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おデブちゃんでなにが悪い!

2019.06.12(Wed) | 仲谷暢之

今年も暑い暑い夏が来ます。
おデブちゃんにとっては“苦行”でしかない季節であります。
それでも毎日頑張ります。汗をびっしょりかきながら頑張ります。
痩せればいいってことはわかってます。
でも痩せられないからおデブちゃんなんです。
そんなおデブちゃんを暑い夏でも愛して欲しい。
ということで、青山シアターで見ることのできる、愛すべきおデブちゃんが登場する映画5本、ご紹介したいと思います。

花嫁のおデブちゃんも頑張ってます『バチェロレッテ ―あの子が結婚するなんて!―』
バチェロレッテ
リーダー的存在のレーガンを筆頭に、ケイティ、ジェナ、そしてベッキーの4人組は、高校時代、bee軍団と呼ばれ学校でも一目置かれる存在。そんな彼女たちも社会に出てそれぞれの人生を歩んでいたある日、レーガンはベッキーと再会、その時に彼女から結婚すると報告され、愕然!正直、おデブな彼女が私たちよりも先に結婚するなんて!ピッグフェイスと影で言ってた彼女がイケメンと結婚するなんて!とショックを隠しきれず、さっそくケイティとジェナに連絡し、高ぶる気持ちを共有し落ち着かせるんですが、結局はベッキーは長年の友人。レーガンは結婚式を取り仕切り、ほかの二人はブライズメイズ(花嫁介添人)を務めることに。
結婚式前夜、久しぶりの再会を果たした4人、表面上お祝いの言葉をかけて大喜びするも、ベッキーに対して内心メラメラ心が燃えまくり。これまた久しぶりに再会した男の同級生たちをロックオンしつつ、ハメをはずすが、そのハメがえらい事件を巻き起こすことに・・・。

「ブライズメイズ」という映画では主人公のルームメイトの怠惰な妹を演じたレベル・ウィルソンが、bee軍団の中で勝ち組のおデブちゃんを演じているのだけど、もうすっごいキュート。あぁこれなら容姿関係なく結婚するよなぁと思わせるキャラクター。それに対して、3人の女性たちのエゲツない事。

特にレーガンは、ベッキーに対してずっと見下していたから、彼女から結婚の報告を受けた瞬間の表情は必見。この映画の見どころベスト1に輝くかもしれないほどの凄みが漂う。演じるキルスティン・ダンストの表情がうまい!うますぎる!笑顔の奥にあるこわばった感じ、妬みの渦が出てくるのをなんとか悟られないようにしようとする塩梅の絶妙なこと!この表情だけでハイボール4杯飲める!ベッキーの、それまで無敵だったであろう人生の敗北を一瞬にして分からせてくれる。もしかしてプライべートでも気の強い彼女だから、地が出てるんじゃないの?と思わせるくらいの説得力があります。

ケイティは薬物にハマり、終始決めることしか考えてないし、ジェナは男にだらしないし、ワケありの昔の同級生に未練タラタラだしで、ベッキーを祝う口実で自分のエゴをひたすら出しまくる問題女性。

で、そんな彼女たちがベッキーの翌日着るウェディングドレスをふざけて破ってしまったもんだからタチが悪すぎる。とにかく見る者からは全く共感できない3人がドレスをなんとかしようとニューヨークの街を駆け回りながら、さらに新郎側のゲスすぎる友人たちも絡んできて、最悪な状況にどんどん陥っていく。
見ていてどうしようもない女友達の、嫉妬の渦の中に知らないままいるベッキーがかわいそうで、かわいそうで。
とはいえ、結婚式はやってくる、敗れたドレスは?嫉妬の嵐の女性たちはどういう結末を迎えるのか?これも見どころです。そしてこの映画で覚えた英語は「Fuck Everyone!(他人を気にするな!)」でした。見終わったらなるほどと思うはず。
お姉さんのおデブちゃんも頑張ってます『犬猿』
犬猿
地方都市の印刷会社で働く真面目で堅実な和成。父が友人の連帯保証人になってしまって背負った借金を、代わりに返済しながら地味に生きるサラリーマン。
ある日、彼の元に強盗の罪で服役していた兄の卓司が景気を終え、転がり込んで来てから徐々に歯車が狂い出す。
一方、和成が頻繁に仕事を依頼する小さな印刷会社を親から引き継ぎ経営する女社長、由利亜。寝たきりの父親の介護をしながら会社を切り盛りしている彼女は密かに和成に恋心を抱いていたのだけど、実は妹の真子と付き合っていることを知ってこれまた歯車が狂い出す・・・。
そしてこの4人が微妙に、絶妙に絡み合うことによって、互いの兄弟、姉妹は複雑な愛憎関係を生み出していくが・・・って話。

