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出身監督活躍中。自主映画の祭典PFFぴあフィルムフェスティバル2005に注目!

2019.06.26(Wed) | 足立美由紀

1977年のスタート以来、「映画の新しい才能の発見」をテーマにインディペンデント映画と共に歩んできたPFF<ぴあフィルムフェスティバル>。この歴史ある自主映画の祭典の中でも、2005年度のコンペティション部門に入選を果たした監督たちが、今メキメキと頭角を現しています。

歴代PFFアワード作品を配信している青山シアターでは、 “2005年度の入選監督たち”に着目して彼らの入選作&傑作にフォーカス! 今回はその特集企画の中から厳選5作品を紹介します。

◆青山シアター特別企画
PFFアワード特集《特別編》~2005傑作選 and more!~

16歳の引きこもり少年と悩める人妻の逃避行『トロイの欲情』 監督:岡太地
トロイの欲情
昨年、蒸発した母親を探す旅に出た中年男のロードムービー『川越街道』が公開された岡太地監督の初期作品。引きこもりの少年と人妻との逃避行を描いた本作は、2005年度PFFアワードで準グランプリ、技術賞(IMAGICA賞)、音楽賞(TOKYO FM賞)、観客賞(北九州)の4冠に輝いています。

不登校の少年・達也は、母親が口利きしてくれたペットショップで働いています。口やかましい店長にウンザリしながらも、バイト仲間の女子高校生のことが気にかかる日々。そんなある日、悩みを抱える女性・実瓜子がペットショップにやってきます。

16歳になった自分への誕生日プレゼントに、初めてのバイト代を使って通信販売で男性用アダルドグッズを購入する達也。ちょっといいなと思っていたバイト仲間がキモダサな店長とデキていたり、実は人妻だった実瓜子がまんざらでもない様子で自分を可愛がってくれたりと、何かとモヤモヤさせられてしまいます。

そんなお年頃の達也が実瓜子と出かけたドライブ終盤で、蠱惑的な彼女への想いや世間に対する憤りなど、満たされない感情を埋めるべくアクセルを吹かす展開が痛快! 達也を演じたのは、松田龍平の若い頃をほうふつとさせるイノセントさが魅力の松井宏樹。彼の清潔感と繊細さが、様々な欲情が交差する本作に爽やかな酸っぱさを与えています。
年上女性に恋をしたカメラ少年の奔走『珈琲とミルク』 監督:熊坂出
珈琲とミルク
桜庭ななみ、土屋太鳳を主演とする「人狼ゲーム」シリーズを手がけ、2012年台湾エミー賞で最多7部門に輝いたドラマの日本リメイク「僕はまだ君を愛さないことができる」が、この夏からFOD/地上波で放映される熊坂出監督。本作はPFFアワード2005で審査員特別賞、企画賞(TBS賞)、クリエイティブ賞(エイベックス・エンタテインメント賞)を受賞した他、第2回SKIPシティ国際Dシネマ映画祭で短編部門・最優秀作品賞に選ばれた青春ドラマです。

アラーキーみたいな一流カメラマンを目指す小学生のミルクは、ラーメンを食べる男性の姿やお皿の割れる様子など、一見すると意味不明な写真をカメラに収めています。実は彼の目的は、カフェで働く耳の聞こえない女性・珈琲のために「音の写真集」を作ること。しかしミルクのその行為は、彼女を喜ばせるかと思いきや逆に傷つけてしまいます。

年上女性に寄せるミルクのほのかな恋心や、口は悪いけれど一生懸命アドバイスをくれるミルクと友人との友情など、本作にはほのぼのとした温もりが息づいています。ここにフランス語で語る少女のナレーションを組み合わせたことで、ヨーロッパのインティーズ映画のような舌ざわりに。無国籍テイストのハートフルムービーをどうぞ。
義父からの虐待に精神を病む女子高生の実話『カササギの食卓』 監督:石川真吾
カササギの食卓
岡太地監督作『川越街道』でラインプロデューサーを務め、2016年公開作『ハルをさがして』など数々の商業映画でも編集として携わっている石川慎吾監督。武蔵野美術大学卒業制作最優秀賞の『出発の時間』や600秒SHORT AWARD Tokyo Fanta映画祭入選作『般若のフレーム』などで知られる石川監督が手がけた本作は、PFFアワード2005に入選。実話を基に紡がれた衝撃作です。

女子高校生の佐代子は母親が家から出て行ってからというもの、義理の父親と2人で暮らしています。義父は佐代子をじっと観察し、カメラで撮影する不気味な男。誰にも助けを求められない佐代子は、学校にも行かず家に引きこもりがちになっていきます。

