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【これは観ておきたい!平成の映画vol.5】ネット、スマホ、SNS…30年でガラリと変わった平成を映画でふり返る編

2019.04.24(Wed) | 上原礼子

平成のスタートから30年余り、あのころの私はこれほどの高度IT社会が訪れるとは想像もしていませんでした。SF映画の中で目にしてきたものが次々とリアルになり、かつてはSNSという言葉も存在しなかったのに、今や「絵文字(emoji)」が世界共通言語になっています。ダイヤル式の黒電話で長電話をしていたころが、はるか遠い昔のよう…。

そこで、平成の世をふり返るにあたり、ライフスタイルやコミュニケーションそのものをガラリと変えてしまったネットやスマホ、SNSにまつわる映画を、青山シアターの中から独断と偏愛で選んでみました。

『白ゆき姫殺人事件』フェイクニュースや炎上をいち早く描く
白ゆき姫殺人事件
「インターネット」という言葉が新語・流行語に選ばれたのが、「Windows95」が発売された1995(平成7)年のこと。その後、日本では1999年に「iモード」が登場し、手元の携帯電話にネットの世界がやってきます。それから10年ほどの間に驚異の広がりを見せ、ネット上で交友を結ぶ「SNS」(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)も普及。それこそFacebook創立者マーク・ザッカーバーグを描いた映画『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)も登場しました。

そんな中、今でいうフェイクニュースやネット炎上などをいち早く取り上げたのが、湊かなえの同名小説の映画化『白ゆき姫殺人事件』です。中村義洋監督のもと、犯人と疑われる地味なOL・城野美姫を井上真央、殺害される美人の同僚・三木典子を菜々緒が演じ、たれ込みの情報を鵜呑みにして、というか話を聞くそばからTwitter上に書き込み、拡散していったTVディレクター・赤星雄治を綾野剛が演じました。山奥で起きた凄惨で不可解な殺人事件を、「白ゆき姫殺人事件」などと勝手に命名したのも彼です。

Twitter社が全面協力しただけあり、最近TVや映画でよく見かける“つぶやき”の効果的な視覚化が実現しています。そして、スクープを狙うために何の思慮もなく、突撃取材してはTVに流し、Twitterに書き込んでいく赤星。たった1つのつぶやきに畳みかけるようにコメントがつき、瞬く間に拡散されていくさま、それにより1人の女性の人物像が別人のごとく歪められていくさまは、新しい時代となっても決して忘れてはならない光景です。

昨年のカメラを止めるな!若おかみは小学生!のように、「面白いから絶対に見て」という口コミの拡散なら大歓迎なのですが。
『何者』SNSでつぶやく僕は、何者…?
何者
日本映画からもう1本。1991(平成3)年に織田裕二主演で『就職戦線異状なし』というバブル期の“就活”を描いた映画がありましたが、それから就職氷河期を経た15年後、2016(平成28)年に飛び出した新たな就活映画が『何者』でした。桐島、部活やめるってよの朝井リョウによる原作を、佐藤健、菅田将暉、有村架純、二階堂ふみ、岡田将生、山田孝之という豪華俳優陣で映画化。

企業の合同説明会は見覚えあれど、ウェブ上での試験やメールでの結果通知などは「今ってこうなのね」と感慨深くとらえていましたが、演劇界の雄・三浦大輔監督により、就活という自分を可視化・具現化していく過程とSNSで自らの考えや人となりをさらす行為、さらには舞台の上で演じることの近似性を鋭く突いた映画となっています。

演劇の道を諦め、就職活動をする主人公・拓人(佐藤)は、ともに就活する仲間たち、そして舞台の上で“何者か”になろうと奮闘するかつての演劇仲間・ギンジに対して、冷めた目で分析しては彼らも知らない裏アカウントでつぶやき続けるのです。思えば、懸命に何かにのめり込むことをかっこ悪い、みっともないと断じ、「イタい」と表現する言葉も、平成に生まれたものですね。
『ブリングリング』SNSが拍車をかけた10代の窃盗団
ブリングリング
うそのような本当の話も、ネットやSNSをきっかけに生まれています。エマ・ワトソンら気鋭の若手俳優たちが、実在したティーン窃盗団を演じたソフィア・コッポラ監督の『ブリングリング』は2013(平成25)年の作品。

セレブに憧れる主人公のニッキーたちは、パリス・ヒルトン、ミランダ・カー&オーランド・ブルーム夫妻(当時)、リンジー・ローハンなどの予定をSNSやゴシップサイトでチェック、ネットを駆使して彼らの豪邸を探し当てると、ブランド服や靴、バッグ、宝石、隠されていた現金などの窃盗を繰り返していきます。その総額は当時300万ドル(約3億円)にのぼったとか。撮影には、パリス・ヒルトンが自身の邸宅を貸し出したことも話題となりました。

