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青山シアター物産展/東海編

2020.01.15(Wed) | 仲谷暢之

青山シアター内にある日本全国で撮影されている映画をエリアごとにご紹介している「青山シアター物産展」。
第4弾は東海編と題して、愛知県、三重県、岐阜県で撮影された5作品のご当地映画を紹介します。

『ゲロッパ!』
ゲロッパ
 愛知県蒲郡市各所がロケ地として使われている「ガキ帝国」や「岸和田少年愚連隊」、「パッチギ!」などの井筒和幸監督作品。
 数日内に収監される予定のヤクザの組長・羽原大介にはどうしても叶えたい2つの夢が。一つは25年会っていない生き別れになった娘に会うこと。もう一つは、熱狂的な大ファンであるナンバーワン・ソウルブラザー、ゴッドファーザー・ソウル、ミスター・ダイナマイトなど異名を持つソウルシンガー、ジェームズ・ブラウンの名古屋でのコンサートに行くこと。その願いのうち、なんとか一つを叶えようと長年の弟分である金山が、来日中のジェームズを組長に会わせようと舎弟の太郎、晴夫、健二たちに宿泊中のホテルに忍び込ませ連れて来るように命令。が、彼をよく知らない太郎たちは、たまたまモノマネショーで来日していたジェームズのそっくりさんを拉致ったことから上へ下への大騒動に・・・という話。ところどころ暴力的シーンはあるものの、全編これ、悪ふざけが散りばめられたコメディ作品として楽しむべき内容です。

 とにかく今はあまり動かれることのない西田敏行が演じるジェームズ・ブラウン大好きヤクザの組長がノリノリ過ぎるほどノリノリで、クライマックスではこれをやりたかったためにこの役を引き受けたんじゃないやろうかと思うくらいのショーマンシップを発揮しております。その姿を見ると、のちに北野武監督の「アウトレイジ・ビヨンド」で策士の花菱会若頭・西野を演じるとは想像がつかないほど(しかも今作の方が関西弁がうまい)。
 そして舎弟役として大騒動のきっかけを作る太郎と晴夫を演じるのが山本太郎と桐谷健太というかつての「難波金融伝・ミナミの帝王」新旧舎弟コンビ。特に、現在、政治活動をしている山本は元々が役者として達者だっただけに、関西弁で生き生きと演じている姿と桐谷との掛け合いは今となっては貴重。さらに井筒監督ならではの藤山直美、ナインティナイン・岡村隆史、寺島しのぶ、トータス松本と言った豪華なチョイ役も見逃せなく、しかもしっかり爪痕残しているのはさすが。
 何よりこの映画の大きな役割を果たしているのが物語の重要な舞台となるラグーナ蒲郡(ラグーナテンボス)。当時は、営業時間を短縮するほど撮影には全面協力したそうで、その結果、この映画によって施設を知った人も多く(自分自身もそうだった)、公開後、観光客も増え、協力した効果は十分あったみたい。

 現在、長崎県の佐世保にあるエイチ・アイ・エスが運営するハウステンボスとの姉妹施設として、かなり変貌を遂げているので、当時の風景が映像として収められている上でも貴重な作品だと思います。
 さらにジェームズ・ブラウンの「Sex machine」や「It’s a mans world」といった曲など珠玉のソウルミュージックが贅沢に使用されているのも日本映画では珍しく(今は権利関係がさらに大変になっているので)、サントラは必聴ですよ。
『WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~』
WOODJOB!
 つい録画してまで「人生の楽園」というIターンやUターンで田舎暮らしを実現させ、セカンドライフやスローライフを謳歌している方々の暮らしぶりに密着した番組を見て、その度に少しだけそういう生活もいいなぁと思ったりする反面、雑誌やネットで田舎暮らしの闇情報を知ったりすると、やっぱり深夜まで電気が煌々とついていて、24時間オープンしているお店が近所にあってという生活じゃなきゃ、やっぱり無理やなぁと現実に引き戻される自分にとって今作は、ある意味覚悟を持って観賞させていただきました。
 大学受験に失敗し、恋人とも別れ、高校卒業後の進路も決まっていない主人公、勇気は、パンフレットの女性に会いたいという軽い気持ちで1年間の林業研修プログラムに参加することに。向かった先は、携帯電話も通じないような山に囲まれたドがつくくらいの田舎(撮影されたのは三重県美杉町)。
 都会との環境の違い、そして過酷な林業の現場に耐えきれずに脱走しようとする勇気。しかし、先輩たちの山に対する尊敬と畏敬に触れるうち彼の中で少しづつ何かが芽生えてくるというお話。
 染谷将太が勇気を演じているんだけど、これがもういかにも現代っ子。常に浮ついた感じでチャラく、見ているこちらもこいつ本気でイラつくなぁと思わせてくれるグッジョブぶり。で、そんなイラつきを代弁してくれるのが彼の教育係り兼研修先としてイヤイヤ引き受ける伊藤英明演じるヨキ。「海猿」シリーズで、肉体派俳優を確立した感のある彼が今作でも、山で働く男として都会育ちのもやしっ子を厳しく鍛えるグッジョブを発揮しております。イケオジなのにブシュッ手鼻を噛むわ、走るトラックに全速力で乗り込むわ(このシーン何気に凄い!)、何十メートルもある大木に登るわ、伐採するわ、優香演じる嫁や町の女性に有り余る性欲をぶつけるわ、神々しいまでのふんどし姿で動き回るわと、勇気が“静”なら、完全“動”を体現しまくってます。

