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走り続けるぞ!猪突猛進映画大集合!

2019.01.02(Wed) | 仲谷暢之

2019年はイノシシ年。この干支の年がやってくると、どうしても頭に浮かぶのが“猪突猛進”という四字熟語。ひとつのことをただがむしゃらにまっすぐ、猛烈な勢いで突き進むことを意味する言葉。
ということで、今回は猪突猛進という言葉がふさわしい、青山シアターで見ることができる映画をご紹介します。

『ボン・ボヤージュ~家族旅行は大暴走~』
ボン・ボヤージュ
まず一本目の猪突猛進。
舞台はパリ、7月になると老いも若きもバカンスに入りますが、主人公家族も当然のごとく2週間の旅行へ。AI搭載の最新型の車に乗り、前途洋々な旅も、主人公トムの、恋多き父が女性に振られたからとやってきたことからなんだか不穏な空気になってきます。早く家族だけの旅行に出たい臨月状態の妻のジュリアは早く義父に帰ってもらいたいものの、トムの妙な同情から、同伴することに。さらに、整形外科医をしているトムの女性患者からボトックス注射してもらったけれど、どうも違和感があっておかしいという電話が!とりあえずその場を取り繕い、なだめたトムは車を走らせますが、道中、父親がいらんことばかりして(本当に、本当にいらんことばかりする!)、ジュリアや子どもたちのガマンはマックス寸前。さらにトムと義父とのやりとりで、ジュリアのガマンはキャパオーバー。パリに戻ると宣言するも、ちょうどその時、自動運転も温度調節も、行き先ナビも完璧だったAIに不具合が起こり、ブレーキも効かず、全く制御できなくなり、なんと時速130kmのまま高速道路を走り続けることに。途中、ぶつけてしまった車の運転手からは追いかけられ、車の異常に気づいた警備隊のバイク部隊からも追跡され、事はどんどんと大きくなる一方。さらにそれまで順調に走っていた道路が数キロ先からバカンスあるあるの渋滞であることが知らされて・・・。

フランス映画っていつ間にか日本で公開される作品は、アート系というか小品のイメージが強くて、フランス映画=ミニシアター系みたいなイメージがありますが、実は昔からアチャラカ、ドタバタ系の作品が割と多く、チェーン館で公開されていたんですよ。個人的には「ザ・カンニングIQ0」なんてカンニング活動に勤しむ学生たちのドタバタを描いた作品で大ヒットしたこと、凄く覚えてます(後に安室奈美恵主演でリスペクト映画が作られたくらい)。

今作も、楽しいはずのバカンスが招かれざる客によってしっちゃかめっちゃかになるというコメディには定番なシチュエーションなんですが、やはりフランスならではのスノビッシュ(底意地の悪いとも言う)な笑いと伏線が散りばめられ、最終的に気持ちよく収束してます。

「知恵は人を傲慢にする」なんて言葉がキリスト教の教えにありますが、それがまさに今作に当てはまる、猪突猛進ぶりを堪能してください。
『ナイト・チェイサー』
ナイト・チェイサー
お次の猪突猛進もフランス映画から。
タクシーで無賃乗車したためにその運転手からとことんまで追いかけられ、逃げ惑う事になる男ふたりを描いた物語。

かつてパリに住んでいたクリス。ある出来事がきっかけで故郷であるロンドンに戻っていたのですが、数年ぶりにパリへ。旧友のリュックや元カノと再会。昔のようにパーティに繰り出し、その後タクシーに。
そのタクシー普通のタクシーとは少し雰囲気が違って真っ黒でなんだか重厚。しかも「踏み倒しは許されない、負債は必ず返済させるぞ」みたいなことが書かれているし、まず運転手の威圧感と無言の行動が不気味です。
それでもリュックはお金をATMで下ろしてくるから待ってろと指示し、クリスを無理やり引っ張り出して無賃乗車。そこからどこまでもどこまでタクシーは二人を追いかけ、巻いたと思っても必ず見つけ出されてしまいます。見てて思わずスティーブン・スピルバーグの出世作「激突!」を思い出してしまいましたが、違うのは運転手が車を降りてガンガン、逃げる二人の関係者たちに制裁を食らわすんです。それがかなりのえげつなさ。それだけに無賃乗車さえしなければという思いが二人をただただ後悔の淵に追いやります。しかも元カノにまでその魔の手はやってくる始末。とにかく逃げるしかないと走り回るのですが・・・。え!そうなんの!?と、なぜか日本も関連してくるもの凄い意外な展開が待ってました。ジャパニーズ・コミックの影響が多大にある終盤は、ぜひ見てのお楽しみです。
『ビッグマッチ』
ビッグマッチ
韓国からの猪突猛進は、コーチであり、パートナーである兄を、エースというマッドネスな悪党に拉致られた弟が、彼の指示に振り回されながら救出するために奔走する話。