物心がついたときからネットやパソコンなどが当たり前にある世代はデジタルネイティブと呼ばれますが、スマホがひとときも手放せない彼女たちはまさにそう。何かあれば、とりあえず自撮り。時には“戦利品”を手にポーズをとり、SNSにアップする彼女たち。まるで悪びれた様子もなく、そんな彼女たちをフォローし、羨ましいとさえ思う者たちも。

セレブをフォローしていると、彼らをより身近に感じられるのは分からなくもないですが、彼女たち、「私『ブリングリング』のモデルなの。誰が演じてたと思う? あのエマ・ワトソンよ」なんて、プロフィール欄に書いていないですよね…?
『her/世界でひとつの彼女』AIに恋する近未来もあり!?
her 世界でひとつの彼女
今と地続きの、それほど遠くない未来の話としては、スパイク・ジョーンズ監督が描いた『her/世界でひとつの彼女』を挙げたいと思います。2014年(平成26)年の作品で、アカデミー賞オリジナル脚本賞を受賞しました。

主人公は、手紙の代筆を仕事にするセオドア(ホアキン・フェニックス)。代筆とはいっても、SiriやGoogleHomeのごとく、すべて口頭で入力や閲覧など、あらゆる作業ができる世界です。そのため、PCの前にはキーボードやマウスもなく、デバイスには大きな液晶やタッチペンなども不要。現在最先端のスマホとはまた違う、ミニマムさが興味深いところです。

妻(ルーニー・マーラ)と別れてから気分が落ち込んでいるセオドアは、ある日、世界初のAI(人工知能)型OSをインストール。「ハロー」と現れたOSの女性の声“サマンサ”と毎日やりとりするうちに、まさかの恋に落ちることに。そのサマンサの声を務め、各映画祭で絶賛されたのがスカーレット・ヨハンソン。やや低めでハスキー、茶目っ気と聡明さを併せ持つ彼女の声には誰もが惚れてしまうでしょう。

しかし、サマンサはあくまでもAIなのです。ありえないはずのラブストーリーではありますが、少しずつこの映画の世界に近づいているような予感もしています。
『スティーブ・ジョブズ』今、映画は何で観てますか?
スティーブ・ジョブズ
そもそもコンピュータや電話に、単なるツール以外の全く新たな価値と可能性を生みだした伝説的人物にも触れたいと思います。現在のライフスタイルの礎をつくった1人であり、2011(平成23)年に56歳の若さで亡くなったアップル創業者。その伝記映画『スティーブ・ジョブズ』(2013年)では、アシュトン・カッチャーが独特の歩き方までそっくりに熱演します。

初代iPod発売時のプレゼンから幕を開ける映画は、自宅のガレージから生まれたアップルコンピュータから、あのカラフルでポップな初代iMacの開発までが駆け足で描かれます。自身が設立した会社をクビになったり、あのビル・ゲイツにもケンカを売ったりと、“カリスマ反逆児”といわれただけの傍若無人ぶりにも触れられています。

なお、ジョブズ自身が1995年(日本のインターネット元年!)に語った貴重なインタビューをVHSテープからリマスターしたスティーブ・ジョブズ1995 失われたインタビューと合わせて観ると、彼の理念やヴィジョンがより見えてくるでしょう。

そのジョブズが亡くなった日、初めてのiPhoneが発売された2008年に大統領になったオバマ元大統領は、「世界の多くの人が、彼の死を、彼が発明したデバイスによって知ったのは彼への最大の賛辞」といったコメントを寄せていましたが、まさにその言葉につきます。今この瞬間も、青山シアターの映画を彼が創造したもので楽しんでいる人は多いはずです。

このほか、笑い飛ばしながらも身につまされる(?)Facebookで大逆転や、トム・ハンクスがジョブズを彷彿とさせるCEOを演じ、エマ・ワトソンの生活を“シェア”させるザ・サークルなどもオススメ。また、ゼロの未来では鬼才テリー・ギリアム流の近未来を楽しむことができます。

リテラシーやプライバシー対策などが追いつかないまま、何もかもが急激に変わってしまった平成。これらの映画は、新時代に観返しても色あせない、何かしらの示唆を与えてくれるのではないかと思います。

これは観ておきたい!平成の映画vol.1

Writer | 上原礼子

情報誌・女性誌等の編集・ライターをへて、現在はWEBを中心にフリーに。1児の母。子ども、ネコ、英国俳優などが弱点。看護師専門誌で映画&DVDコーナーを14年担当し、医療や死生観などにも関心アリ。試写(映画館)忘備録を随時更新中。映画を通じて悲嘆を癒やす【映画でグリーフワーク】を試みています。

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