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見逃せない!2019年を代表するミニシアター映画の名作たち[後編]

2019.12.18(Wed) | 松村知恵美

2019年に公開されたミニシアター作品特集第二弾となる本稿。前回は海外の映画を中心に、話題を呼んだ5作品を紹介しました。今回は5作品の日本映画を紹介します。

人間ドラマから恋愛ドラマ、社会派サスペンスなど、今年は様々なジャンルの作品が話題を呼びました。
硬軟取り混ぜた見応えのある作品が並んでいますので、ぜひチェックしてみてください。

『デイアンドナイト』は山田孝之プロデュース、阿部進之介企画・原案の意欲作
デイアンドナイト
1月26日に公開された映画『デイアンドナイト』は、俳優の山田孝之がプロデュースを、阿部進之介が企画・原案を手がけた人間ドラマ。山田孝之と阿部進之介は定期的に脚本開発会議を開催し、作品のテーマを深めていったそう。山田孝之は作品には登場せず、オーディションの審査やスポンサーとの交渉などのプロデューサー業に専念しています。
物語で描かれているのは、「人間の善悪とは」。大企業の内部告発した父親が自殺し、実家に戻った主人公が父の隠された顔を知り、父の跡を追うかのように裏稼業に足を踏み入れていく姿を描いています。主人公が働く児童養護施設のオーナー・北村を演じる安藤政信、施設で暮らす少女・奈々を演じる清原果耶らの演技も印象的な本作。善悪とは何か、その境界線はどこにあるのかという問題を現代人に突きつける、俳優たちの意欲作です。
沖縄の離島を舞台に、ガレッジセール・ゴリが映画監督としての才能を見せつける『洗骨』
洗骨
2月9日に公開された『洗骨』は、沖縄の離島・粟国島い古くから伝わる死者を送るための風習“洗骨”のために集まった家族たちを描いた物語です。監督を務めたのは、ガレッジセールのゴリとして知られる照屋年之。もともと日芸の映画学科出身で、短編映画や自主映画などを制作してきた彼が、自身の出身地でもある沖縄を舞台に心にしみる物語を紡いでいます。
洗骨とは、風葬した死者の骨を何年か後に墓所から出して洗い浄め、再び埋葬するという風習のこと。母を亡くしバラバラになった家族たちが、4年後、洗骨を機に再び家族としての絆を強めていく姿が、美しい自然の中で描かれています。あの世とこの世はすぐ近くにあり、死者と生者はつながっている…。沖縄の人々の死生観が伝わってくる一作。物語を彩る沖縄音楽も優しく、照屋監督だからこそ描けた作品と言えるでしょう。
なぜ婚活するの?結婚したいと思ったら観て欲しい『美人が婚活してみたら』
美人が婚活してみたら
3月23日に公開された映画『美人が婚活してみたら』。不倫の恋を重ねて不毛な恋に疲れた美人が、婚活サイトやシングルズバーなどで婚活に挑む様子を描いています。婚活に励む美人を演じるのは、『走れ、絶望に追いつかれない速さで』の黒川芽以。誰もが振り返る美女ながらも、そこはかとなく淋しい生活を送る主人公・タカコをリアリティたっぷりに演じています。そして、タカコの婚活相手として、今を時めく中村倫也と田中圭が登場しています。
結婚を目的として男女が出会う“婚活”。効率がいいように思いきや、何かが足りない、満たされない…。そんなタカコを見守る既婚のケイコも、既婚者ならではの悩みを抱えています。タカコやケイコが抱える淋しさは、現代女性の多くが抱えているものなのかもしれません。美人だからっていいことばかりではないし、結婚したからって薔薇色の生活が待っているわけでもないのです…。婚活経験の有無にかかわらず、漠然と結婚したいと思っている人にもぜひ見て欲しい一作です。
ダメ男に恋するダメ女子が愛おしい。共感する女子続出のダメ恋愛映画『愛がなんだ』
愛がなんだ
4月19日に公開された映画『愛がなんだ』は、リアルな恋愛映画の旗手として知られる今泉力哉監督が手がけた恋愛映画。大好きなマモちゃんのためなら生活をすべて犠牲にしても厭わない、好きな人至上主義なテルコと、自分の都合のいい時だけテルコを呼び出して利用する無自覚系クズのマモル、自分を好きだという青年・ナカハラを自分の家来のように扱う葉子。問題だらけの登場人物たちが、痛々しくも愛おしいダメ恋愛劇を繰り広げます。
本作のメイン館となったテアトル新宿には20〜30代の女性がつめかけ、異例のロングランヒットに。岸井ゆきの演じるテルコにダメ出しをしつつも共感する女子が続出したのです。マモルを演じる成田凌、葉子を演じる深川麻衣、ナカハラを演じる若葉竜也ら、脇役陣の演技も素晴らしく、いろいろな視点からも楽しめる作品となっています。観た後に友人と恋愛について語り合いたくなるような、イタいけれども愛おしい等身大の恋愛映画です。
2019年一番の問題作。現代日本に巣食う闇に切り込んだ映画『新聞記者』
新聞記者
6月28日に公開された映画『新聞記者』は、政府が隠す権力の闇を暴こうとする一人の女性新聞記者の姿を描き、大きな物議を醸したポリティカル・サスペンス。公開当初は政治意識の高い中高年層を中心にヒットしていたものの、SNSなどで評判が広まりロングランヒットとなりました。上映終了後には拍手が起こるなど観客からも高い支持を受け、何度も足を運ぶリピーターも多かったそう。
東京新聞の記者である望月衣塑子の同名ノンフィクションを原案とする本作で描かれるのは、政府の闇に迫ろうとする女性記者と、内部告発を決意した内閣情報調査室の若手エリート官僚の姿。韓国出身の女優シム・ウンギョンと松坂桃李が名演を見せています。話題の事件や社会問題を思い起こさせるエピソードも登場している本作、時間のある年末年始にじっくり観たい問題作と言えるでしょう。

2019年に話題になったミニシアター作品、いかがでしたでしょうか?

今年はこれといった偏りがなく、様々なジャンルがまんべんなく並んでいるように思います。その時代時代の世相が如実に反映しているミニシアター映画ですが、社会の変化のスピードが早すぎて、ミニシアター映画にはその変化の波が追いついていないのかもしれません。もしくは、どんなに社会が変わっても、人間の本質や人間が映画に求めるものは変わらないということなのかもしれません。

見逃せない!2019年を代表するミニシアター映画の名作たち[前編]

Writer | 松村知恵美

家と映画館(試写室)と取材先と酒場を往復する毎日を送る映画ライター、WEBディレクター。2001年から約8年、映画情報サイトの編集者をやってました。2009年に独立し、フリーランスに。ライターとしての仕事の他、Webディレクションなど、もろもろお仕事させていただいています。

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