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【これは観ておきたい!平成の映画vol.1】 平成、見とかなアカン!フランス製バディ・ムービー編

2019.03.27(Wed) | 仲谷暢之

今年のアカデミー賞の作品賞、脚本賞、助演男優賞を受賞した「グリーンブック」は実はバディムービーの王道ともいうべき作品。
ひょんなことから出会った二人、もともと知っている二人が旅であったり、ミッションであったりを行ううちに様々な問題やアクシデントが浮き彫りにされて、仲良くなったり、喧嘩したりしながらも二人の距離は徐々に縮まっていくという展開がパターンとしてあり、昔から脱出ものとバディムービーにハズレなしと言われ、平成30年間にも数多くの作品が発表されてきました。
ということで今回は平成に作られ、青山シアターで見ることのできるバディムービー、しかもフランス産のものをご紹介したいと思います。

八日目
八日目
平成9年、1997年に日本で公開されヒットした作品。ダニエル・オートゥイユ演じるエリート銀行員のアリー。銀行では社員教育を任されたりと信用の厚い人物。だけど家庭では奥さんは娘たちと実家へ戻り三下り半つけられ、「透明な存在」状態。せっかく子どもに会えるチャンスも仕事を優先してすっぽかし愛想つかれる尽かされてる。そんなある日、障害者施設から脱走したダウン症の青年ジョルジュが連れていた犬を轢いてしまったことから彼の面倒をみることに。そこから彼の母親を訪ねる旅へと出るのだけど・・・。

久しぶりに見直して、障がいを持つ青年と、仕事人間で家庭が破綻している男性とのバディムービーとして素晴らしく、お互いに人を思いやる心とその気持ちの変遷はシニカルな視点とファンタジーな核をいい塩梅で描いていました。とはいえ、時代の移ろいというものを感じたのは事実。かつては蒙古症と呼ばれていたせいか、それを彷彿させる場面があってちょっとなぁと思わせる場面があったり、ジョルジュのキャラクターがイノセントすぎる点なども気になったりしましたが、それ以前はもっとひどい「もののけ」的な描き方も多かっただけに、この時代なりの視点の進歩が感じ取れます。

公開され20年以上経ちましたが、その間に障がいを持つ人たちが社会に出るようになり、バリアフリー環境が整えられてきたり、随分と改善されてきましたが、今の状況で今作がリブートされたりしたらまた違った描き方なんだろうなぁって思います。
TAXi
TAXi
平成10年、1998年、「グラン・ブルー」や「ニキータ」のリュック・ベッソン監督が脚本・製作を担当し、その謳い文句で日本で公開され大ヒット。以後シリーズ化され、クイーン・ラティファ主演で舞台をニューヨークに移してリメイクされたり、テレビドラマ化されたり、今年もキャストを一新して「TAXI ダイヤモンド・ミッション」としてシリーズ5作目が公開されたり、なんだかんだと平成の長きに渡って作られている人気作。

スピード狂の宅配ピザ屋からタクシー運転手へ転職したダニエルと、ドンくさ過ぎる「ボキャ貧」で「冷めたピザ」状態の新米刑事エミリアンが、彼のタクシーに乗ったことがきっかけとなって、二人は銀行強盗団を捕まえるために協力し合うことになるって話。

リュック・ベッソンって80年代から90年代前半にかけて「最後の戦い」や「サブウェイ」「グラン・ブルー」「ニキータ」とミニシアター系のアートの香りする作品を次々と日本でも公開され、当時の渋谷系サブカルチャー大好き若者たちの映画部門では常に人気の監督だったものの、「フィフス・エレメント」くらいから、“あれ?ちょっとこの人、もしかして中学生的な発想や心の持ち主なんやない?”的な疑惑が・・・。それが今作で「そうだっちゅ~の」という核心に変わりました。

