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“英雄”や“奇跡”はこうして生まれた…実在の人物を描く映画の知られざる真実

2019.03.13(Wed) | 上原礼子

『グリーンブック』や『ボヘミアン・ラプソディ』など実在の人物や実話を描いた映画は、いつの世も、埋もれてしまいがちな大切な真実を私たちに伝えてくれます。今回は、その後の歴史を変えるような“英雄”の存在や“奇跡”と呼ばれる出来事と、その裏にあった知られざる夫婦や家族の関係に着目してみました。

『ビリーブ 未来への大逆転』男性も差別されている!? 世紀の男女平等裁判を描く!
ビリーブ 未来への大逆転
85歳にして今も現役の最高裁判事であり、アメリカの生きる伝説、リアルスーパーヒーローとして幅広い世代に大人気のルース・ギンズバーグの若き日々を、『博士と彼女のセオリー』のフェシリティ・ジョーンズが演じます。

今から50年前のアメリカは、女性は仕事を選べず、自身の名前でクレジットカードも作れませんでした。その一方で“男性”も、身内の介護のためであっても専業主夫になれない、という現実がありました。その専業主夫になれないある男性のために、弁護士として立ち上がったのがルースです。

かつて、ハーバード法科大学院に500人中たった9人の女性として入学した彼女は、在学中も、就活中もあからさまな性差別に遭ってきました。そんな彼女が着目したのは、男性もまた法によって差別されている点。周囲の専門家たちが「100%負ける」と言いきる中、世紀の“男女平等裁判”に挑んでいきます。

また、ルースを常に支えたのが、税法の専門弁護士である夫のマーティ(アーミー・ハマー)でした。女性が家庭を守るべきという価値観が一般的だった時代に、夫の“家事参加・育児参加”なんて程度ではなく、共同作業としてできる人が、できるときに、できることをやる、という考えの持ち主だったのです。それはお互いへの尊敬と愛があればこそで、まさしく公私ともに最高のパートナーといえるでしょう。

そうした家庭で育ち、変革の時代を生きた娘ジェーンが、母ルースさえも甘んじていた旧時代的な価値観を一蹴してみせるシーンもあります! ルースたちのコンサバな50年代からトレンチコートやスカーフを使った70年代までファッションの変遷を楽しみつつ、クライマックスの5分以上におよぶ痛快なスピーチをぜひスクリーンで。

なお、5月にはアカデミー賞にノミネートされたドキュメンタリー『RBG:最強の85才』が公開されますが、本作にもルースご本人がちらりと登場しています。

映画『ビリーブ 未来への大逆転』
3月22日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
(c)2018 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC.
『ボストン ストロング ~ダメな僕だから英雄になれた~』過去の自分と闘う
ボストンストロング
2013年4月15日、「パトリオットデイ(愛国者の日)」に起きたボストンマラソン爆弾テロ事件。その被害者で、犯人の目撃者として捜査に協力し、一躍“ボストンのヒーロー”と呼ばれるようになった実在の男性ジェフ・ボーマンを、ジェイク・ギレンホールが製作も兼ねて演じます。

振られた彼女の愛情を取り戻すため駆けつけたマラソン会場で事件に遭い、両脚を切断することになったジェフ。それまでの彼は、仕事は中途半端、約束も守れないダメダメ男。その彼が「ボストン ストロング」(ボストンよ、強くあれ)の精神を象徴する存在として注目を浴びていく様と、その影にあった心と身体の痛みをも容赦なく描いていきます。

「テロに屈しない」とは、結局どういうことなのでしょうか? 突然ヒーローになってしまった自分自身と闘うジェフ、そして、そんな彼を支えた恋人と家族の愛に胸が熱くなります。
『オンリー・ザ・ブレイブ』消防士たちが命をかける理由とは!?
オンリーザブレイブ
昨年11月、ロス近郊で大規模な山火事が発生し、ハイウッドに大影響を与えたことがニュースとなりました。そんなときに活躍するのが、消防界のネイビーシールズとまでいわれる対山火事の精鋭部隊。この映画は、2013年にアリゾナ州で起きた巨大山火事に立ち向かった実在の消防士たちに敬意を込め、製作されています。

大自然が生み出す炎には険しい表情で挑む彼らも、家族や大切な人と過ごすときはまるで別人。本作では、彼らの決死の出動を見守る妻たちや子どもたちの存在もしっかりと描かれています。彼らが命をかけるのは、それぞれの家庭にあるささやかな日常の幸せを守りたいからにほかなりません。

なお、キャストにはマイルズ・テラー、ジョシュ・ブローリン、テイラー・キッチュらとともに『ボヘミアン・ラプソディ』でクイーンのドラマ-、ロジャー・テイラーを演じたベン・ハーディの姿もあります。
『ユダヤ人を救った動物園』命と尊厳を守るために
ユダヤ人を救った動物園
ユダヤ人を救った人物といえば、映画化もされたオスカー・シンドラーや杉原千畝が有名ですが、本作では、彼らと同じように自らの命の危険を冒しながらもナチスドイツに立ち向かった動物園経営者の夫妻を描かれます。

第2次世界大戦下、ポーランド・ワルシャワに侵攻してきたドイツ軍の監視を逃れ、アントニーナとヤン夫妻は動物園の地下室にユダヤ人たちを匿うことに。アントニーナは得意のピアノや親身な会話で彼らの心を癒しますが、ヤンが留守にする間は、彼女はひとりきりで“隠れ家”を守らなければなりません。そのためには、ある決断を迫られることも……。

ゼロ・ダーク・サーティ』や『モリーズ・ゲーム』などで実話に挑んできたジェシカ・チャステインが、製作総指揮と主演を務めた渾身作。熱心なフェミニストとして知られる彼女が描きたかった実話は、今だからこそ必見です。
『LION/ライオン~25年目のただいま~』奇跡の物語の背景にも注目
LIONライオン
5歳のときにインドで迷子になり、オーストラリアの里親のもとで育った青年が、25年後、Google Earthを使って故郷を見つける。この嘘のような本当の話が映画化されると、第89回アカデミー賞で6部門の候補になるなど、話題を呼びました。

デヴ・パテルが演じたサルーは、里親のもとで充実した生活を送れば送るほど、生き別れたインドの家族への思いを募らせていきます。かすかな記憶だけを頼りにGoogle Earthで故郷に迫っていく姿は、結果を知っていてもハラハラ、ドキドキ。

何より、実生活でも養子を迎えているニコール・キッドマン演じる育ての母が明かしたように、同じく養子となった弟マントッシュの心の傷や、今なおインドにはこうした子どもたちが何万人もいる、という現実も心に留めておきたいと思います。

こうした実話を基にした映画を観ると、事実は小説よりも奇なり、としみじみ思わされます。そして、家族や恋人、周囲の人たちの愛ある支えがあってこそ、“英雄”が生まれ、“奇跡”が起こりうるのですね。

Writer | 上原礼子

情報誌・女性誌等の編集・ライターをへて、現在はWEBを中心にフリーに。1児の母。子ども、ネコ、英国俳優などが弱点。看護師専門誌で映画&DVDコーナーを14年担当し、医療や死生観などにも関心アリ。試写(映画館)忘備録を随時更新中。映画を通じて悲嘆を癒やす【映画でグリーフワーク】を試みています。

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