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ガールズパワーが未来を変える!? 過酷な日常を生き抜く少女や女性を描いた映画

2019.10.11(Fri) | 上原礼子

国連気候行動サミットにて地球温暖化に対する感動的なスピーチを行い、一躍“時の人”となったスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんは現在16歳。今年のノーベル賞では、女性教育の必要性を訴えて平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんを抜く史上最年少の候補者といわれています。また、香港で「学民の女神」と呼ばれ、注目を集めるアグネス・チョウさんが活動を始めたのは17歳のとき。いつの世も、彼女たちのような勇気ある先駆者が“未来を変える”きっかけとなってきました。今回は、過酷な現実に直面しながらも必死に今を生き、未来に繋げようとする少女たち、女性たちの映画に注目しました。

『少女ファニーと運命の旅』ナチスドイツから逃げのびた実話
少女ファニーと運命の旅
1943年、第2次世界大戦のまっただ中、ナチスドイツの支配下にあるフランスで両親と引き離され、児童施設に匿われていたユダヤ人の子どもたちが中立国のスイス国境を目指して旅をする実話を元にした物語。

主人公のファニーは妹を含む9人の子どもたちと列車での移動の途中、ドイツ兵の取り締まりによって引率の大人とはぐれてしまいます。「あなたは頑固だからやり遂げられる」と、引率者からリーダー役に指名されたのがファニーでした。彼女は確かに頑固で、勝ち気で利発な少女ではあるのですが、13歳のその小さな肩が背負った使命はあまりにも酷。

ときには迷いも生じ、両親を思い出す心細い夜があり、強情な男の子にはキレることも。それにどんな緊迫した状況であれ、健気で無邪気な幼子たちは、小川があれば水遊びに興じ、廃墟の山小屋ではままごと遊びが始まります。ファニーはそんな年頃の子どもたちのリーダーなのです。また、ファニーが大切に持っている家族との思い出の品もポイントとなっており、これを巡る描写が観る者の涙を誘います。

なお、この少女ファニーは実在の人物で、ラストシーンにとても印象的な形で登場しています。
『ガザの美容室』女性たちの本音が飛び交う戦火の美容室
ガザの美容室
本作の舞台はパレスチナ自治区、ガザ。ロシア移民のクリスティンが経営する美容室は、離婚調停中の主婦や、結婚を控えた若い娘とその母親、臨月の妊婦など、今日も女性客で満員です。夫の処方薬で薬物中毒になった中年女性や、その友人で、女性しかいないのにヒジャブを被り続ける信心深い人もいます。

髪をセットしてもらう間、順番を待つ間に、それぞれが思い思いの時間を過ごし、世間話に花を咲かせます。その姿は、家族や知り合いの誰かにも似た女性たち。美容室のこうした1コマはどの国でも似たり寄ったりなのかと思いきや、一歩店の外に出れば、銃を持った男たちがウロウロ。やがて予告もなく停電が起こり、通りからは発砲音や爆発音が聞こえ、美容室は戦火の中に取り残されることに。

女性たちは必死で平静を装いますが、暑さもあってイライラが募り、家で待つ夫から電話がかかってきたり、妊婦が産気づいたり……。小さな美容室でも諍いが起きかけますが、そんなときに誰かが言うのです。「私たちが争ったら、外の男たちと同じじゃない」と。直接的に描かなくても、この空間から伺える戦火の激しさと見えてくる日常。映画の女性たちが、今このときもきっとガザにいるのです。
『マイ・サンシャイン』ロス暴動の中のある家族
マイ・サンシャイン
デビュー作裸足の季節でトルコの因習に抗う姉妹たちを描き、世界から絶賛を集めたデニズ・ガムゼ・エルギュヴェン監督による、1992年のロス暴動を背景にした物語。白人警官から集団暴行を受けたロドニー・キングの事件とともに暴動の引き金となったのが、黒人の少女ラターシャ・ハーリンズが雑貨店店主に射殺された事件でした。本作は、そのラターシャの一件から生々しく幕を開けます。