 そんな水と油のような二人ですが、周りの人たちとのふれあい、経験、エピソードの積み重ねで徐々に互いを理解していくプロセスの描き方はさすが「ウォーターボーイズ」や「スウィングガールズ」「ダンスウィズ・ミー」などでもその腕を振るった矢口史靖監督だなぁと。さらに子どもたちの使い方や、ちょいちょい挟んでくる伏線的小ネタもにんまり。それに田舎暮らしや山の仕事もただ美化するのではなく、抱えている問題や闇(噂の広がりやら、集落の年功序列、外部者や未婚女性への偏見、動物ネタなど)をもちゃんと描いてバランスを取っているのも素晴らしいです。が、見終わって、個人的には田舎暮らしはやはり向いていないと実感しました。
『クハナ!』 
クハナ!
 地方創生ムービー第1弾として、“その手は桑名の焼き蛤”という言葉でもおなじみで「東海道中膝栗毛」の中でも弥次さん喜多さんが舌鼓を打った蛤が名物とされる三重県桑名市の有志たちが小説家、劇作家、演出家・脚本家など多彩な活動をしている秦建日子監督とタッグを組んだのが今作(ちなみに第2弾は青山シアター物産展/関東編でもご紹介した、栃木県宇都宮市を舞台にした「キスできる餃子」)。

 桑名市に住みながらなんとか町おこしをし活性化を図りたいと思っていた有志たちがあるブログを書いたことがきっかけとなって、秦監督と縁が広がりやがて地元を舞台にした映画を作ろうとプロジェクトが発足。そこから紆余曲折、艱難辛苦を伴いながらもなんとか資金を募り、住んでいる人しかわからないような自己満足な内容ではなく、誰が見ても楽しめ、さらにメジャー感を備えた、そして見終わった後に舞台となった桑名市に足を運んでもらえるような内容を目指し完成させた、昨今多々ある町おこし映画のお手本のような作品。
 人口減少や、少子化で廃校が決まった小学校に通う小学生たちが、新しく赴任してきた元ジャズプレイヤーの先生の勧めで最後の小学校生活の記念にとジャズのビッグバンドを結成することに。大人たちの抱える問題や、級友の転勤、楽器のアクシデントなど苦労しながらもビッグバンドKUHANAは、なんと県大会を勝ち抜き、東海大会の出場権を得るが本番直前、トラブルが発生する・・・。

 「ジャズやるべ」は「スウィングガールズ」だけど、こちらは「うちら、ジャズ部はじめました」。オーディションで選ばれた子どもたちが地元のプロジェクトメンバーの自宅に併設したというスタジオを練習場所にし、地元の音楽教室やミュージシャンがボランティアでコーチし、まさに大人も子どももジャズ部に入部しつつレッスンを積み重ね、映画の中でも実際に演奏しているのが見どころです。
『映画 みんな!エスパーだよ!』 
みんな!エスパーだよ!
 若杉公徳のコミックを園子温監督がテレビ化し、深夜ドラマとしてはクセ強エスパーたちの活躍にどぶろっくのネタなみの下ネタが散りばめられ人気爆発。ついに映画化されたのが今作。

 数百年に一度起こる天体配列の影響を受けたその日、偶然にもある条件を満たしたものだけが突然エスパーになってしまった頭ん中、常にエロで満杯のチェリボ高校生、鴨川嘉郎と同級生や近所の人たち。そんな彼らにある危機を持って近づく浅見教授と助手の秋山。彼が言うにはかつて、アメリカで超能力者が多数発生した時、悪のエスパーたちによって全員が惨殺された事件「ダルースの惨劇」が再び、愛知県東三河地区に位置する豊橋市と豊川市で起ころうとしているゆえ、君たちが立ち上がり世界を救うのだと。最初は信じなかったエスパーたちも次々と地元で起こる驚愕の「人類エロ化計画」についに立ち上がることに。はたして彼らは悪のエスパーから世界を!いや、東三河を救うことができるのか!?という話。