総合格闘家・イクホ役のイ・ジョンジェのタフさにまずしびれます。兄がいなくなり、いきなり殺人の容疑をかけられる彼が警察から無茶振りの脱獄するシーンはとにかくハラハラドキドキ。飛んで走って、走って飛んで、隠れて走ってまた飛んで警官たちをかわしながら逃げる様はまさに猪突猛進を絵に描いたよう。
そのステージをクリアしたと思ったら次に訪れるのがヤクザだらけのビル。まるでインドネシア映画の「ザ・レイド」を彷彿とさせるガッチガチのヤクザがはびこるビルに、落ち着く間もなく単身乗り込みゲーム並みのナイフ、拳銃、素手などで戦います。
そんな彼を仏様の手の平で転がすかのように指示するのが、「悪女」でも怪演していたシン・ハギュン演じるエース。スタンリー・キューブリック監督の映画「博士の異常な愛情 または私はいかにして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」に登場するストレンジラヴ博士のような不気味さに滑稽さとアジアンテイストを施したキャラで、テンションをアップダウンさせながら主人公を追い詰めていく。さらに日本でも人気だったBoAが謎の女役で、ただでさえ大変なのイクホを、さらに窮地に追い込んでいきます。

イ・ジョンジェと言えば「イルマーレ」や「ハウスメイド」など大人なドラマのイメージがちょっとあったんですが、今作では40代とは思えないムキムキっぷりでひたすら兄を救うために動き倒してる姿を見ると、これからもどんどんおやじ系アクションをこなしていってほしいなぁと思いました。
ストーリーも後半に従って時間との戦いにもなり、さらにイ・ジョンジェの猪突猛進ぶりに拍車をかけてくれます。ま、韓国映画ならではの展開の大風呂敷も強引さで見せ切ってくれるので気楽な気持ちでご鑑賞ください。
『弾丸ランナー』
弾丸ランナー
そして日本からの猪突猛進は、まさに名(タイトル)は体を表わしている作品。
ストレスがたまる毎日、その上、唯一心の拠り所だった女性に振られた主人公が、自暴自棄となって“大きいことやったろやないけ!”とばかり、銀行強盗を計画。が、顔を隠すマスクを忘れた!とコンビニに入り、とりあえずのマスクを万引きしようとしたところ、コンビニ定員に発見され咎められると、持っていた拳銃を発砲し、店員にケガを負わせてしまいます。驚いた主人公は逃げますが、キレた店員は彼を追いかけることに。どこまでもどこまでも走り続けるふたり。そこに偶然、店員にクスリを売ってたものの金をもらっていなかったチンピラが、彼が見つけ、金をもらうために追いかけることに。大きなことやったると思ったものの、結局万引きで逃げる主人公、彼にケガをさせられたヤク中の店員、店員の金を狙うチンピラと、三者三様の思いを巡らせながら三つ巴の追いかけっこが続くというもの。その果てしなく続きそうな男たちの追いかけっこの間に、それぞれの物語が挿入されていきます。