舞台となったサウスセントラルで、実の家族が逮捕されていたり、麻薬中毒者だったり、様々な理由から身寄りのない子どもたちを育てている女性ミリーを演じるのが、オスカー女優のハル・ベリー。乳児からティーンエイジャーまで、貧しいながらも誰もがその“家族”に居場所を見つけていた矢先、彼らも暴動の渦中へと巻き込まれていくことに。ミリーは自らも手錠をかけられ、隣人オビー(ダニエル・クレイグ)に助けられながらも、「子どもたちを助けに行く」と、とどまることを知りません。また、一番年長のジェシーが思いを寄せる家出少女は、どこかラターシャとも重なります。

エルギュヴェン監督が長らく熱望し、『裸足の季節』で大成功を収めたからこそ描くことができた1つの家族の姿と、その家族を守ろうとした女性の姿を見つめていただけたらと思います。
『ショート・ターム』同じ傷を抱えたケアワーカーと少女の絆
ショート・ターム
“戦い”は、居場所のないティーンエイジャー向けの短期保護施設“ショート・ターム12”でも毎日起こっています。20代のケアマネージャー、グレイス(ブリー・ラーソン)は今日も、同僚でボーイフレンドのメイソン(ジョン・ギャラガー・Jr.)とともに脱走を試みる少年サミーを追いかけて全力疾走、18歳の誕生日を迎えるマーカスの出所祝いパーティについて子どもたちの意見をまとめようとしています。

そんな中、新しく施設にやってきた少女ジェイデン(ケイトリン・デヴァー)と打ち解けそうになるのですが、彼女はある秘密を抱えており、それはまた、妊娠したグレイスが抱える深い心の闇とも関係していて……。

この作品の後、性被害者を演じたルームでオスカー女優となり、『キャプテン・マーベル』でスーパーヒーローを演じたブリー・ラーソンはいまや女性のエンパワーメントの象徴的存在ともなっています。彼女が注目されるきっかけになった熱演とともに、『ボヘミアン・ラプソディ』以前のラミ・マレックなど脇を固める俳優たちにも注目です。
『メアリーの総て』フェミニズムの魂を受け継いだ若き作家
メアリーの総て
『少女は自転車にのって』で戒律厳しいサウジアラビアで明るくたくましく生きる少女を瑞々しく描き出したハイファ・アル=マンスール監督が、ハリウッドの若手トップ女優エル・ファニングを主演に迎えた本作は、「フランケンシュタイン」の著者として英国文学史に名を残すメアリー・シェリーの波乱に満ちた半生の映画化。

フェミニズムの祖といわれた亡き母に憧れ、小説家を夢見るメアリーは妻子ある詩人パーシー・シェリーと出会い、情熱のままに駆け落ち。愛と放蕩の日々は束の間で、メアリーは幼い我が子を失い、パーシーは妹と関係を持ち、失意のどん底に。そんな中、退廃的で悪名高い詩人・バイロン卿の別荘での対話をきっかけに、メアリーは当時18歳で「フランケンシュタイン」を書き上げます。

しかし、死の影にとらわれ深い喪失を抱えた彼女が記した哀しき“怪物”の物語を、出版社や世間は“若い女性”らしくないと突っぱねます。実体験から生まれ、魂込めた著書を当初、自分の名で世に出せなかったメアリーの屈辱はどれほどのものだったでしょうか。なお、彼女同様に、バイロン卿に自著「吸血鬼」を“奪われた”ポリドリを『ボヘミアン・ラプソディ』のベン・ハーディが演じています。

本日、10月11日(金)は国連が定めた「国際ガールズ・デー」です。「性別」と「年齢」という二重の差別を受ける途上国の少女たちが直面する問題の解決に向け、世界各国が取り組むよう制定された日です。今回取り上げた映画の主人公たちや関わった製作者たちもまた、同じ思いで未来を変えようとしている、そんな気概を感じさせます。

Writer | 上原礼子

情報誌・女性誌等の編集・ライターをへて、現在はWEBを中心にフリーに。子ども、ネコ、英国俳優などが弱点。看護師専門誌で映画&DVDコーナーを14年担当したこともあり、医療や死生観、女性の権利などにも関心アリ。

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