まず、しっかり者とどんくさいコンビというのはローレル&ハーディやディーン・マーチンとジュリー・ルイスの底抜けコンビなど往年のギャグ映画でおなじみの組み合わせ。今作でも二人のやりとりはそれらのコンビの雰囲気をしっかり踏襲し、凸凹バディもんとして及第点!そこにきてタクシーがボタンひとつでレーシングカーみたく変貌したり、んなアホなというような追突があったりと、カーチェイスをめぐるバカバカしいほどのスタントギャグが連打されたりなど、マンガの影響もしっかり散りばめられていたりと、幅広い年代が大いに受けるであろう要素が詰まってます。これである意味、ベッソン、信頼できると思いました。その証拠に以後、広末涼子とジャン・レノの組み合わせでとんでもない設定の「WASABI」やパルクールをいち早く取り入れた「YAMAKASHI」、「アーサーとミニモイの不思議な国」、ジェイソン・ステイサムの出世作「トランスポーター」シリーズ、リーアム・ニーソン主演のハラハラ作「96時間」シリーズ、スカーレット・ヨハンソン主演のトンデモ作「LUCY/ルーシー」などなど娯楽作好きでしょと硬軟取り混ぜた(軟の方が多いけど)、“わかってる”映画で、平成にしっかり爪痕残してはります。
最強のふたり
最強のふたり
平成24年、2012年に公開された映画で実話をベースにしたお話。頸髄損傷で、首から下の感覚がなくなり、体を動かすことができない富豪のフィリップが、住み込みの新しい介護人を募集。面接に来たドリスと出会います。彼は本気で面接に来たわけでなく、失業保険給付期間を伸ばすために不合格の証明書にサインをもらうのが目的。そんな彼に気難し屋のフィリップはなぜか気に入り、周りは反対するも「手ぶらで帰らせるわけにはいかない」とばかり、彼を雇うことに。介護や看護の資格もないドリスは最初でこそイヤイヤ雑すぎる世話をし、ガサツぶりな生活を披露しまくるもフィリップを病人としてではなく、一人の人間として「ワイルドだろうぉ」と扱ってくれる彼に共感と親しみ、信頼を抱くようになり掛け替えのない友人となっていくという話。

前記した「八日目」から10年ちょっと経てこういった形での作品が生まれたのは本当に素晴らしく思いました。訳あって車椅子乗生活を余儀なくされた者と粗野だけどハートで付き合える、今までの自分の人生ならきっと出会ってこなかった相手との交流は、バディムービーとして新鮮さを与えてくれます。そして視線を同じにするということの大切さ、そして互いがどこか持っているであろう奢りというものをむき出しにすることで解ける誤解が綴られるエピソードの中で描かれていくのがいいです。
妻を亡くし、不慮の事故で体が不自由になったフィリップ、実はかなりの訳ありのドリス。互いの足りないピースを互いが見つけてパズルのように補って足していく姿に胸が熱くなります。

彼らのドキュメンタリー「ドキュメンタリー:最強のふたり」を合わせてみることもおすすめ。実物の2人のバディぶりが映画とはまたちょっと違う印象を受け感動するはずです。
ショコラ ~君がいて、僕がいる~
ショコラ
平成29年、2017年に公開されスマッシュヒットした作品。のちに公開された興行師、P.T.バーナムを主人公にしたミュージカル映画「グレーテスト・ショーマン」や新作でティム・バートン監督の「ダンボ」にも通じるお話で、20世紀目前のフランスのサーカス団にやってきた落ちぶれ道化師フティットと、人食い人種を演じて見世物にされている黒人芸人のカナンガとの出会い、そしてショコラと改名したカナンガとコンビを組んでその対比とドタバタ芸に火がつき大活躍するも、フティットは「ショコラファースト」に妬み、嫉みを抱き、さらに世間からの人種差別、そして不法移民の問題、カナンガに対する「フェイクニュース」などが重なりやがて解散を迎えるが・・・という栄枯盛衰、栄光と挫折を描いたかなりビターなコンビ芸人一代記。

この二人も実際に19世紀末から20世紀初頭、サーカスで活躍してたものの、特にショコラはロートレックの絵のモチーフにもなったほどの人気を博したにも関わらず、ハバナで奴隷の子供として生まれたというぐらいでパーソナルデータは、ほぼわからず、おまけに史料もあまり残ってないという興行界の歴史の中に置き去りにされた謎に満ちた半生だっただけに今作で彼の没後100周年を迎えた平成27年にそれを知ることができた(原作とは随分違いもありますが)のはすごいタイミングだったのかもしれません。

