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全員濃いゾ!韓国映画界を牽引する芸達者な“オヤジ”たち

2019.07.10(Wed) | 上原礼子

今年の第72回カンヌ国際映画祭は、ポン・ジュノ監督の『パラサイト』(英題)が韓国映画初となる最高賞パルムドールを受賞。昨年の『万引き家族』に続き、アジア圏から格差社会を生きる“今”の家族を映し出した作品が栄誉を受けました。
近年、カンヌをきっかけに世界的に注目を集めた『新感染 ファイナルエクスプレス』や『哭声/コクソン』などで、改めて韓国映画と俳優たちに魅了された方も多いはず。『パラサイト』主演のソン・ガンホは授賞式で「尊敬する韓国のすべての俳優に捧げたい」とコメントしましたが、韓国には彼を筆頭に芸達者な“オヤジ”俳優たちがひしめき合い、演技合戦を繰り広げています!

ソン・ガンホ、韓国トップ俳優ここにあり!『弁護人』
弁護人
2000年代のヒット作『JSA』やポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』グエムル 漢江の怪物など、日本で最も人気のある韓国俳優のひとり、ソン・ガンホ(52歳)。彼が2013年に出演した『弁護人』は、ノ・ムヒョン元大統領が弁護士時代に関わった歴史的冤罪事件「釜林(プリム)事件」を基にした骨太な社会派ヒューマンドラマです。

高卒から苦学して弁護士になったソン・ウソクは不動産専門弁護士として事務所を立ち上げると、続いて税務に転向し、すっかり売れっ子に。とはいえ、時は1980年代初め。恩人の息子ジヌ(イム・シワン)が反政府的な書籍(不穏書籍)を読み広めたとして警察に不当逮捕され、拷問を受けていたことを知り、ジヌの弁護人として立ち上がります。

ほのぼのとした序盤から一転、ソン・ガンホ自身が主演した『タクシー運転手~約束は海を越えて~』で描かれた「光州事件」の翌年の出来事だけあって、若手のイム・シワンが挑んだ拷問シーンは壮絶で、手持ちカメラによる法廷シーンも瞬きすら許さないほど緊迫感に溢れています。金の亡者になりつつあった“俗物”弁護士が「こんなことが許されるのか」と軍事政権側に盾突いていく様は痛快ではありますが、そう簡単にはいかないのが現実。人間味とカリスマ性を併せ持つソン・ガンホが、当時の不条理をまるで自分事のように見せてくれます。

さらに、同級生の新聞記者役のイ・ソンミン(下記)、釜山警察の主導者役の哭声/コクソンクァク・ドウォンらとの応酬も見どころ。『タクシー運転手』や『1987、ある闘いの真実』で韓国の民主化運動に関心を持った方にもオススメです。
チェ・ミンシク、いぶし銀の権力者がハマる!『ザ・メイヤー 特別市民』
ザ・メイヤー
『シュリ』や『オールド・ボーイ』で韓国映画にハマったという人は多いかもしれません。これらを代表作に持ち、韓国歴代No.1ヒットを誇る『バトル・オーシャン/海上決戦』にも主演したのがチェ・ミンシク(57歳)。2016年の『ザ・メイヤー 特別市民』では、大統領と並ぶほどの権力者・ソウル市長を演じています。

現職市長のジョングは史上初の3期当選がかかった市長選に立候補、ゆくゆくは大統領選をも視野に入れています。そんな彼を支えるのは選対本部長ヒョクスと、若手の広報担当キョン。クリーンなイメージ戦略はあくまでも表の顔で、政界の伏魔殿では妨害工作や盗聴は当たり前。そんな中、ジョングは交通事故を起こしてしまい、隠蔽を図ろうとするのですが…。

SNS世代の支持者集めに貢献しながらも、そんな市長たちに疑問を持ち始める広報のキョンを演じるのは、『新聞記者』が公開中のシム・ウンギョン。清濁併せ呑むからこそ政治家だというチェ・ミンシクに向かっていくシーンは見ものです。また、ヒョクスを演じるのは、上記『弁護人』や『哭声/コクソン』『アシュラ』のクァク・ドウォン(45歳)。この人もクセ者がハマりすぎる名優です。
マ・ドンソク、ブレイク前夜の必見ラブコメ『結婚前夜~マリッジブルー~』
結婚前夜
新感染で本国、日本はもとより世界的にブレイクしたマ・ドンソク(48歳)。2018年は4作品が日本上陸、今年はお嬢さんのハ・ジョンウ(40歳)ら豪華共演の『神と共に 第二章:因と縁』など3作品が公開される売れっ子となり、来年はハリウッドにも進出します。