「ばしゃ馬さんとビッグマウス」、「ヒメアノ~ル」、そして青山シアターでも見ることのできる「愛しのアイリーン」(木野花が秀逸!)と、一見ユーモラスに見える人間関係を、ジリジリと意地悪な視点で描きながら見る者の琴線をジクジクと刺してくる吉田恵輔監督の一番の地が出ているような気がします。

実直なサラリーマン、和成役の窪田正孝と、凶悪な兄、卓司との関係は、実は和成の方がいっちゃん怖いんではないかと思わせる場面やセリフにゾクゾクと不安な気持ちにさせられたりするんですが、それよりも激しいのが由利亜と真子との関係性。自分よりも可愛い妹に対してのコンプレックスを、勉強に勤しみ、勤勉につとめ、親の介護をしっかり果たすことで自尊心を満たし、妹よりも優位に立とうとするも、生き方が下手なのか、イケずの仕方に隙があるというか、そういうのの積み重ねで崩れてしまうのが生々しい。
この姉を演じるのがお笑い芸人、ニッチェの江上敬子。明るいキャラクターでしっかりものののおデブちゃんの裏に抱える闇と卑屈さをみごとに体現。それがクライマックスではモンスター級にさらけ出すのがすごい。
監督がこの役の延長線上に藤山直美の姿を思い浮かべながら、江上敬子に落とし込んで脚本を当て書きをしたというだけに阪本順治監督、藤山直美主演の「顔」を彷彿させる部分も。でも唯一無二の圧倒的な存在感を放ち、女優誕生をこの作品で見たような気がします。
兄弟にしても、姉妹にしても、クライマックスに従ってわかるなぁってやりとりの連発。それでも兄弟、姉妹という関係は続くんだよなぁというのが、最後の4人の表情でわかります。
オネエのおデブちゃんも頑張ってます『ふとめの国のありす』
ふとめの国のありす
宮藤官九郎脚本の「池袋ウエストゲートパーク」や仲間由紀恵主演の「ごくせん」などで強烈な個性を際立たせていた脇知弘がオネエを怪演する本作。

ゲイバーに勤めるありすは、デブ専のお客さんに言い寄られ、なんとなく付き合ってるのか付き合ってないのかわからない関係を続けてる。ある日、バーからスクーターで帰宅する途中に女子高生のうさぎと接触事故を起こしそうになるものの、なんとかセーフ。ひと悶着を終えて別れたものの、ありすは携帯を落としてることに気づき、大慌て。。が、うさぎが拾ってくれていたことがわかり、返してもらうことに。その時、ありすの携帯の中に自分の担任の写真が入っていることを知って問いただすと、ありすのかつての担任だったことがわかり、そのことから二人は文句を言いながらも親しくなり、互いに好きな担任を軽くストーキングしたり、互いの抱えてる悩みを話しながら関係は濃厚に。やがて、ありすにもうさぎにも、さらに担任の先生にも、解決しなければいけない問題があって・・・。

テレビでは強面で圧の強いイメージがある脇知弘だけど、今作ではいるいるこんなおデブなオネエさんっていうありすを愛情たっぷりに演じています。とはいえ前記したけど怪演ではありますが!

