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青山シアター物産展/関西編

2020.01.29(Wed) | 仲谷暢之

青山シアター内にある日本全国で撮影されている映画をエリアごとにご紹介している「青山シアター物産展」。
今回は2年ぶりの続編で1月31日から公開される「嘘八百 京町ロワイヤル」を含む、僕の地元でもあります関西で撮影された5作品のご当地映画を紹介します。

『嘘八百 京町ロワイヤル』
嘘八百2
 2018年の新春に公開され、ヒットしたお宝コメディ「嘘八百」(「嘘八百」やけど嘘はつきません、大阪舞台のリアルな映画5本で紹介)の第2弾。前作は中井貴一と佐々木蔵之介の古美術商と贋作名人による“幻の利休の茶器”をめぐって、古墳群で世界遺産にも認定された大阪は堺を舞台に、だまし合いバトルをコッテコテに描いたものでしたが、今回は利休の茶の湯を継承し、天下一と称された武将茶人“古田織部の幻の茶器”を巡り、京都を舞台に、謎の美女や悪徳骨董商に対してコンゲームを繰り広げると言うもの。
 中井貴一と佐々木蔵之介のバディムービーとして2作目にして息もピッタリ。さらに今回はマドンナ的役割として広末涼子が絡んでくるんですが、これが「ルパン三世」の峰不二子的存在でもあり、スティーブ・マーティンとマイケルケイン主演の今から30年ほど前の映画でのちにミュージカルにもなった「ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ」と言う映画で二人を手玉にとるヒロインを思い出したり。とにかく肩の力を抜いて楽しめる“ド”コメディ。
 前作から引き続いて登場する、佐々木蔵之介の妻役の友近の、広末涼子に対するジェラシー演技や、中井貴一の娘役、森川葵のキュートさとしっかりさを併せ持ったお姫感や、贋作仲間の坂田利夫、木下ほうか、宇野祥平らの抜けた演技(特に坂田利夫がちょっとこれってもしやリアルなの?と思えるような佇まい)、学芸人役の塚地武雅の歴史オタぶりと、脇を固めるキャラも健在。
 今作では加藤雅也と竜雷太という関西人コンビがヒールとして抜群の存在感を醸し出しており、京都の持つ“闇の部分”をしっかり浮かび上がらせてます。さらにNHKの連続テレビ小説「なつぞら」で一躍注目された山田裕貴が苦悩する陶芸王子として出演しているのも必見。
 前作同様、堺市でのロケーションに加えて、京都では新大宮商店街や東本願寺の庭、渉成園、町家や陶芸教室などが登場し、関西ではおなじみのラジオパーソナリティにして映画評論家の浜村淳や漫才師、矢野・兵動の矢野勝也もちらりと顔を出しているのも関西人にとっては嬉しいかも。
 前作を見て、これは「男はつらいよ」みたくシリーズ化されたらいいなぁと思っていましたが、今作を見て寅さんよりも菅原文太と愛川欽也コンビで全10作作られた「トラック野郎」シリーズになればいいなぁと確信。次は滋賀を舞台に、朝の連続テレビ小説「スカーレット」の戸田恵梨香が女贋作師として登場するとか、神戸を舞台に片岡愛之助と藤原紀香夫婦が怪しい骨董コレクターとして登場とか、奈良を舞台に尾野真千子(青山シアターでは奈良を舞台にした「殯の森」が配信中)が気の強い骨董市の女主人をやるとか、和歌山を舞台に坂本冬美と富司純子が母娘で陶芸家として出るとか、もちろん大阪万博も視野に入れてインバウンドネタで海外の女優をヒロインとして迎えて欲しいです。

