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青山シアター物産展/関東編

2019.09.11(Wed) | 仲谷暢之

日本全国で撮影されている映画、それをご当地映画と呼んだりしています。青山シアターにも各地が舞台やロケ地となった映画をたくさん配信させていただいております。そんなご当地映画をもっと見ていただきたい気持ちで開催しております「青山シアター物産展」。前回は東北でしたが、第2弾は配信が始まった『翔んで埼玉』を含む、関東を舞台にした作品をご紹介します。なお、東京での作品はあまりにも膨大のために取り上げておりません。悪しからずでございます。

『翔んで埼玉』 撮影地/埼玉県
翔んで埼玉
「パタリロ!」の実写映画化も新しい、漫画家・魔夜峰央原作のある意味問題作をまさかの実写化してしまったのが今作。
今から30年以上も前に当時のご本人をめぐる出来事が極度のストレスを生み、その勢いで描いたという漫画は、当時はひっそりとした反響だったものの、2015年にSNS上で突然話題となり、漫画本が復刊。しかも50万部というベストセラーに。そしてついに映画化というネットのいろんな意味で功罪が垣間見える作品。
出身地や居住地によって差別が行われている日本の東京にある名門校を舞台に、そこにやってきた転校生、麻実麗と学院の生徒会長、壇ノ浦百美との関係、そして埼玉県に対する差別政策撤廃を目論む人物たちの暗躍、さらに千葉県、茨城県、群馬県、神奈川県、栃木県という北関東の県をも巻き込んで強烈なディスりを繰り広げるストーリーが伝説パートと、それをラジオドラマとして埼玉県人が聴き入る現代パートを交差しながら描かれてます。
ご当地映画というのは基本、町おこしの意味合いが強いにゆえにその土地の名物や観光地をこれでもかと投入しがちだけれど、今作は完全ご当地をディスり、こすり倒してる。
が、埼玉県知事は「悪名は無名に勝る」と言葉を発し、激怒するどころか県丸ごとこの映画を応援するとまでになり、いざ公開されると映画は大ヒット。ここまで自虐で好機を掴むというご当地映画としては、関西ではチョコッとあるものの、他府県では初めてかもしれない。
そう言えば、千葉県の銚子電鉄がうまい棒ならぬ、まずい棒(味ではなく、経営状態が非常にまずいという意味)を販売し注目されたのも同じ延長線上にあるなぁ。
おらが故郷という郷愁と小ネタを散りばめ地元の人の琴線に触れさせ、そして「カミングアウトバラエティ!! 秘密のケンミンSHOW」的な全国の人も“へぇ”と思わせるあるあるが繰り広げられ、屈辱をとことん笑いに変換させて最終的には感動までさせたのはさすが。さらにさすがと言わざるべきは二階堂ふみに男役を、そしてGACKTに高校生を演じさせたという無茶ぶりなキャスティング。これもかつて映画テルマエ・ロマエシリーズで阿部寛や市村正親などにローマ人を演じさせた監督だからゆえの納得も。 公開されたのが早すぎても遅すぎてもダメだった、今だからこそ生まれた名珍作。改めて必見!
『キスできる餃子』 撮影地/栃木県
キスできる餃子
栃木県の宇都宮市に本社を置く地方新聞、下野新聞の創刊140周年の記念事業として作られた地方創生ムービー第2弾だそうです(ちなみに第1弾は三重県桑名市を舞台にした「クハナ!」で同じ監督)。
餃子の街として知られる宇都宮を舞台に、イケメンには目がないバツイチ子持ちの出戻りシングルマザーが、今は廃業した実家の餃子屋を再建するために腰を悪くした父親と喧嘩しながら奮闘。そんなある日、成績不振の上、スキャンダルで痛手を負った若手イケメンゴルファーと知り合ったことから紆余曲折を経て、さらに発奮し、やがて彼女は自分の生き方を模索するというストーリー。
もうこれでもかというくらいの宇都宮名物の餃子推しです!オシギョです!
ヒダの折り方がその餃子の顔になり、店の顔となる、皮の厚さはとても大切。粉を練る時のお湯の温度は85度と、餃子に関する名言と豆知識を放り込んでくれ、さらに宇都宮餃子公式応援ソング「ギョ!ギョ!ギョ!ギョーザ」で餃子体操を繰り広げたりしてくれ(本作のスポンサーで宇都宮に工場がある宮島醤油の社長がきっちり挨拶する場面も)、問答無用に見終わった後、餃子を食べたくなる仕組みになってます。
そして、宇都宮がカクテルの街であるという次なる推しをいきなりぶっ込んできたり(珍場面あり!)、バスケットボールチームの栃木ブレックスの試合をデートのきっかけに使ったりと、栃木の推しがご当地映画のセオリーに則って(そんなものがあるかわからなけど)旅のパンフレットを見るかのように綴られてます。
ある三つの真実を悟りながら邁進する足立梨花演じる主人公、陽子と名古屋を中心に活動するBOYS AND MENの田村侑久演じるスランプ状態のプロゴルファー・岩原との、逆「ローマの休日」を彷彿とさせる餃子ラブコメ、しかもタイトルの意味もちゃんとラストに用意されてます。これぞ昨今のご当地映画としてはお手本となるような完璧な作品っ!
『下妻物語』 撮影地/茨城県
下妻物語
今年7月に「純潔」が刊行された小説家、嶽本野ばらの「下妻物語」を映画化したのが本作。監督はのちに嫌われ松子の一生』、『パコと魔法の絵本』、『告白』、『渇き。(以上、青山シアターでも配信中)、『来る』と話題作を発表している中島哲也。

