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役を生きる名優・樹木希林の名演を振り返る『万引き家族』『あん』など厳選5作!

2019.01.31(Thu) | 斎藤香

2018年に天国へと旅立った名優・樹木希林さん。多くの映画作品に出演し、たくさんの感動を運んでくれた樹木さんの出演作の中から5作品をピックアップしました。いずれも2000年以降の名作ばかりです。今改めて樹木希林さんの名演技を作品を通して見ていきましょう!

入れ歯を抜いて見せた渾身の演技!『万引き家族』
万引き家族
樹木希林さんが出演する6作目の是枝裕和監督作。万引きの常習犯である家族のおばあちゃん、初枝を演じています。

万引きを終えた治(リリー・フランキー)と息子の祥太(城桧吏)は寒空の中で凍えていた少女(佐々木みゆ)を連れて帰ります。少女の不幸な境遇を知った治や信代(安藤サクラ)は、少女を家族の一員として迎え入れますが、この家族は、ワケありの人間たちが集まった疑似家族。しかし、この少女が家族の一員になったことがきっかけで、偽りの家族は崩れていくのです。

都会の底辺で暮らす人間たちが築く疑似家族を描きながら、家族、幸福、人生について考えさせられる人間ドラマ。樹木さんは彼らが自分の年金目当てに寄ってきていることに気づきながらも、彼らを受け入れる孤独なおばあちゃん。パチンコ屋での万引き、みかんを食べるシーンの奇妙さなど、全身でリアルを浮き上がらせる演技で、独特の存在感を放っています。

『万引き家族』
米国アカデミー賞 外国語映画賞ノミネート
2019.2.8(金) 凱旋上映決定!
実家の世話好きの母を思い出させるぬくもりある演技『海よりもまだ深く』
海よりもまだ深く
団地に暮らす主人公の母を演じている樹木さん。どっしり構えた安定感で、見る者に懐かしさを感じさせます。

探偵事務所に勤めている良多(阿部寛)は、せこくて自分に甘い性格。元妻・響子(真木よう子)からは愛想をつかされて離婚。息子の養育費をなかなか払わないため、ますます元妻に嫌われてしまいます。ある台風の夜、良多の母(樹木希林)が暮らす団地に良多、卿子、息子が偶然集まり、4人は久々に夜を一緒に過ごすことになるのですが……。

ダメ中年になった良多だけれど、実家の母は息子可愛さに何かと面倒を見てしまう……というあるある感満載のお母さん像を樹木さんが軽妙に演じています。娘(小林聡美)とのやりとりでは、母親が息子と娘に見せる顔の違いも表しており、何気ない場面で見せる演技がやっぱり巧い! 全編、ほっこり温かい樹木希林を見せてくれます。
昭和の忍耐強い母を熱演し、涙を誘う名演『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』
東京タワー/オカンとボクと、時々、オトン
リリー・フランキーの自伝的小説を松岡錠司監督が映画化した本作で、シングルマザーを演じた樹木希林さん。ザ・昭和のお母さんが息子を見守る姿を演じています。

1960年代、暴力的なオトンに耐え切れずに3才の息子を連れて家を出たオカン(樹木希林)。息子のボク(オダギリジョー)は成長し、高校進学とともに家を出て、やがて東京の美大に進学。しかし、勉強そっちのけで留年するわ、卒業後も就職せずにフリーターになるわ自由きままな上に、20歳過ぎてもオカンから仕送りをもらっていました。しかし、オカンが癌に侵されたことをきっかけに東京に呼んで、二人暮らしをすることになるのです。

息子の成長を遠くから見守り、彼のやることに決して口出しせず、見守り続けた昭和の母。ものすごく尽くしているのに、母の愛が重く感じないのは、樹木さんの軽やかな個性と演技力あってこそ。癌に苦しむ姿など辛いシーンもあったけど、この映画の樹木さんを見た人は、自分の母を自然と思い出すことでしょう。
上品で知的でユーモラスなヒロインが教えてくれる人生の意味『あん』
あん
小さなどら焼き屋で働き始めた老女は、小豆と対話しながら美味なあんを作り続ける……。彼女の秘められた真実に胸が痛くなる河瀨直美監督作です。

小さなどら焼き屋の雇われ店長をやっている千太郎(永瀬正敏)のもとに「雇ってほしい」と徳江(樹木希林)が現れる。彼女が持参したあんを食べた千太郎は感動し、あん作りのスタッフとして雇うことに。すると、どら焼き屋はみるみる大繁盛! しかし、心ない噂が徳江と千太郎を傷つけ、どら焼き屋は窮地に陥るのです。

徳江が、小豆を丁寧に炊いて美味しいあんを作る工程を何十年もその仕事に従事してきた職人のように見せていく樹木さん。そんな徳江を演じる樹木さんの演技もまさに職人芸です。後半に明かされる徳江の病気のエピソードは胸が痛くなりますが、不自由な人生の中でも豊かな感性をもって誰よりも人生を謳歌していたのです。生きる意味とは何かを教えてくれる徳江は、樹木さん以外に演じられる人はいないでしょう。
風変りな画家モリの良妻をひょうひょうと演じる『モリのいる場所』
モリのいる場所
主演は名優・山崎努。その妻の秀子を樹木さんは演じています。名優同士の芝居の奥行きの深さにうなる実話ベースの作品です。

自宅の庭を愛し、虫や自然を観察しながら日々を暮らす画家モリ(山崎努)。マイペースな彼の毎日を支える妻の秀子(樹木希林)が、モリの身の回りの面倒なことを一手に引き受けています。ある日、近所に高層マンションが建つことになりました。マンションが建つと庭に日が当たらなくなることを危惧したモリはある決心をするのですが……。

本作では尽くす妻を軽妙な芝居で魅せてくれます。モリのことを「あなた」というたびに愛情が溢れ、そんなに会話がある二人ではないのに、いい夫婦だなあとしみじみ……。東京とは思えない鮮やかな緑の庭&古民家の家は、まるでそこだけファンタジーの世界のよう。54年間連れ添った夫婦の「あ・うん」の呼吸で営まれる生活はとてもまぶしいです。

樹木希林さんはどの作品でも独特の存在感を放っています。それは彼女の個性が役を活かし、ものすごく軽やかだけど、ものすごく強い光を放っているからです。樹木希林という名優の力をぜひ作品から感じてください。

Writer | 斎藤香

映画ライター 映画誌の編集者を経てフリーに。映画レビュー、監督&俳優へのインタビュー、書籍ライティングなどで活動中。映画のほかには教育関連の取材執筆もいたします。好きな監督はウディ・アレン、トーマス・アルフレッドソン、アルフレッド・ヒッチコックなど多数。

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