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『命みじかし、恋せよ乙女』の樹木希林をはじめ外国人監督とコラボした日本人俳優

2019.08.07(Wed) | 清水久美子

昨年の9月にこの世を去った樹木希林さん。彼女の遺作にして世界デビュー作となった映画『命みじかし、恋せよ乙女』が8月16日から公開されます。本作はドイツのドーリス・デリエ監督作で、樹木さんはデリエ監督の憧れの存在だったそうです。ハリウッドに進出した日本人俳優をまとめた記事はよく見かけますが、今回は本作のように外国人監督との“コラボ感”を強く感じられる映画を紹介したいと思います。

監督の熱いオファーで樹木希林の出演が実現『命みじかし、恋せよ乙女』
命みじかし、恋せよ乙女
ドイツで最も成功した女性監督の一人と称えられる『フクシマ・モナムール』のドーリス・デリエ監督が、樹木希林にあてた役を自らの手で書き上げて出演をオファーし、ドイツと日本で撮影した異色作。

ドイツ・ミュンヘンに暮らすカール(ゴロ・オイラー)は、酒に溺れて仕事も家族も失い、どん底にいました。そこへ突然、ユウ(入月絢)と名乗る日本人女性が訪ねて来ます。風変りな彼女と過ごすうちに、人生を見つめ直し始めるカールでしたが、ユウは忽然と姿を消してしまいます。彼女を捜して訪れた日本で、カールはユウの祖母(樹木希林)から驚きの話を聞かされますが…。

30余年の間に日本を30回以上も訪れ、日本文化をこよなく愛しているというデリエ監督。彼女は、日本はアニミズム(自然界において動植物や無生物それぞれに固有の霊が宿るという信仰や世界観)的な文化を持つ国だと考えているそうです。この映画で彼女は、ドイツの“デーモン”と日本の“幽霊”をテーマとして存在させ、主人公カールが暗闇から抜け出そうとする過程で、霊を重要な要素として描いています。そのため、私はホラーのような展開にちょっと驚いたのですが、樹木さんの登場に包み込まれるような安堵感を感じ、心が浄化するような感動を覚えました。デリエ監督から出演を切望され、本作で女優人生を締めくくった樹木さん。日本人として誇らしい気持ちになる映画です。

『命みじかし、恋せよ乙女』
8月16日(金)より TOHOシネマズ シャンテ他 全国順次公開
(C) Constantin Film Verleih GmbH/ Mathias Bothor
配給:ギャガ
監督から演技を絶賛され韓国の映画賞を受賞した國村隼『哭声/コクソン』
哭声/コクソン
リドリー・スコット監督作『ブラック・レイン』、ジョン・ウー監督作『ハード・ボイルド 新・男たちの挽歌』などに出演してきた国際派俳優の國村隼が、『チェイサー』哀しき獣のナ・ホンジン監督に出演を請われ、唯一無二とも言える強烈なキャラクターを熱演したサスペンス・スリラー。國村は韓国の青龍映画賞にて外国人史上初の快挙となる男優助演賞を受賞。

田舎の村に得体の知れない“よそ者”(國村)がやって来ます。この男についての謎めいた噂が広がるにつれて、村人が身内を残虐に殺す事件が多発していきます。犯人は必ず濁った眼に湿疹で爛れた肌をして、言葉を発することもできない状態で現場に残るという怪現象が続く中、事件を担当する村の警官ジョング(クァク・ドウォン)は、自分の娘に殺人犯たちと同じ湿疹があることに気付くのですが…。

國村さんは、山の中を裸で走り回ったり、鹿にかぶりついたりするシーンまで怪演し、ナ監督から「映画の演技の神髄を見せてくれた」と絶賛されています。韓国でも人気者となった國村さんは、写真を撮ってほしいというファンに囲まれたそうです。
日本のベストセラー小説を外国人監督が日本の俳優を起用して映画化『ノルウェイの森』
ノルウェイの森
社会現象を巻き起こす大ベストセラーとなり、世界中で翻訳され、多くのファンを生み出した村上春樹の小説を、ベトナム出身・フランス育ちのトラン・アン・ユン監督(『青いパパイヤの香り』)が映画化。キャスティングに注目が集まり、松山ケンイチ、菊地凛子、水原希子が抜擢され話題を呼びました。