主人公には「プロジェクトX」のナレーションや「植物男子ベランダー」、「バイプレーヤーズ」などで活躍する田口トモロヲ、ヤク中の店員にはミュージシャンとして俳優としてタレントとして幅広く活動しているダイヤモンド☆ユカイ。チンピラには「三丁目の夕日」「SP」シリーズの堤真一が演じ、その若き姿と演技が貴重。この時代があって、今も彼らがあるのだなあぁと再認識できるのも嬉しい作品。とは言え、個人的に堤真一という俳優はずっとせわしい人だなぁと感じていたのですが、すでに今作でもせわしい人だったので、自分の彼に対する印象は間違っていなかったと確認しました。
あと、大杉漣さんがセリフも含めて印象深い演技を見ることができるのも嬉しいです。

この作品でデビューしたSABU監督は、ひょんなことから結果、追いかけっこしてるというメインストーリーにうまくサブエピソードを挿入することに成功していて(クエンティン・タランティーノのリスペクトなどがモロに出てて初々しいけれど)、それが続く、殺し屋に間違われた郵便局員が警察とヤクザから追われるという「ポストマン・ブルース」やひょんなことから強盗犯と殺人犯になって追いかけられる「アンラッキー・モンキー」やサラリーマンが酔った勢いで事故ってしまい、警察やヤクザから追われるという「MONDAY」という映画を発表しています(しかもすべて堤真一が出演!)。それらの作品も併せて、SABU版猪突猛進サーガとして楽しむのもいいかもです。
『舞妓Haaaan!!!』
舞妓Haaaan!!!
最後も日本から。高校の修学旅行で訪れた京都で迷子になった時に舞妓さんと出会い、いつかお茶屋さんで芸妓、舞妓さんと野球拳をしたい願うようになった男子が猪突猛進するというもの。
宮藤官九郎が一度も京都に行かず、旅行雑誌「るるぶ」を読みながら脚本を執筆したと言われるある種妄想ファンタジー。

食品会社に勤める鬼塚公彦は舞妓さんの写真をアップするブログを立ち上げているのだけど、ある時、ブログ読者からお座敷にあがったことはないのでは?という指摘を受けバカにされる・・・。

運よく(体良く?)京都に転勤となった鬼塚は念願のお茶屋に行けると行動を起こすのだけど、一見さんお断りという、初めてのお客は紹介のない限り、お座敷に上げれないというお茶屋ルールの壁によって撃沈。自社の社長がお茶屋の常連ということを知り、無理やり同伴しようとするも断られ、仕事で結果を出せば連れて行ってやると言われ、一念発起。京都からオリジナルカップ麺を売り出して大成功する!そのおかげで社長自らの接待により、いよいよ憧れだったお茶屋デビューという時に、あることが発覚して・・・。

鬼塚公彦には阿部サダヲが演じているのだけど、とにかくズ~~~~っとハイテンション。宮藤官九郎とは松尾スズキ主催の劇団大人計画からの付き合いで、グループ魂というバンドのメンバー同士ということもあって、彼の書く脚本から求めているものを完全に熟知!その期待を十二分に体現している(しかも初主演映画だし)。それにつられてか、こちらもハイテンション演技を競うのが、鬼塚のブログに喧嘩を売り、以後ライバル的存在になる野球選手の内藤を演じる堤真一。「弾丸ランナー」で確信したせわしない感の進化系を思う存分楽しめます。

内藤が先手を打つと、鬼塚がそれに追随して周りを巻き込みながら猪突猛進、目的に進む姿はまるで「チキチキマシン猛レース」のよう。とにかくバカバカしいストーリーですが、70年代に日本映画で大量に作られたドタバタ喜劇映画のようで、懐かしさと香ばしさが漂っております。「舞妓はレディ」と合わせてみてもいいかもしれないですね。

ほかにも貧乏大名が期限付きの参勤交代で猪突猛進する超高速!参勤交代や、ただただ世界一美味しい牛肉を探すために猪突猛進するドキュメンタリーステーキ・レボリューション、生徒会長になるために猪突猛進する帝一の國、お金を貯めるために猪突猛進する家族を描いた木村家の人々、あらゆるモノを運ぶために猪突猛進するトランスポーターシリーズなどなど、何かに向かって走り続ける作品が青山シアターにありますのでぜひ楽しんでください。

Writer | 仲谷暢之

ライター、関西を中心に映画や演劇、お笑い、料理ネタなどなどいろいろ書いてます。

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