャクしたまま。さて、いずみはアテンダントとしてどうなるのか、そして兄とのとの関係は・・・。というお話。

えちてつは2002年設立され、福井県福井市から勝山市、坂井市までを結ぶ鉄道路線。今回この映画で初めて知ったアテンダント。乗車券の販売や回収、観光案内などのアナウンス、高齢者や妊婦、子どもなどの、乗降時のサポートを行う女性客室乗務員だそう。

ひとりコントで名を馳せる彼女、どんな演技を見せてくれるんだろうって思ったものの、これが素直でいいんですよ。東京で芸人として頭打ちで苦労しているにも関わらず、どこか崩せないプライドを持ちながら故郷、福井に帰ってくる彼女の姿。そして、自分の新しい居場所が徐々に見つかっていく様 はなかなか素晴らしくて。

そんな彼女とギクシャクした関係ながらもなんとかしたいと思う兄役に緒形直人も本当に素晴らしい。
ストーリーとしてはお行儀のいい感じ。だけど、見終わるとえちてつに乗ってみたくなりました。さらに福井の魅力を知ることのできる観光映画としても楽しめるのが嬉しい。
越前そばや、永平寺、丸岡城、東尋坊などいろいろあるんだなぁ。どうしても冬場のカニ~ッ!の印象が強いけどいろいろ春や夏、秋に訪れるべき場所なのかも。ただ、恐竜博物館が出てこなかったのが不思議。
それにしても横澤夏子、マジで年に何度かでもいいのでえちてつのアテンダントとして乗り込んでくれないかなぁと思った次第。

映画『えちてつ物語~わたし、故郷に帰ってきました。~』
2018年11月3日(土)福井県先行公開/11月23日(金・祝)有楽町スバル座ほか全国公開
『阪急電車 片道15分の奇跡』
阪急電車
最初に「図書館戦争」や「三匹のおっさん」などの有川浩氏の原作を映画化すると知った時はそんなまぁピンポイントなローカル線を!と驚いたけれど、観るとあの短い路線やからこそ描けた話やなぁと感心したことを覚えてる。何よりよく知っているだけにテンションが上がった!なんだか身内や親戚がテレビや映画に出たような感じ。

阪急電車今津線は兵庫県西宮市の今津駅から宝塚駅までを結ぶ鉄道路線。サブタイトルにもあるように15分ほどの短い路線。だけど宝塚大劇場、手塚治虫記念館、阪神競馬場、関西学院大学、門戸厄神など名所と呼べる場所が多数あるし、閑静な住宅街でもある。
そんなエリアを走る電車の中から綴られる人間模様。
婚約中の恋人を後輩に奪われた32歳のOL女性。
イケメンやけどDVな恋人に振り回される女子大生。
見た目とは裏腹な男子大学生と、田舎から出てきてコンプレックスに悩む女子大生。
アホな社会人と、大学受験を控えてる女子高生。
息子のPTAで知り合ったママ友グループに違和感持ちながらも流されるままにつるむ主婦。
あまりうまくいってない息子夫婦の孫の世話をする老夫人。

それぞれのキャラクターとエピソードが強引ではなく、つかず離れずな感じで答えを導き出していく感じがいいです。それはまるで小説のページをフッと息を吹いてめくるような感じ。

駅のホームにウエディングドレスで凛として立つ中谷美紀の、ある意味ギリギリの説得力をはじめ、戸田恵梨香、宮本信子、有村架純、南果歩、玉山鉄二、勝地涼、鈴木亮平、芦田愛菜、谷村美月、相武紗季といったなかなかの豪華キャストとアンサンブルの妙。しかも中谷、宮本、勝地以外ほとんどが関西出身だけに関西弁に違和感がないのが、関西人としてはとても嬉しい。

実際に、今津線沿線の様々な場所がロケ地として使われているし、実際に走っている阪急電でも分刻みのスケジュールで撮影しているのもリアルで嬉しい。関西人からすると、この作品に登場するタイプの人っているんですよね(特に南果歩のエピソードに出てくるおばちゃんたち)。それだけに「痛快TVスカッとジャパン」的な展開は溜飲が下がります。
『RAILWAYS 49歳で電車の運転手になった男の物語』
RAILWAYS
11月30日に7年ぶりにシリーズ3作目「かぞくいろーRAILWAYS わたしたちの出発」が公開される「RAILWAYS」シリーズ1作目。
島根県で一人暮らしをしている母親が倒れたこと、会社の同期が亡くなったことをきっかけに、家庭を顧みず仕事人間だった中年男がそれまで働いていた一流企業をやめて故郷に戻り、子供の頃から憧れていた電車の運転手になろうとする物語。
その電車がこの映画がきっかけとなって脚光を浴びた一畑電車。松江市と出雲市を結ぶローカル線で、通称“バタデン”。昭和な雰囲気漂う車両が特徴でのどかな田舎の風景を走るのが素晴らしい(それこそもう一人の主人公のようにたっぷり描写されているのがいい!)。実際、この電車に乗ったことがあるけれど、まさに“のどか”という言葉に尽きました。言った季節は晩秋に差し掛かる頃、肌寒いけれど秋の枯れた風の匂いと紅葉が本当に美しかったのを覚えています。しかも途中、自転車と一緒に乗車してきはった人がいて(持ち込みOKらしい)びっくりした覚えがあり、そういうのも含めてなんとも素敵な路線でした(でも、冬は寒いやろなぁ)。