自分も過去、お笑い雑誌の編集を長らくやってきたので芸人さんの栄枯盛衰も随分と見てきただけにこの作品を見るたびに解散して芸の世界を去っていった人や、ひっそりと亡くなりはった大御所芸人さんなどが脳裏をかすめて胸がいっぱいになります。
今作でも解散はしますが、バディ=相方としていい時代を過ごせたからこその、後のフティットがショコラに対して「俺たちはコインと同じ、表裏一体だ」と献身的に捧げる姿、確執の果ての互いの本音はコンビを組んだ者だからこその答えなんだなと思います。ショコラを演じているのは、「最強のふたり」のドリスを演じたオマール・シー。そして相方のフティットにはジェームズ・ティエレが演じているのですが彼はなんと喜劇の神様、チャーリー・チャップリンの孫!年齢を重ねた時の顔なんて「ライム・ライト」や「ニューヨークの王様」のチャップリンを彷彿とさせてくれていて二人の息のあった芸も必見です。
リュミエール!
リュミエール!ポスター
平成29年、2017年に日本で公開された、映画の父と呼ばれるルイとオーギュストのリュミーエル兄弟が遺した「35億」じゃなかった、1422本という膨大な映画の中から、珠玉の108本セレクトし、傷などの修復をし(本当に美しい映像!)構成されたドキュメンタリー作品。

1895年12月28日のパリで兄弟が発明した“シネマトグラフ”。その撮影と映写ができる機械から生まれた約50秒の映画たち(当時のフィルムの、限界の長さ)。
「工場の出口」というタイトル通り工場から帰宅する従業員たちを捉えた今となっては「インスタ映え」があまりしない映像は、見る者をびっくりさせました。最初はあくまでも記録的な趣だったものが、やがて演出が加わり、ユーモアが生まれ、さらに移動撮影やトリック撮影など、あらゆる撮影テクニックの創意工夫が施され、やがてそれは進化していったのですが、そんな映画の起源を語る上で伝説になっているのが「ラ・シオタ駅の列車の到着」という作品。
駅に向かって列車がやって来るというだけなんですが、見ていた観客は本物が来たと錯覚して大騒ぎになったというエピソードが。
徐々に観客も映像に慣れてきたら、もっともっととなるのは人の常。ということで見たことないものを見せたいと作り手側も応えるべくリュミエール兄弟がカメラマンたちを世界中に派遣し、19世紀末の貴重な日常や風俗、民族を記録しています。
アルプスのモンブラン!ベネチアの街並み!エジプトのスフィンクスやピラミッド!アメリカやロシア!そして中国やベトナムなどアジア各地の様子は、当時、簡単に海外旅行などできない人々にとってはセンス・オブ・ワンダーな世界。
もちろん日本にも来て京都で「日本の剣士」という作品が作られてるんですが、これは本当に見もの。
撮影され、世界中から続々と集まってきた映像にきっと、リュミエール兄弟が、いの一番にワクワクしたんだろうなぁと想像に難くないです。

映像の中にはリュミエール兄弟も登場しています。それが仲がいいんです。同じ映画という夢に向かって「忖度」し協力し合うバディ。今作を見ながら当時の彼らの映画への情熱に想いを馳せる平成最後も、いいかもしれません。
ちなみに前に紹介した「ショコラ」では実際のフティット&ショコラの映像が出てきます。実はこれを撮影したのはリュミエール兄弟なんですよ。

平成30年の間にはまだまだフランス製バディムービーがあります。
【青山シアター】にも平成24年、2012年公開の、スランプに陥る三ツ星レストランのシェフと天才的な舌を持つ生意気な若手シェフの料理コメディ「シェフ!~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ~」や、平成28年、2016年公開のサスペンスの巨匠、アルフレッド・ヒッチコックの創作の秘密を、ヌーヴェルヴァーグの旗手だった映画監督フランソワ・トリュフォーが相棒のように探るドキュメンタリー「ヒッチコック/トリュフォー」、ミシェル・ゴンドリー監督の自伝的作品で、夏休みに14歳の少年二人が動くログハウスで旅をする「グッバイ、サマー」
平成29年、2017年公開のCIAのアウトローと天才的なスリが協力してテロリストを探し出す「フレンチ・ラン」もバディムービーの王道など、これらを平成から新元号へ向かいながら楽しんでみてはいかがですか?またきっとこれからもバディムービーは次々と生まれるはず。そのための予習としていいかもしれません。

Writer | 仲谷暢之

ライター、関西を中心に映画や演劇、お笑い、料理ネタなどなどいろいろ書いてます。

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