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永遠のクール・ビューティー、フランスの大女優カトリーヌ・ドヌーヴの昔と今を堪能できる作品5選

2019.10.02(Wed) | 谷直美

 2019年ベネチア国際映画祭のオープニングを飾った是枝裕和監督最新作「真実」。主人公ファビエンヌを演じたカトリーヌ・ドヌーヴが、ジャパン・プレミアのために来日します。
 75歳を過ぎてなお圧倒的な存在感をはなつフランス映画界のクール・ビューティー。そんなカトリーヌ・ドヌーヴ初期の代表作と最近の作品からその魅力に改めて迫ります。

是枝監督最新作真実は、2019年10月11日より公開。

ドヌーヴを一躍スターダムに押し上げた初期の代表作「シェルブールの雨傘」
シェルブールの雨傘
 二十歳になったばかりのドヌーヴが主演した「シェルブールの雨傘」は、全編を通して全ての台詞が歌になっている完全なミュージカル映画。
 ミシェル・ルグランの切なくロマンチックな楽曲にのせて、若く幸せな恋人を戦争が引き裂いていくさまを描いたラブストーリーです。

 いわゆる「悲恋もの」にありがちな重苦しさがないのは、カラフルでポップな美術や衣装、歌による軽やかな台詞回し、そして何よりもカトリーヌ・ドヌーヴの端正でフレッシュな美貌によるものでしょう。
 ガーリーなファッションは今見てもとってもキュートで、思わずみとれてしまうほどお洒落。

 50年以上前の作品ですが、ただ耐えて待つ女ではなく、子供を身ごもろうが自分の意志で自分の人生を選び取っていく現実的でクールなヒロイン像がいかにもフランス女性らしい。

 キャラクターの心情が、壁紙や衣装の色味で視覚的に表現されていることにもぜひ注目してみて。
圧倒的な多幸感!フレンチミュージカルの傑作「ロシュフォールの恋人たち」
ロシュフォールの恋人たち
 ジャック・ドゥミとミシェル・ルグランのコンビによる、どこを切り取ってもハッピーすぎるミュージカル。

 大西洋に面したフランスの軍港の町ロシュフォールが舞台。「シェルブールの雨傘」同様、戦争が人々の暮らしに暗い影を落としている時代の物語にも関わらず、底抜けに明るいこの作品。
 群舞やお祭りのシーンで映画のメイン舞台となったコルベール広場をはじめ、屋外での自然光を生かした撮影が自由で開放的な空気感を生むことに成功しています。

 一周回って全てがあまりにもお洒落で、古臭さを感じさせないのは驚くべきこと。とりわけミシェル・ルグランの劇中楽曲は、今も広く愛されている名曲揃いです。

主演はカトリーヌ・ドヌーヴとドヌーヴの実姉フランソワーズ・ドルレアックのキュートすぎる美人姉妹。アメリカからミュージカル界の大スター、ジーン・ケリーも参加しています。

 パステルカラーを基調とした色とりどりの衣装を身にまとい、笑顔のダンサーたちが繰り広げる歌とダンス。
 デイミアン・チャゼル監督の「ラ・ラ・ランド」は、まさに現代版「ロシュフォールの恋人たち」といって良いほど、この作品のエッセンスが色濃く投影されていることに気付くはず。

 実はドヌーヴと共に将来を嘱望されていた姉のフランソワーズは、この作品が公開された年に交通事故で25歳の若さで亡くなっています。あまりに痛ましく惜しいことです。
自然体の魅力をまとった軽やかなロードムービー「ミス・ブルターニュの恋」
ミス・ブルターニュの恋
 若くしてトップスターになった後も職業女優としての地歩を着実に重ねてきたカトリーヌ・ドヌーヴ。以下3作は、今では出演作が90作品を超える彼女の近作を紹介します。

 若さにしがみつかず、年代ごとの魅力を見せてくれるドヌーヴの年の取り方のなんて素敵なこと。
 いつも自分の足で立って自分らしく生きてきた。そんな彼女の生きざまがにじみ出ているような作品です。