運転手を目指すアラフィフの中年男を演じるのは中井貴一。自分、正直、これまであまり中井貴一という俳優を意識して見たことなかったんですが、この作品で、ちゃんと俳優としてウワァいいなぁって感じました。リアルに彼の父で俳優の佐田啓二(37歳という若さで自動車事故がきっかけで死去)の面影をしっかり感じさせてくれて・・・。仕事人間だった主人公が故郷に帰って、いろんな人と出会い、地元を再認識することによって徐々にというよりフワ~っと力が抜けるように変わっていく機微が素晴らしくて。しかも年下の運転手(三浦貴大が好演!)との交流も。なんだか今の映画なのに、昭和30年代の人情映画を見ているような味わい。最近は町おこし映画が多く、なんだかギラギラしたものを感じる中で、素直にいい作品だなと感じられる。そして何より、松任谷由実の主題歌がさらに郷愁度をアップしてくれてたまりません。
『天才スピヴェット』
天才スピヴェット
精肉店の謎を描く落語や講談的に見せる「デリカテッセン」、シリーズ一の異色作「エイリアン4」、不思議少女の集大成!?「アメリ」、軍需工場への復讐譚「ミック・マック」など毎回、映像、美術、キャラを独特の世界観で表現するジャン=ピエール・ジュネ監督が今作でも汲めども尽きぬ泉のごとく独自の映像美を堪能させてくれる作品(劇場公開時は3D!)。

アメリカはモンタナ(超田舎の代名詞)の牧場で暮らすスピヴェット。彼には双子の弟がいたものの、銃の爆発事故で死亡。そのことがきっかけで活発な弟が理想の息子だった父親、昆虫博士の母親らは残されたスピヴェットとギクシャクした関係に。そんなある日、彼の元にスミソニアン博物館から素晴らしい発明をした者に贈られるベアード賞受賞の知らせが。実は彼は天才的なIQを持っており、密かに発明していた磁石で半永久的に動く磁気車輪が評価されていたのでした。が、問題は授賞式への出席。両親にも言い出せず、最初は嘘をついて出席を断るものの、田舎では天才的な頭脳も使い道がないけれど、スミソニアンならきっと役に立つ!と思い立ち、家出同然で授賞式が行われるワシントンD.Cにひとり大陸横断することに・・・。

あるアイデアで停車させた貨物列車に無理やり飛び乗ってワシントンD.C(正確にはシカゴだけど)に向かうんですが、この道中が本当に面白いです。昔は、ホーボーと呼ばれる無賃乗車で貨物列車に乗って街から街へと移動する労働者やホームレスたちがいたけれど(このキャラクターを主人公にしたのがロバート・アルドリッチ監督の「北国の帝王」。リー・マーヴィンとアーネスト・ボーグナインの戦いがすさまじい佳作)、スピヴェットはホーボーになっちゃった感ではあるけれど、天才的頭脳でピンチを切り抜けるところがなんか今という感じ。さらにこの列車で繰り出されるビジュアルも最高で、いつまた警備員や車掌に見つかるかとハラハラするけれど、逆に自分も乗ってみたくなる。でもそこはまだまだ子ども、お母さんが恋しくなる場面には、見てるこっちまで切なくなるし、間接的だけどお母さんの胸の内もわかり、余計に切ない。それでも列車が着いて、さらに紆余曲折あってスミソニアンにたどり着いてから、一気に彼が成長しているのがわかるのも感動的。特に「3つだけお話しします」というスピーチのシーンは落涙必至。
ちなみにこのシーン、10ページもセリフがあるのにも関わらず、2テイクで撮り終えたそう。それを知って見るとスピヴェットを演じたカイル・キャトレット自身も成長したんだなぁと思うはず。
『LION/ライオン ~25年目のただいま~』
LIONライオン
「スライディング・ドア」という、もし、この地下鉄に乗っていたら、もしくは乗っていなかったらという2通りの恋愛を描いた映画があったけど、今作は幼い頃、駅ではぐれた兄を探すため、つい目の前の列車に乗ったばかりに人生が一変するという皮肉としかいいようのない物語。

