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実話の力強さをみよ! 衝撃と感動の人間ドラマ5選

2019.09.25(Wed) | 足立美由紀

2008年にインドのムンバイで起こった同時多発テロをモチーフに描く『ホテル・ムンバイ』が9月27日(金)から公開されます。実際に起こった事柄だからこそ、再現された悲惨な状況がよりリアルに感じられ、主人公の迷い&勇気に激しく心を動かされる―実話ベースの作品の醍醐味はそこに尽きると思います。そこで今回は、実話の力強さに圧倒される「衝撃と感動の人間ドラマ」を5本紹介します。

観客を救ったホテルマンたちの信念と勇気『ホテル・ムンバイ』
ホテルムンバイ
インド最大の都市であるムンバイ屈指の五つ星ホテル「タージマハル・ホテル」。この歴史と格式ある美しいホテルは、2008年11月26日の深夜に突如始まったイスラム武装勢力による同時多発テロにより、世界を震撼させた凄惨な事件の舞台となりました。ホテルには500人以上の人質が囚われ多くの犠牲者を出しましたが、鎮圧後、ホテルマンたちの勇気ある行動によって多くの人々が生還していたことが分かったのです。

この事実に感銘を受けたオーストラリア出身のアンソニー・マラス監督がボーダーライン製作陣とタッグを組み、生存者へのインタビューなど徹底的なリサーチを行い映画化したのが本作です。

主人公となるのは、一流のホテルマンになることを夢みる青年アルジュン。臨月の妻&幼い娘と暮らす若いパパでもあるアルジュンをデヴ・パテルが好演。またアメリカ人宿泊客デヴィッドをアーミー・ハマーが扮し、最愛の妻と赤ちゃんを守るためにテロリストに立ち向かっていく男性を印象的に演じています。

本作では、「ホテルマンとしての使命」や「一家の大黒柱としての責任」、「家族の命」、そして「自分の命」と、それぞれを量りにかけた “優先順位”を問われるシーンがたびたび登場します。その刹那の彼らの心の動きと決断に胸打たれるのは、本作が単なるヒーロー物語でない実話だからこそ。死に直結する究極の状況の中で、踏みとどまって人命救助にあたったホテルマンたちのプロとしての信念と勇気には、誰しも敬服以上の崇高な気持ちにさせられることでしょう。

圧倒的なリアリティで描かれた凄惨なテロの描写はかなり衝撃的ですが、偏見や人の温もりにもフォーカスを当てた奇跡の脱出劇にどうぞご注目ください。

◆『ホテル・ムンバイ
9月27日(金) TOHOシネマズ日比谷 他 全国ロードショー
巨大な敵を前に真実を追い求めた不屈の記者魂『スポットライト 世紀のスクープ』
スポットライト
カトリック教会のスキャンダルに挑んだ新聞記者たちを追った社会派ドラマです。脚本も務めたトム・マッカシー監督が、ボストンに潜む闇をスリリングに描いています。第88回アカデミー賞6部門ノミネート、作品賞・脚本賞のW受賞となった作品。

2001年、米ボストン。「ボストン・グローブ」新聞社ではロビー(マイケル・キートン)をデスクとするマイク(マーク・ラファロ)ら4人の記者がチームとなって<スポットライト>コーナーを担当しています。そこに新任の局長バロン(リーブ・シュレイバー)が赴任し、神父による性的虐待と枢機卿の隠蔽疑惑について調査するよう告げるのです。

野球を愛し、カトリック教徒が多数を占めるボストン。ロビーを筆頭に記者たちはボストンで育ち、「ボストン・グローブ」は地域に密着した地元紙でもあります。そんな中、周囲を敵に回しカトリック教会にケンカを売ったロビーたち。口をつぐむ被害者や妨害&心理的圧迫など彼らの取材活動は困難を極めますが、不屈の記者魂でじりじりと“不都合な真実”へと近づいていく姿はスリル満点。その一方で、愛する家族の心の拠り所でもあるカトリックをおとしめてしまうことへの葛藤も描かれ、より味わい深い人間ドラマを形成しています。
86歳、現役女性判事の若かりし痛快逆転劇『ビリーブ 未来への大逆転』
ビリーブ 未来への大逆転
米調査会社ギャラップ社が2018年に発表した「アメリカで最も尊敬される女性」ランキングで、ミッシェル・オバマ前大統領夫人、オプラ・ウィンフリー、ヒラリー・クリントンに次ぐ第4位に選ばれた米最高裁判所の最高齢判事ルース・ギンズバーグ。RGBの愛称で呼ばれ、アメリカでとても人気のあるリベラル派の86歳、現役判事です。