ワケあって兵庫県尼崎市から、田んぼに囲まれた茨城県下妻で暮らしている深田恭子演じる桃子。常にロリータファッションに身を包み、ロココ意識下で暮らす女子。当然、地元では浮いた存在だけど、我が道を往く彼女にはどうでもいい事。可愛い洋服とお菓子さえあれば素敵な人生を送ることができると思っている。そんな彼女が洋服購入資金を集めるために、ブランド品のパチモンを販売。ある日、結婚式用にと洋服を買いに来たのが、土屋アンナ演じる地元のヤンキー・イチゴ。水と油のようなふたりが、やがてある事をきっかけに奇妙な絆で結ばれていくというストーリー。
主人公の桃子は茨城県下妻を、周りは田んぼばかりで自分が欲しいものは何もない、地元の人間はジャスコ(現在はイオン)で、人生のあらゆることが足りるとかなり下に見ていて、田舎の人間(特に若者)にとっては、ある意味胸をえぐられるような見方をされている。それだけに彼女が洋服を買いに東京の代官山まで電車を乗り継いでいく描写も田舎の人間(特に若者)にとっては気持ち的にあるあるであり、リアルな行動なのだと思う。
反面、イチゴに見るヤンキー文化も北関東の名物のひとつ。そういえば80年代に発行されていた「ギャルズライフ」という雑誌には、茨城県や栃木県のヤンキー文化やレディースの紹介が適度にされていて、そこには過剰でどう考えても品を逸脱した50ccのデコバイクを前に集合写真を撮るヤンキーたちがガンつけていて、当時大阪の中学生だった僕でも、関西のヤンキーとは明らかに違う、どこか垢抜けない牧歌的な匂いを感じ取っていたっけ。ま、関西のヤンキーも似たり寄ったりだったけど、そんな当時のことがこの映画にもしっかりと漂ってました。
桃子が東京へ向かう下妻駅や騰波ノ江駅、茨城県人が愛するジャスコ(今はイオン)、イチゴが桃子に尊敬するレディーズたちの話をする貴族の森(現在は森乃館)といういかにも郊外にあるデカめレストラン喫茶、存在感たっぷりの牛久大仏も物語にしっかり役立っていて茨城県の爪痕を映画にしっかり残しています。
それにしても深田恭子と土屋アンナのキャスティングは今見ても奇跡的ベストだなぁとしみじみ。あと、レディース総長役の小池栄子。似合いすぎて完璧です!
『劇場版「お前はまだグンマを知らない」』 撮影地/群馬県
お前はまだグンマを知らない
漫画家、井田ヒロト原作コミックをテレビドラマ化したものを新たに映画化したのが群馬を舞台にしたご当地コメディの本作!
イケメン俳優として今や大活躍中の間宮祥太朗が、顔と体を張ってチバ県からグンマ県に引っ越してきた高校生を演じている。
彼が転校してきた高校には、群馬の郷土愛に溢れたヒロインや、先に引っ越していた幼なじみ、クセのある同級生たちに囲まれながら、グンマの文化や風習にカルチャーショックを受けながら、さらにトチギ県やイバラキ県のヤンキーたちとの地域抗争に巻き込まれながらもいつしかグンマーとして生きていくというストーリー。
これ、ぶっちゃけ『翔んで埼玉』と、ところどころネタが被ってるんですよ。ディスり方も広く浅くって感じです。でもこちらの方が先にテレビドラマにもなり、映画化もされているんですが、観客動員でははるかに『翔んで埼玉』の方が多いので、印象としてはなんともはや・・・。
とはいえ、日本テレビの番組「月曜から夜ふかし」のディレクターが監督したこともあって、バラエティのノリがすごくて、オープニングからコミックにも描かれた通りのわかりやすい、例えば赤城山からのからっ風、だるま弁当、ひもかわうどん、赤城神社、歴代総理大臣、こんにゃく、焼きまんじゅう、湯の花、上毛かるた、群馬を代表するゆるキャラ、ぐんまちゃん、草津温泉のゆるキャラ、ゆもみちゃん、群馬の3B(なんのBかはご覧になってお確かめを)、ご当地出身タレントなどなどこれまでのロケで手慣れた手腕と情報量で、ストーリーに群馬あるあるを怒涛のごとく織り込んでくるので見終わればいっぱしの群馬通にもなれるお得感も。
そんなドタバタコメディの中、百面相ならぬ千面相を披露し、完全イケメン崩壊状態で間宮祥太朗がヘタレキャラで存分に楽しませてくれています。さらにはとんでもない設定の末に下半身までご開帳~のサービスぶり。今ではなかなか見ることのできない姿なので、ある意味貴重です。ちなみに『翔んで埼玉』にも彼、“ある役”で出演しているので、本作と合わせて見ることをオススメします。

最後は番外編としてキングコング対ゴジラでは松戸市、ゴジラ対メカゴジラは幕張新都心、ゴジラVSメカゴジラは館山市、そしてゴジラ2000ミレニアムでは幕張ベイエリアと、千葉県がゴジラたちの襲来などを受ける場所として頻繁に使われているので、そちらもチェックするのもいいかもしれません。

Writer | 仲谷暢之

ライター、関西を中心に映画や演劇、お笑い、料理ネタなどなどいろいろ書いてます。

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