高校時代に親友のキズキ(高良健吾)を自殺で失ったワタナベ(松山)。東京の大学に進学したワタナベは、偶然キズキの恋人だった直子(菊地)と再会します。お互いに大切なキズキを失くした者として付き合いを深めていく二人は、直子の二十歳の誕生日に一夜を共にしますが、ワタナベの想いが深まるほど直子の喪失感は大きくなっていきます。そんな折、ワタナベは大学で瑞々しい女の子・緑(水原)と出会うのですが…。

トラン監督は、オーディションを経て、主要キャストの3人に絶大な信頼を寄せたそうです。彼らなら大丈夫だという確信をもって撮影し、映画化を素晴らしいものにすることに貢献できたと語っている監督。外国人監督とのコラボが成功した例と言えるでしょう。
監督と対談で意気投合した加瀬亮が主演『自由が丘で』
自由が丘で
カンヌ国際映画祭の常連で、世界的な人気を誇る韓国の名匠ホン・サンス監督。フランスの至宝イザベル・ユペールも、ホン監督の3人のアンヌや『クレアのカメラ』に出演しました。『自由が丘で』は、そんなホン監督と日本での対談で意気投合したという加瀬亮が主演を務める人間ドラマです。

想いを寄せる年上の韓国人女性を追いかけて、ソウルへやって来たモリ(加瀬)。でも、彼女の姿はなく、モリは彼女に宛てた日記のような手紙を書き始めます。宿泊先のゲストハウスで米国帰りの男性と仲良くなり、毎晩のように飲んで語らったり、迷子になった犬を見つけたことで、カフェ<自由が丘>のオーナーと急接近したり。果たして、モリは彼女と無事に再会できるのでしょうか…?

彼女はモリからの何枚にもわたる手紙を読もうとして落としてしまい、バラバラになったせいで便箋の順番が分からなくなるのですが、映画は彼女が読む順に場面が描かれ、時系列もバラバラになっているのが面白いです。このように、ホン監督作はとてもユニークで、監督のファンを公言してきた加瀬さんは、とても心地良い現場だったと語っています。
福山雅治の美しさが監督の心を動かした『マンハント』
マンハント
高倉健主演の伝説的名作『君よ憤怒の河を渉れ』を、巨匠ジョン・ウー監督がリメイクしたサスペンス・アクション超大作。二丁拳銃アクション、白い鳩、独特のスローモーションとカット割りなど、ウー監督ならではのアクション流儀を取り入れつつ、日本愛に溢れた作品に仕上がっています。福山雅治とチャン・ハンユーのW主演で、3カ月以上に及ぶ日本オールロケが敢行されました。

酒井社長(國村隼)率いる天神製薬の顧問弁護士ドゥ・チウ(チャン)は、社長秘書殺しの容疑をかけられます。何者かにはめられたドゥ・チウは逃走しますが、大阪府警の敏腕刑事・矢村(福山雅治)に追われることに。やがて、矢村はドゥ・チウの無実を確信し、強く熱い絆が芽生えた二人は手を組んで事件の真相に立ち向かうのですが…。

主演二人が手錠で繋がれながら銃を構えるシーンは圧巻。ウー監督は福山さんとCM撮影の仕事を一緒にした際、彼のカッコ良さが印象的だったので、「福山さんなら美しく撮れる」と今回のオファーをしたそうです。日本のイケメン俳優は、中国はもちろんハリウッドでも大活躍する監督の心をも動かすのですね!

世界各国の監督たちが日本の俳優に注目し、コラボが実現した映画を5本紹介しました。私は樹木希林さんが『海よりもまだ深く』に出演された時にインタビューしたのですが、楽しいお話が印象的で、いまだに亡くなったことを受け入れ難いです…。でも、『命みじかし、恋せよ乙女』によって、樹木さんの素晴らしさがより広がっていくことは、とても嬉しく思います。この機会に、ぜひ樹木さんをはじめとする、外国人監督の心を動かした日本人俳優の出演作をご覧ください。

Writer | 清水久美子

映画・海外ドラマ・音楽ライター。昼はメーカーでOL、夜は音楽雑誌の編集アシスタントをこなした後、パソコン雑誌で編集業務に就く。その後フリーライターとなり、俳優や監督・ミュージシャンのインタビュー、執筆に日々奔走。試写室通いで時には1日4本の映画を観ることも。移動中もスマホは目が疲れるので、いつもポータブルDVDプレイヤー持参で何かしら観ています。

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