インドに住む貧しい家の兄弟が、夜中も働く母親を助けるために街に働きに。やっぱり子どもですから眠くなる。しかも乗ってしまったのはブルハンプールからコルコタまでというインド横断でおまけに運悪く回送電車。停まらないわけです。結局2日間乗りっぱなしで最終駅コルコタまで・・・。5歳の子どもが右も左も分からない土地にほっぽり出され、そこでは警察に追われ、人さらいに狙われ、食べるものも食べずひたすらさまよい歩く毎日。たまたま親切な男性が警察に連絡し、保護され、孤児院に入所することになり、その後はオーストラリアに住む夫婦に養子としてもらわれることに。やがて成長した彼はあるきっかけから幼い頃の記憶が蘇り、そこから家族探しを試みることになるのですが、住んでいた場所の記憶は曖昧、インドという広大な土地ゆえに手がかりはほとんどなしの中、友人がグーグル・アースを使ってみたら?という提案でさらに自分探しにのめり込むが、その作業は半端なく困難だけが待ち構えていた・・・。

これ、実話なんです。びっくりしました。僕も小さい頃、電車を乗り間違えた経験があるのであの怖さったらないです。ま、逆の路線に乗ってしまって2~3駅乗り過ごしたただけですから、映画の彼に比べたら屁みたいなもんですが、やはり小さい子どもにとって経験のない社会と交わる未知なる乗り物にたった一人で乗ってしまう不安と恐怖は正直、今もトラウマとして残ってます。ましてや2日間も乗りっぱなしって、ただただ恐怖。
「世界の車窓から」なんて番組でたまにインドの長距離列車が紹介されるとその果てしなさにロマンを感じつつも、実際に乗ったらちょっとうんざりするだろうなという気持ちもあります。乗り鉄の人はこういうのも我慢できるのかしら。

この映画の成功は主人公サルーの子ども時代を演じるサニー・パワール君に尽きると思います。本作が映画初出演ですが、とにかく自然体。そして瞳の持つパワーに魅了されます。そしてニコール・キッドマンの養母がさすが。地味な役ではありますが、サルーを受け入れる慈愛に満ちた演技は作品を引き締めてくれてます。
『新感染 ファイナル・エクスプレス』
新感染
野心の塊のような仕事第一主義のファンドマネジャーのソグが誕生日を迎える一人娘から「釜山にいる母親に会いたい」と言ったことから、内心面倒臭いなぁと思いながら、娘への心配と後ろめたさもあり、ソウル駅からKTXに乗車。発車間際に乗り込んできた一人の女性はなんだか様子が変。しかも車内で倒れてしまいます。そんな彼女を介抱しようとした乗務員ですが、突然襲われて豹変。次々と乗客たちを餌食にしていき、ゾンビウイルスを感染させまくることに。逃げ場のない列車内でソグを含む生き残った乗客たちは逃げ惑うのですが・・・。

KTXはソウル駅から釜山駅までを結ぶ韓国鉄道公社が運営する高速鉄道。他にも5つの路線で運行されている今やなくてはならない鉄道。そんな親しまれている列車の中でゾンビが大量発生したらというアイデアがすごい。しかも高速だから滅多に止まらないし、ゾンビが増えていくにつれ、移動できる車両が狭まっていく恐怖。
そして主人公をはじめ、そのほとんどがいい意味でも悪い意味でもエゴを出しまくり、自分たちさえ良ければ根性を、全面的に振りまくのがすごい。でも、こういう生きるか死ぬかの瀬戸際にキレイ事言う奴なんて信じられへんと、核心をついているから見ている僕らもちょっと納得したりする。

とはいえ、妊娠中の妻とともに運悪く列車に乗ってしまったマ・ドンソク演じるサンファはコワモテ、無骨ではあるけれど、ただただ妻を守るために奮闘する姿はこの映画の良心。正直、主人公ソグよりも見るものを熱くさせるし、彼がいたからこそ、それまで自分のことしか考えてなかったソグの気持ちも変化し、泣けるゾンビ映画として昇華したのだなぁ。

【映鉄】作品、今回紹介したほかにもまだまだ青山シアターにはあります。「RAILWAYS 」シリーズ第2弾RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ」、「京都太秦物語」「天使の欲望」「地下鉄に乗って」「通学電車」「通学途中」「ぼくらの家路」「明日の空の向こうに」「シン・ゴジラなどなど。様々な電車の使われ方を楽しんでもらえたら嬉しいです。

Writer | 仲谷暢之

ライター、関西を中心に映画や演劇、お笑い、料理ネタなどなどいろいろ書いてます。

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