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見逃せない!2019年を代表するミニシアター映画の名作たち[前編]

2019.12.11(Wed) | 松村知恵美

平成が終わり、令和が始まった2019年。日本、そして世界にも大きな変化があった年でした。

同様に、映画界にも大きな変化の波がありました。
2月行われた第91回アカデミー賞では、Netflixによって製作されたアルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA/ローマ』が、監督賞・外国語映画賞・撮影賞を受賞しています。
インターネットによって配信されるために映画が作られ、その映画が国際的な映画賞で高い評価を受けるというのは、10年前では考えられなかったことでした。

日本では、ミニシアターの数は減少しているものの、かつてミニシアターで上映されていたインディペンデント映画は、これまで以上に多くの観客に観られるようになりました。
これは、日本各地にシネコンが増えたこと、青山シアターなどの配信サイトが充実してきたことで、これまではミニシアターに足を運ばなければ観られなかった映画に、日本全国の映画ファンが気軽にアクセスできるようになったことが原因と言えるでしょう。ミニシアター映画ファンには喜ばしい時代となりました。

今回は、2019年に多くの観客からの支持を得た見逃せないミニシアター映画を2回にわたりご紹介します。2019年を代表するミニシアター作品の数々、ぜひご堪能あれ!

共同親権制度のため、DV父から逃げられない少年の苦悩を描く『ジュリアン』
ジュリアン
1月25日に公開された映画『ジュリアン』は、11歳の少年・ジュリアンの目を通して、暴力を振るう父親・アントワーヌと、彼から逃げようとする母親・ミリアムの姿を描いた物語。暴力を振るう父親の元から逃げ出した母と姉と共に逃げ出したジュリアンですが、共同親権を定められたため、隔週でアントワーヌと会うことになります。ミリアムに執着するアントワーヌはジュリアンからミリアムの居住地などを聞き出そうとするのですが…。
子どもを妻に会うための手段としてしか考えていない父・アントワーヌと、夫から逃げて心機一転新生活を始めようとする母・ミリアムの狭間で苦しみ、母を守るために父に嘘をつき続けるジュリアン。この映画では、子どもを守るために定められた共同親権制度の持つ問題点を静かに浮かび上がらせていきます。現代社会に一つの問題を提起したこの作品は第74回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞し、フランスでロングランヒットを記録しました。
ダリオ・アルジェントの名作にルカ・グァダニーノが挑んだ『サスペリア』はチャレンジに満ちた意欲作
サスペリア
1月25日に公開された映画『サスペリア』は、1977年に作られたホラー映画の名作『サスペリア』をルカ・グァダニーノ監督がリメイクしたAmazon Studios製作の話題作。ドイツ赤軍が跋扈する1977年のベルリンを舞台に、ダンス・カンパニーの内部で行われている呪術的儀式や魔女信仰を描いています。激しいコンテンポラリーダンスと連動しながら、目に見えないものに嬲り殺しにされるダンサーの姿など、グロテスクな映像も多く、チャレンジャブルな作品となっています。
主人公を演じるダコタ・ジョンソンのほか、クロエ・グレース・モレッツ、ミア・ゴスといった話題の若手女優らも多く登場。さらに注目して欲しいのは、物語の鍵を握るマダム・ブラン演じるティルダ・スウィントン。実は劇中で三人のキャラクターを演じています。特殊メイクで完全に別人となっていますが、ぜひどの役を演じているか確かめてみてください。また、レディオヘッドのトム・ヨークが初めての映画音楽に挑戦している点にも注目です。
1970年代のNYで育まれる、若き黒人カップルの純粋な愛『ビール・ストリートの恋人たち』