正直、なかなかの屈折したストーリーです。特にうさぎを取り巻く環境にはなんだかなぁと。両親とは血は繋がってはおらず、義母の離婚した父親と浮気相手の子ども。今は義母は別の相手と再婚し、その人との子どもがいるので、とりあえず住まわせてもらってる状態。さらに学校でもいじめの対象という、もし自分ならメンタルやられまくりだろうなぁという家庭環境。それでも担任の先生が好きという気持ちだけで頑張ってこれてるという女子。

担任の先生は先生で、女子生徒たちの誰にも優しく、憧れの存在。私生活では妊娠している可愛い妻がいるけれど、裏の顔を持っていて、その事実をありすとうさぎはやがて知ることとなり、ついに担任と対峙するんですが、ここでのありすの啖呵の切り方がかっこいいです。ただ怒りを打ちまくるんじゃなく、オネエならではの辛辣さとウィットを織り交ぜて切り込む姿は思わず拍手したくなるほど。

初々しさ、若々しさ溢れる映画でのオネエのおデブちゃんの勇姿を楽しんでほしいです。
サルサのおデブちゃんも頑張ってます『カムバック!』
カムバック!
「ショーン・オブ・ザ・デッド」「ホット・ファズー俺たちスーパーポリスメン!ー」「キンキー・ブーツ」と、巨漢を生かした役柄で個性出しまくりのニック・フロストが主演、原案、製作総指揮を務めたオレオレ映画。

かつて少年時代、サルサダンサーとしてイギリスの数々の大会で賞を総なめにした経験を持つ主人公、ブルース。だけど全国大会に出ようとしていた時に不良たちに絡まれ、「サルサなんてのは女の踊りだ!」と自暴自棄となり大会を棄権。以後、ダンスをきっぱり諦め、今ではすっかりおデブちゃん体系となって、エンジニアとして地味に暮らす毎日。
ある時、アメリカから転勤してきた女性上司ジュリアに一目惚れ。さらに実は彼女がサルサを習っていたことを知り、自分も彼女の気をひくためにもう一度サルサを習うことに。かつて不義理をし、それ以来会っていなかったコーチを探し当て再び門を叩く。当然、昔のようには踊れないブルース。はたして、彼のサルサダンサーとしての技術は復活し、ジュリアのハートを射止めることはできるのか?というお話。

撮影前、半年間に渡ってサルサの練習をしたというニック・フロストのダンサーぶりにびっくり。変に痩せず、そのままの巨体でキレのあるダンスを映画の中で披露してくれるのがなんといっても見どころ。

好きな女性のために昔諦めていた夢を再び蘇らせ、自身の人生をもう一度見つめ直し、やり直すという展開は、他の映画でも山ほどあるけれど、サルサという割とニッチなジャンルに絞ったのが良かったのかもしれない。日本でも「Shall we ダンス?」という社交ダンスに目覚める中年男性を描いた映画があったけれど、確実に影響を受けてます。

ブルースの恋のライバルとなるドリューがとてもクセのあるキャラクターで、職場では一番モテてるみたいだけど世間から見るとどうなの?しかもと~~ってもイヤな奴というイギリスのコメディに登場しがちな存在なのが楽しめる。特にブルースとドリューの駐車場でのダンスバトルは爆笑過ぎて必見!

何か始めるには別に年齢も体型も関係ない!と思わせてくれる今作。サルサもきっと好きになり自然とリズムを取りたくなるはず。
60年代のおデブちゃんも頑張ってます『ヘアスプレー』
ヘアスプレー
世紀のカルト映画「ピンクフラミンゴ」や殺人鬼の主婦を描いたブラックコメディ「シリアル・ママ」などのジョン・ウォーターズ監督の同名映画がブロードウェイミュージカルとなって上演され、それが映画化されたのが本作。

60年代初頭、まだまだ黒人差別が色濃く残っているアメリカはボルチモアに住む高校生、トレイシーの楽しみは地元のローカルダンス番組「コーニー・コリンズショー」を見ること。さらに夢は番組に出演している人気キャストで高校の同級生であるリンクと一緒に踊り、やがて仲良くなるということ。