その名前と“ラブリー”を掛け合わせた“マブリー”の愛称で呼ばれる彼は、その鉄拳で身重の妻を守る夫やコワモテ刑事などを演じてきましたが、4組のカップルのマリッジブルーを描いたラブコメディ『結婚前夜』(2013)では、二の腕がひと回り大きくなる以前の“マブリー”に出会えます。

演じるのは、異国出身の美女との“年の差”国際結婚を前に、身体的不安事項が発生する花屋の中年オーナー、ゴノ。色とりどりの花々に囲まれながらも、「そもそも、なんで俺なの?」と疑心暗鬼に陥ったり、テギョン(2PM)演じるハンサムシェフに嫉妬したりとコミカルでラブリーな演技を炸裂させるマ・ドンソクは必見。また本作は、『神と共に』のチュ・ジフンがテギョンのライバルとして登場するなど豪華キャストが共演しており、韓国版『ラブ・アクチュアリー』ともいわれています。
ユ・ヘジン、名脇役が主演したスポ根コメディ『レッスル!』
レッスル!
2018年度ロングランヒットとなった『タクシー運転手~約束は海を越えて~』や、その実質的続編ともいえる『1987、ある闘いの真実』など、韓国映画界を代表する名バイプレイヤーとして知られるユ・ヘジン(49歳)の主演作。彼は日本映画鍵泥棒のメソッドを原案にした『LUCK-KEY ラッキー』でも主演(香川照之が演じた殺し屋役)を務め、本国でブレイクしています。

かつてはレスリングの代表選手ながら、今では最強の主夫となって“夢は金メダリストの父親”と息子ソンウンを鍛えるギボ。しかし、中年の危機ならぬ、まさかのモテ期(?)が到来し、国家代表選抜戦を目前に有望選手の息子との関係が険悪になり…。

ギボは息子に夢を託しただけでなく、近所の主婦たちにエアロビクスを教えて生計を立てる自分のようにはなってほしくないと、“年金がしっかり支給される”メダリストに息子がなることを望んでいたのです。その辺りの切実さやシングルファーザーの悲哀を、ユーモアとバランスを取りながら演じるユ・ヘジンは流石です。
イ・ソンミン、さえないオヤジの日常が一変…『目撃者』
目撃者
東野圭吾原作の『さまよう刃』や上記の『弁護人』などに出演してきた名バイプレイヤー、イ・ソンミン(50歳)が主演をつとめた『目撃者』は、初登場第1位を記録した2018年の大ヒット作。7月19日公開のファン・ジョンミン(48歳)主演最新作工作 黒金星(ブラック・ ヴィーナス)と呼ばれた男での演技も絶賛されており、各賞を受賞しています。

本作で演じるのは、郊外にマンションを購入したばかりのしがない会社員サンフン。深夜に泥酔状態で帰宅した日、なんと自宅のベランダから女性がある男に殴り殺されているところを目撃。そして次の瞬間、その殺人鬼からも自分の姿を“目撃”されてしまうのです。

他人のことには干渉したくない、面倒には巻き込まれたくないーー。そんな事なかれ主義のサンフンは知らないフリを決め込むことにしますが、次第に殺人鬼が目撃者に迫っていきます。若手注目株クァク・シヤンが演じた殺人鬼との息詰まる心理戦から、1対1の直接対決、さらには想像を超えたクライマックスまで! 緊迫のサスペンス・スリラーの中で、イ・ソンミンがさえないオヤジから家族を守るヒーローに転じていく姿に注目。『新感染』と同じプロデューサーが手がけていますが、今は“家族のために戦うお父さん”がヒットの秘密のようです。

今回、スター俳優のソン・ガンホやチェ・ミンシク、話題作を支えた名脇役からブレイクしたマ・ドンソクらを取り上げましたが、監督業に進出したキム・ユンソク(51歳)、お嬢さん『工作』のチョ・ジヌン(43歳)など、ほかにも観る者を唸らせる名優たちはたくさんいます。とりわけ、日本と同じようにバイプレイヤーたちが改めて大きく注目され、主演作が次々に作られている点は興味深いものがありますね。

Writer | 上原礼子

情報誌・女性誌等の編集・ライターをへて、現在はWEBを中心にフリーに。1児の母。子ども、ネコ、英国俳優などが弱点。看護師専門誌で映画&DVDコーナーを14年担当し、医療や死生観などにも関心アリ。試写(映画館)忘備録を随時更新中。映画を通じて悲嘆を癒やす【映画でグリーフワーク】を試みています。

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