 タイトルからは熟女の恋を連想してしまうけれど、原題は「Elle s'en va」(彼女は去るの意)で、いわゆる恋愛ものではありません。
 愛人の裏切りをきっかけに、疲れて傷ついた心を持て余した女性が衝動的に車に乗って旅に出るロードムービー。

 ドヌーヴ演じる主人公ベティは、母を介護する娘であり、娘をもつ母親であり、孫をもつ祖母であり、レストランを切り盛りする経営者であり、何よりひとりの女である。ドヌーヴはそれら全てを自然体で演じています。

 見知らぬ町でさまざまな人たちと出会い、ちょっとした言葉を交わしたりしながらだんだんと自分らしさを取り戻していくベティ。みじめさや悲しみも含めて年を取ることを自然に受け入れているさま、逆に何歳になっても人生の自由や喜びを堂々と受け取っていくさまを見ていると、心が広々とします。

 カトリーヌ・ドヌーヴだけに立っているだけですごい貫禄なのですが、どこかお茶目で可愛らしい。体のどこにも力が入っていない余裕、実に格好いいです。
 年をとる事も悪くないなと思わせてくれるさりげない良作です。
誰もが愛すべきおかしな人たち「ホテル・ファデットへようこそ」
ホテル・ファデットへようこそ
 フランスの田舎町を舞台に、共にフランスを代表する俳優であるドヌーヴとジェラール・ドパルデューの競演を楽しめるフランスご当地コメディ。

 ドヌーヴ演じるバルバラはかなり常識はずれの型破りなキャラクター。身勝手で自分の感情に正直で、適当なこと言ってキャパオーバーになったらそそくさとその場から立ち去ってしまう。
 というか、結局バルバラに限らず全員が共感しづらい個性強めのダメ人間揃いというこの作品。

 あまりの人々の大らかさ(というかテキトーさ)のために、さまざまな収拾のつかない事件が起こるのだけど、結局丸く収まってしまう。
まさにケ・セラ・セラ(イタリア語ですが)という感じ。

 責任感のありすぎる日本人が見ると、こ、これでいいのか!?と冷や汗をかく思いに駆られるものの、「大抵のことは大したことじゃない、人生全てなんとかなる!」と言う教訓を与えてくれる、ある意味貴重な作品と言えるかも。
自分の心に正直に生きる幸せを思い出させてくれる「神様メール」
神様メール
 実は神様は横暴で飲んだくれのどうしようもないオヤジで、日がなパソコンを操作して、人間に大小さまざまな不幸やアクシデントを与えたり、争わせたりして楽しんでいるのだ、というシュールな設定から始まるこの作品。

 横暴で残酷な父親に堪忍袋の緒が切れた神様の娘エアは、父親のパソコンを勝手に操作して、世界中の人々に「あなたの余命」を知らせるメールを送信してしまう!

 今世界中で起こっているあらゆる悲劇が「どうしようもない低俗なオヤジ」によって引き起こされているのだという強烈な皮肉。そして誰もが等しくいつか死ぬということを普段忘れたように生きているけれど、自分の命がほんとうに限りあるものなのだと具体的に知らされた時、人は何を考え、何をするんだろう?ということを追及したアイデアが秀逸。
 ファンタスティックな映像表現も素晴らしい大人の寓話です。

 ドヌーブは、この作品でエアに使徒のひとりに選ばれた女性で、余命を知って偽りの上品な奥様としての人生をかなぐり捨て、ゴリラ(比喩ではなく!)との愛を選ぶという、なんとも突き抜けた役柄を可愛らしく演じています。

十代の可憐なかわいらしさからエレガントで妖艶な女性へ。確かな演技力はもちろん年を重ねてからは大らかな包容力とユーモアという魅力も加わったカトリーヌ・ドヌーヴは、女性にとって素敵な年の取り方のお手本のような存在。紹介した作品以外にも見る価値のある作品がたくさんあるので、ぜひチェックしてみて。

Writer | 谷直美

映画と旅と赤ワインをこよなく愛するフリーライター。映画レビュー・コラムのほか、人物インタビューやイベント取材など幅広いジャンルで執筆中です。

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