ビール・ストリートの恋人たち
2月22日に公開された映画『ビール・ストリートの恋人たち』は、無実の罪で投獄された黒人男性・ファニーと彼を一途に愛する幼なじみの恋人・ティッシュ、そして彼らを支える家族たちの静かな戦いを描いた物語。1970年代のニューヨークを舞台にしたジェイムズ・ボールドウィンの原作小説を『ムーンライト』でアカデミー賞作品賞を獲得したバリー・ジェンキンス監督が映画化しています。
留置所のガラス越しという過酷な環境の中で純粋な愛を育む若いカップルの姿は、尊くもロマンティック。ブルース発祥の地、メンフィスのビール・ストリートの名前を関するこの映画は、愛がいかに人間を強くするかを教えてくれます。ティッシュの母を演じたレジーナ・キングは、本作でアカデミー助演女優賞を受賞したほか、多くの映画賞に輝いています。
元祖“お笑い怪人”のコンビ愛に笑って泣ける『僕たちのラストステージ』
僕たちのラストステージ
4月19日に公開された映画『僕たちのラストステージ』は1930〜40年代に活躍したアメリカの人気コメディアン「ローレル&ハーディ」を主人公にした物語。全部で107本の映画に出演した二人は、日本では「極楽コンビ」として知られていました。映画では、かつて黄金時代を築いたものの落ち目になってしまった彼らが再起をかけて挑むイギリス巡業ツアーの様子を描いています。
やせっぽちのスタン・ローレルと太っちょのオリヴァー・ハーディを演じるのは、スティーヴ・クーガンとジョン・C・ライリーという二人の名優。特殊メイクを駆使して二人になりきり、見事に彼らのコントやダンスを再現しています。チャップリン、バスター・キートンと並び称される二人の舞台は、今見るととても新鮮。愛嬌たっぷりで、思わず笑顔になってしまいます。どんな苦境にあっても茶目っ気やユーモアを忘れず人を笑わせようとする元祖“お笑い怪人”の姿に、相方への強い思いとお笑いへの大きな愛を感じられる素敵な一作でした。
男たちの運命を狂わせる黄金の川。フランスの名匠がゴールドラッシュ時代を描いた『ゴールデン・リバー』
ゴールデン・リバー
7月5日に公開された映画『ゴールデン・リバー』は、アメリカがゴールドラッシュにわく1851年を舞台にした西部劇。とは言え、一般的なウェスタン映画とは一味もふた味も違った作品に仕上がっています。主人公は、シスターズ兄弟という最強の殺し屋兄弟。ウォームという男を殺すことを命じられ、大陸を南下していきます。シスターズ兄弟と彼らの連絡係・モリス、そしてウォームはあることをきっかけに、共に黄金を探すことになるのですが…。
原作に惚れ込んで映画化権を獲得したジョン・C・ライリーが殺し屋兄弟の兄を演じた本作。他にもホアキン・フェニックス、リズ・アーメット、ジェイク・ギレンホールと、実力派俳優たちが顔を揃えています。野望と欲望が支配するゴールドラッシュ時代のアメリカを斬新な視点で描いたのは、『ディーパンの闘い』でパルム・ドールを受賞したフランス人監督のジャック・オーディアール。ヴェネチア国際映画祭でも銀獅子賞(監督賞)を獲得しています。

前編となる本稿では、2019年にヒットした外国のミニシアター作品を紹介してみました。新旧の社会が抱えた問題点を描き出したり、かつての映画人たちの偉業に敬意を表しつつ新たなチャレンジに挑んだ作品など、いろいろな魅力を持つ作品が並んでいます。時間のある年末年始、ぜひこれらの個性あふれるミニシアター作品に触れてみてください。

見逃せない!2019年を代表するミニシアター映画の名作たち[後編]

Writer | 松村知恵美

家と映画館(試写室)と取材先と酒場を往復する毎日を送る映画ライター、WEBディレクター。2001年から約8年、映画情報サイトの編集者をやってました。2009年に独立し、フリーランスに。ライターとしての仕事の他、Webディレクションなど、もろもろお仕事させていただいています。

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