唯一の心の支えだった金魚が死んでから、画びょうなどの異物を口にするようになる佐代子。母親との確執もある彼女は本当に一人ぼっちで、義父からの危険なアプローチに直面し、少しずつ精神を病んでいきます。どんどんエスカレートしていく義父の変態行為は本当に衝撃的で、逃れる気力すらはぎとられた状態にまで陥ってしまった佐代子の胸中を想像すると悲しくて、切なくて。

石川監督はそんな佐代子の悲惨な状況を淡々と描き出すことで、現実から目をそらさざるを得なかった彼女の心象風景を見事に浮き彫りにしています。
“あいしてる”を描くラブストーリー『寝てるときだけ、あいしてる。』 監督:川原康臣
寝てるときだけ、あいしてる。
PFF2005アワードでは新感覚の兄妹ムービーおわりはおわりが審査員特別賞、観客賞(神戸)を受賞した川原康臣監督。また前述の岡太地監督と相互に役割をスイッチさせてつむいだ東日本大震災をモチーフとする短編連作「ぼくらのじしん」では、監督を務めたゆれもせで(脚本:岡太地)編がPFFアワード2012に輝き、劇場公開もされています。

本作は川原監督が監督・脚本・撮影・編集の4役を担当し、昨年劇場公開された“あいしてる”を描いたラブストーリーです。

東京で心を病んでしまった妻・のぞみ。のぞみは不眠症で、夜中も仮眠をとりながら仕事をする夫・朝夫に何やかやと言いがかりをつけるので、2人は喧嘩ばかりしています。そこへ朝夫を溺愛する妹・凛が突然現れ、2人の仲を裂こうとするのですが。

名匠テレンス・マリックが『トゥ・ザ・ワンダー』の冒頭でも使用したというトイカメラ「デジタルハリネズミ」で全編撮影された本作。その粗目の独特な風合いが、他人のプライベート映像をのぞき見しているかのような親密さを感じさせてくれます。

突然現れた凛の存在によって追い詰められていくのぞみ。けれどそれは同時にどん詰まり状態にある夫婦2人の関係を振り返り、再構築する絶好の機会でもあるのです。のぞみと朝夫、朝夫と凛、凛とのぞみ、それぞれの関係性の中で育まれる“あい”に、どうぞキュンとしてください。
“女”を映す名手が描く女性賛歌! 『アンダーウェア・アフェア』 監督:岨手由貴子
アンダーウェア・アフェア
コスプレイヤーがPFFアワード2005で入選し、マイム マイムでPFFアワード2008準グランプリ&エンタテインメント賞(エイベックス・エンタテインメント賞)を受賞している岨手由貴子監督。長編商業映画デビュー作グッド・ストライプスが第7回TAMA映画賞 最優秀新進監督賞(岨手由貴子)、最優秀新進男優賞(中島 歩)を受賞した他、この春には人気作家・山内マリコの小説「あのこは貴族」の映画化でメガホンをとることが発表されるなど、今最も注目されている若手女性監督です。

本作は「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2009」の製作実地研修の完成作品で、ブレイク直前の綾野剛が主人公に揺さぶりをかける青年として登場しています。

田舎に暮らす朝子は夫(山中崇)と別居中で、農業体験に来ている青年(綾野)のことが気になっています。ある日青年を自宅に招き入れることになった朝子は、学生時代の下着にまつわるエピソードを思い出し…。

数々の男性遍歴が母親の体に刻まれている、と語る学生時代の朝子。“女の体に歴史あり”なのは朝子も同様で、大人になった彼女の太ももにはプックリと膨らんだ傷が残っています。学生・朝子は妹の派手な下着を見たことをきっかけに、女性としての意識を目覚めさせるのですが、大人・朝子もまた下着にまつわるセクシャルな体験をすることで“女”としての経験値をアップさせる~その鮮やかな跳躍がなんとも生々しくてまぶしいこと!

一人の女性の2つの時代をスイッチさせながら、秘密に息づく“女の人生”を活写した岨手監督。その卓越した演出力をご堪能ください。

これまで若手映画監督の登竜門となってきたPFFアワード。この祭典で入選を果たし劇場デビューした監督を振り返ってみると、森田芳光、石井岳龍、黒沢清、園子温、塚本晋也ほか、そうそうたる顔ぶれが並んでいます。今回紹介した5作品を手がけた監督たちの今後が期待されますよね。新鋭たちのルーツとなる作品を、この機会にぜひご覧ください。

歴代PFFアワード作品《2018~1988年》 好評配信中!
塚本晋也監督の1988年グランプリ受賞作『電柱小僧の冒険』も配信しています。

Writer | 足立美由紀

フリーライター&エディター。某インターネットプロバイダで映画情報サイトを立ち上げた後、フリーランスへ。現在は各種情報誌&劇場用映画情報誌などの紙媒体、ネット情報サービスほかにて映画レビューや俳優・監督のインタビュー記事を執筆。時には映画パンフレットのお手伝いも!試写室と自宅を往復する毎日です。

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