ただ彼女はおデブちゃん。キャストとして選ばれることは夢のまた夢。が、そんな彼女にもチャンスが。キャストの一人が諸事情で番組に欠員が出るということでオーディションが行われることに。トレイシーは、根っからのポジティブ思考ゆえ、自分の容姿などお構いなく応募することに。しかし、プロデューサーのヴェルマから太っていることを理由にケチョンケチョンに言われ、あえなく撃沈。しかもオーディションのために遅刻したという理由で居残りをさせられるハメに。でもトレイシーはそこで知り合った黒人の生徒たちと仲良くなり、R&Bのステップを教わり大盛り上がり。しかもその場面を憧れのリンクが目撃し、声をかけられて、改めて番組のキャストとして推薦、参加したダンスパーティで番組のホスト、コーニーにその実力からスカウトされて、ついに番組レギュラーの夢を叶える。しかも彼女の天真爛漫さとキュートなキャラクターに人気が爆発、スポンサーがついたり、母親エドナがマネジャーとなったりと破竹の勢い。しかし、面白くないのが女性キャストのリーダー的存在アンバーとその母親で番組のプロデューサー、ヴェルマ。なんとか画策して追い出そうとするもなかなかうまくいかない。しかし、トレイシーの、番組での黒人の扱い方を巡って問題が起こしたことをきっかけに一気に追い込むことに。はたしてトレイシーたちはどうなってしまうのか?ってストーリーを、キャッチーな音楽とダンスで描かれる。

おデブちゃんなヒロイン、トレイシー・タンブラットを演じるのは、ニッキー・ブロンスキー。元々ブロードウェイミュージカル「ヘアスプレイ」を見て、オーディションを受けたものの、若いという理由で不合格となり、いつか舞台に立ちたいと思っていた彼女。本作が映画化されることを知り、ヒロインオーディション募集で再び挑戦。みごと1000人の中から選ばれた逸材。それだけにハマり役。歌って踊れるおデブちゃんとして最高の演技を見せてくれてます。

そんな彼女の母親役には、なんと「サタデー・ナイト・フィーバー」や「パルプフィクション」などのジョン・トラボルタがおデブちゃんスーツに身を包み、特殊メイクでボリュームアップ。
元々、オリジナル版では伝説のドラァグクイーン、ディバインがお母さん役を演じ、ブロードウィミュージカル版でも「トーチソング・トリロジー」や「ミセス・ダウト」などのハーヴェイ・ファイアスタインと、歴代、男性が演じているので正解のキャスティング(でも本当はゲイの中年男性が演じていれば完璧なのだけれど・・・)。トラボルタも最初でこそ違和感を感じるけれど、徐々に娘と夫を愛する、愛すべきお母さんに見えてくるから、本人としたらしてやったりかも。

この映画、明るくポップであるけれど、ジョン・ウォーターズ監督の適度な下品さ、猥雑なテイストを散りばめ、何より肌の色や容姿、マイノリティへの差別はいけないというシビアな問題定義をしっかり織り込んでいるのが素晴らしく、何度も見て味わってほしい作品。
ちなみに来年、渡辺直美主演でミュージカルが日本で公演される予定でこちらも楽しみすぎます。

これら5本のほかにも、「シックス・センス」や「A.I」など天才子役として一斉を風靡したハーレイ・ジョエル・オスメントがおデブちゃん先生として活躍する「SEXエド チェリー先生の白熱性教育」(「子役という扱われ方やったけど、大きくなっても頑張ってますから!」で紹介してます)や、ドキュメンタリー映画監督、ハリセンボン・春菜、いや、マイケル・ムーアがドナルド・トランプ大統領をめぐる全米の選挙制度や彼を当選させてしまったアメリカ社会を鋭く切り込んだ問題作「華氏119」といった作品もあるので、個性あふれるおデブちゃんが、太ってるなりに頑張っている姿をぜひ応援して、愛してあげてください。
とはいえ、みんな痩せたいのは山々だと思うんですけどね。

Writer | 仲谷暢之

ライター、関西を中心に映画や演劇、お笑い、料理ネタなどなどいろいろ書いてます。

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