 先に紹介した「WOOD JOB!」では都会育ちのチャラい高校生を演じていた染谷将太が今作では24時間エロ妄想で頭も股間もパンパンの童貞高校生を演じていて、こちらでも大変ナイスなグッジョブを発揮。
 その昔、60年代~70年代、さらに80年代初期には東映や日活などで艶笑喜劇というジャンルが多々あったけれど(最近では松尾スズキ監督・主演の「108海馬五郎の復習と冒険」なんかそう。でもこちらはどちらかといえばイタリア式艶笑コメディ的)、ここまで突き抜けた「ハレンチ学園」や「パンツの穴」的ジュブナイル目線のエロは久々かも。
 そんなジュブナイル艶笑喜劇を池田エライザや真野恵里菜、高橋メアリージェーン、筒井真理子、神楽坂恵といった面々がヌードはなしとしても、下着姿やエロスワード、エロスフェイスなどを存分に発揮しているのが最高。それを園子温監督が生まれ育った豊橋市・豊川市で繰り広げるというのも凄い凱旋。
 豊橋市公会堂の階段を使っての「人類エロ計画」のシュプレヒコールや豊橋駅前の玄関口や、商店街での下着男女の闊歩シーンなんて、この時代、撮影をよく許してくれたなぁと地元の方々の懐の深さと監督のある意味歪んだ郷土愛にカンパイです。あらゆるエロ妄想を引っさげて東三河地区のロケ地を訪問するのも新しい観光の楽しみ方かもしれないです。
『君の名は。』
君の名は。
 いまだ上映され大ヒットしている「天気の子」の記憶も新しい、新海誠監督の歴代興収第4位という大大大ヒットアニメ作品(ちなみに1位は「千と千尋の神隠し」2位は「タイタニック」3位は「アナと雪の女王」)。
 1000年に1度の彗星が、1か月後に迫る日本。岐阜県は飛騨の田舎町に暮らす女子高生の三葉はある日、自分が都会に暮らしている少年になった夢を見る。一方、東京在住の男子高校生・瀧もある日、自分が田舎町に生活する少女になった夢を見る。それは1週間に2~3度の頻度で起こり、その行動の違いが実生活に影響を持つようになり、入れ替わっていた時の記憶を互いに記録することに。徐々に相手を意識するようになった矢先、突然入れ替わりがなくなるように。
なんとなくすっぽりと穴の空いたような日々を送る中で、瀧は記憶を頼りに岐阜県飛騨のその田舎町へ彼女を訪ねに行くが・・・。
 オープニング、三葉と瀧のモノローグは、まるで三島由紀夫の戯曲「黒蜥蜴」のワンシーンの掛け合いのようなケレン味をもって「君の名は。」というタイトルとRADWINPSの曲へとなだれ込むことのいきなりの高揚感。新海監督は「言の葉の庭」も「天気の子」もそうだけど、ツカミがいちいちうまいです。さらに30分ほどしてから、実は自分たちが入れ替わっていることを知るシーンは、ついに「前前前世」が流れ、長いプロローグからいよいよ本題へと入っていく高揚感Vol.2として名場面。

 人生が入れ替わることによって、田舎での閉塞的な生活、神社の娘に生まれ育ったゆえの業に鬱屈していた彼女が瀧になることによって刺激をインプットし、反対に瀧が三葉になることによってジェンダーを改めて知り、互いの人生を捕捉していくことが、のちに薄れていく記憶を越える深い絆とよすがとなってくるのが素晴らしい(ただ後半は“?”な設定の甘さも感じるけれど)。
 個人的に面白いのは、入れ替わると、瀧は毎度三葉の胸を、三葉は瀧の股間を確認するところ。年頃の子たちなら当然ですね。とはいえそれ以上になると別の話になるからしょうがないですが・・・。

 さて、アニメ映画である今作もロケ地というのがあり、三葉が住むのは岐阜県飛騨の糸守地区。ただ糸守は架空の町ですが、飛騨古川駅をモデルにした場面や、宮水神社のモデルとなったと言われている気多若宮神社、飛騨市図書館はリアルな描写で登場し、その存在感をしっかり焼き付けてくれています。岐阜ではないけれど、瀧の住む東京の新宿駅や歌舞伎町、四谷駅などの描写もあり、チラシやポスターにも描かれている東京四谷の須賀神社の階段は今も「君の名は。」の聖地として人気スポットになっているそう。

ほかにも岐阜の金華山ロープウェーが登場する「ルドルフとイッパイアッテナ」や、全身にやけどを負いながらもピアニストとしての夢を追い続けるヒロインをめぐる橋本愛主演のミステリー「さよならドビュッシー」は、名古屋市役所や名古屋芸術大学、明治村で撮影された作品。
 園子温監督がEXILEのAKIRA主演でガンになった父と息子を描いた「ちゃんと伝える」は故郷である東三河地区にある豊川稲荷門前町や蒲郡市民病院、蒲郡市斎場などで撮影。ちなみに牛川の渡しや朝倉スマートボールは「みんな!エスパーだよ!」でもロケ地として使われていますが、全く違うベクトルで撮影されているので、青山シアターで見比べるのも面白いと思いますよ。

Writer | 仲谷暢之

ライター、関西を中心に映画や演劇、お笑い、料理ネタなどなどいろいろ書いてます。

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