本作はルース(フェリシティ・ジョーンズ)がハーバード法科大学院に入学するも厳しい性差別に直面した1950年代から、世紀の「男女平等裁判」に挑んだ70年代を主軸とした物語です。結婚して子供もいたルースには様々な試練が降りかかりますが、夫マーティン(アーミー・ハマー)の協力のもと大学を首席で卒業。それでも弁護士としての職に就けなかった彼女は、“100%負ける”と言われていた裁判の弁護を買って出るのです。

大学院入学当時500人いた生徒のうち女性はわずか9人。女性用トイレはなく教授までもが女性差別発言をしてはばからない時代を生きたルースの、怒りや迷いが丁寧に描かれていきます。その苦難の道もさることながら、鮮やかに浮かび上がってくるのは夫マーティンの存在。エリート弁護士ながら女性の活躍を応援し、家事や育児を当たり前のこととして分担するリベラルな精神が、ルースの中に今も息づいています。
突如ヒーローになった僕の苦悩と成長『ボストン ストロング ~ダメな僕だから英雄になれた~』
ボストンストロング
2013年に起きたボストン・マラソン爆弾テロ事件に巻き込まれたジェフ・ボーマンの回顧録を基につむぐ真実の物語。テロにより両足を失いながらも、犯人逮捕に貢献した実在のジェフを、個性派俳優ジェイク・ギレンホールが製作兼務で演じています。野球好きのジェフが通うレッド・ソックスの本拠地での撮影や、実際に彼を診察した医師らが出演するなど、エキストラの80%が地元の人々というボストン市全面協力作!

もともと仕事もイマイチで約束も守れず~と、ダメダメだったジェフ。テロに巻き込まれたのは、マラソンに参加した“元カノ・エリン(タチアナ・マズラニー)”の心を取り戻すための応援をしていた最中でした。そんな彼が、テロリストに屈しない精神を称した“ボストン ストロング”として人々の象徴に。

ジェフは両足を失った悲しみと耐え難い痛みに苛まれ、突如ヒーローにまつり上げられたギャップに苦しみます。その一方で、自分のために重症を負った彼への罪悪感にむしばまれ、いつまでも“大きな子供”のまま前に進もうとしない彼に失望するエリン。デヴィッド・ゴードン・グリーン監督はそんな2人の姿を、彼らと同じ目線でじっくりと描き出していきます。さて絶望の淵でジェフがつかんだひと筋の希望の光と、彼ら2人が選んだ未来は…?
異文化の壁を乗り越えた恋人たちの実話『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』
ビッグシック
パキスタン人の青年と白人女性のカップルが異文化の壁を乗り越え、結婚するまでを描いた実話に基づくコメディドラマ。主人公クメイルを本人が演じ、夫婦で共同脚本を手がけたこの笑える感動作は、わずか5館での上映のはずが口コミで広がり拡大公開されて大ヒット。ついにはアカデミー賞(脚本賞)にもノミネートされました。

クメイルは故郷パキスタンをいじったネタで笑いをとるコメディアン。ある夜、舞台を観に来た大学院生エミリーと意気投合して付き合い始めます。しかし厳格なイスラム教徒の両親は、彼とパキスタン人の女性とのお見合いを隙あらばセッティング。その事実を知ったエミリーはショックを受け離れていきますが、数日後、彼女は重病で入院してしまうのです。

同じ国籍の女性との“お見合い結婚”が絶対だったり、白人と結婚すると親族からのけ者にされたりと、様々な“家族のルール”に縛られるクメイル。またエミリーの父親からは3.11についてどう思うか質問されるなど、2人の前には国籍だけでない“異文化の壁”があることを痛感させられます。描かれている状況はわりとシビアですが、ポイントを押さえて挿入されたユーモアが笑いを誘い、本作を上質のラブコメディに仕上げています。

今回紹介した実話を基につむがれた物語の主人公たちは、それぞれに危機的状況に直面します。彼らが恐怖に尻込みしたりどう行動すべきか迷ったりする姿を、よりリアルに感じていただけたでしょうか。長い人生、山あり谷あり。困難な状況から逃げずに、一歩を踏み出す勇気や決意が人を感動させるのですよね。

Writer | 足立美由紀

フリーライター&エディター。某インターネットプロバイダで映画情報サイトを立ち上げた後、フリーランスへ。現在は各種情報誌&劇場用映画情報誌などの紙媒体、ネット情報サービスほかにて映画レビューや俳優・監督のインタビュー記事を執筆。時には映画パンフレットのお手伝いも!試写室と自宅を往復する毎日です。

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