嘘八百 京町ロワイヤル』 1.31(金)公開
『細雪』
細雪
 関東大震災後、関西に移り住んだ文豪 谷崎潤一郎がのちに夫人となる森田松子とその妹たちをモデルに、第二次世界大戦中に書き上げ、戦後発表した小説を名匠 市川崑が1983年に映画化したのが今作。
 昭和10年代、大阪は船場の大店に生まれた四姉妹。三女・雪子の見合い話を中心に四季の移ろいの中で繰り広げられるあれやこれや。
 関西出身の市川崑監督、念願の映画化だけあって気合いと美意識が画面の隅から隅までくまなく発揮されています。小説は上・中・下と長編ゆえに大胆な脚色が施され、結果、四姉妹同士の心情やどこか儚げな人生が浮かび上がり、さらに長女に岸恵子、次女に佐久間良子、三女に吉永小百合(本当に美しい!)、四女に古手川祐子と、当時の豪華すぎる女優たちを配したことによって、それぞれの個性を輝かせており、まさに競い合うという言葉がぴったり。
 個人的に好きなのは1週間撮影して、色合いやライティングが気に入らないと、すべてイチから撮影し直したというオープニング、花見を楽しむ前の料亭でのシーン。四姉妹たち一堂が会する総見的な場面でもあり、ここでの会話のやり取りと、これからの物語の展開を垣間見せるのだけど、それぞれの性格の違いがここでわかるのが素晴らしい。そして外の桜の色が障子越しに外光として、あり得ないくらい過剰に映りさし込んでおり、監督の確固たる美意識が存分に発揮されていてこれまた素晴らしい。さらに京都の平安神宮や、大沢池、原谷苑での桜見物に講じる四姉妹たちの姿に、シンセサイザーで編曲されたヘンデルの「オンブラ・マイ・フ」(実は予算が少なくなりオーケストラではなくこのバージョンになったそうな)がかえって不思議な高揚感を与えてくれる。ここまで14分余りで一気に見せ、第二次世界大戦前の、まだ日本文化の豊かさが残る時代の一瞬を切り取ってくれている。
 この後、前記した三女、雪子の見合い話を軸に長女、鶴子一家の東京行き、次女、幸子の姉妹に振り回される模様と旦那に浮かぶ浮気疑惑、四女、妙子の当時としては大胆な女の自立と、身分違いの恋が繰り広げられるのだけど、情の深さ、可愛さ、がめつさ、したたかさ、謙虚さに反するがめつさといったものを全部ひっくるめた関西の匂いというものを市川崑監督が四姉妹に託しているのが本当に面白い(関西弁のアクセントは微妙なのは仕方ないけれど)。そしてあれやこれやあった後のスンッとしたラストの秀逸さ。小説のページをめくるように見て欲しい逸品です。
『阪急電車 片道15分の奇跡』
阪急電車
 関西人にとって、ちょっとよそ行きな路線というイメージが昔からある阪急電車。制服に半パン、帽子をかぶった小学生が乗ってるとか、阪急百貨店やブランドもんの紙袋を下げた人が多いとかと、記号的なポイントはもちろんだけど、やはり阪急東宝グループの創始者、小林一三のイメージが強いかもしれないです。そんな阪急電車の中でも今津線は、西宮北口から宝塚歌劇団のお膝元、宝塚までを結ぶ全8駅の片道15分、ハイソな部分とジモティ部分がいいバランスを保つ短路線で、その沿線に暮らす人々の人生スケッチを描いた有川博原作小説を映画化したのが今作。
 在阪民放局が垣根を取っ払って、関西を盛り上げようてなコンセプトで協力して制作しただけあって、キャスト、ロケ地、キャンペーンにものごっつ力が入っておりました(完成披露試写会は映画イベントをやるのは初の、宝塚大劇場でなんと開催!)。なにせ今津線を含むかなりニッチなエリアを舞台にしているので、関西人でも実はよくこのエリアを知らないという方も多いのです。とはいえ、公開すると京阪神で大ヒット。当時の東宝宣伝マンがものすごく喜んでいたのを覚えております。
 キャストも豪華で中谷美紀(同じ兵庫県を舞台にした繕い裁つ人もおすすめ)、宮本信子、戸田恵梨香、有村架純、鈴木亮平、玉山鉄二、芦田愛菜(可愛すぎる!大阪でロケしている円卓~こっこ、ひと夏のイマジン~もぜひ)、南果歩、勝地涼、谷村美月、相武紗季などが阪急電車を舞台にグランドホテル形式でエピソードを紡んでいくのですが、あえて書き出しませんが、関西出身者が多いのも魅力で生きた関西弁が聞けるのも嬉しい。
 会社の後輩に婚約者を奪われ、その彼にもドン引きするようなこと言われたOLに中谷美紀。引き下がる条件にその結婚式に招待しろと迫り、ウェディングドレス姿で列席する復讐女というある意味、性格的、コンプライアンス的にギリギリの役柄をリアリティを持たせるその存在感はさすが!そんな彼女を救うきっかけとなるのが、宮本信子演じる嫁との関係がうまくいっていない老婦人。恋人のDVに悩む女子大生に戸田恵梨香、大学合格をあることで頑張り倒す女子高生に有村架純、セレブおばはんたちに巻き込まれるごく普通の主婦に南果歩など、それぞれがそれぞれ悩みを抱えながらもあるきっかけやふとした瞬間に解放される展開は阪急電車ならではだなぁと。阪神電車ではこうはいかないなぁと(すんません)。
 実際に阪急電車全面協力のもと、臨時電車や絶妙な時刻表の合間を縫って撮影された映像は説得力あるし、あの駅にあの女優さんがいたんだと思うと、関西在住の方なら今更ながらロケ地巡りをしてみたい衝動に駆られるはず。
『トリガール!』
トリガール
 琵琶湖で毎年開催される「鳥人間コンテスト」は気がつけば子どもの頃からやっていた。夏になれば関西の水がめで大勢の人が人力飛行機に乗って飛距離を競っているというのが刷り込まれている。そりゃあすでに40年以上続けられている大会だし(うち2回は台風と経済事情の悪化で中止)、鳥人間コンテストの年表もしっかり刻んでいるわけで、その間に日本全国のみならず、海外の大学や、企業、市民サークルが数多生まれ、技術、造形、飛行力にしのぎを削り、鳥人間コンテストのために青春や人生をかけているわけで、そのチームの数があるだけそれぞれ物語もあるわけで・・・今作はそんな鳥人間コンテストにかける青春を描いた「100回泣くこと」や「デビクロくんの恋と魔法」などの中村航の小説を映画化したもの。
 一浪で理系の大学に入学したゆきなは、メガネ男子ばかりの理系の癖の強い乗りに戸惑う中で、イケメン先輩に一目惚れ。そんな彼に「体がいい!」という言葉で誘われて人力飛行サークルに入部。先輩とコンビを組んで鳥人間コンテストへのタンデム出場を目指すも、ひょんなことから組むことになったのは、自意識過剰で自己中先輩・坂場!そんなはずじゃなかったのにと思うゆきなだったが、生来の負けず嫌いの性格が逆に彼と張り合い、本気で飛行パイロットとして向き合うという物語。
 何と言ってもゆきな役の土屋太鳳がいい(この秋、帝国劇場で公演される「ローマの休日」のアン王女役も楽しみ)!青春コメディあるあるな過剰なはっちゃけぶりを見事に体現、コケティッシュという表現がぴったり。某監督の演出のような無理やりやらされてる感のある若手女優さんのはっちゃけは逆に可哀想に思えるのだけど、実話を基にした舞台化の映画化!「前田建設ファンタジー営業部」が公開されたばかりの英勉監督の塩梅のいい演出で土屋太鳳が“起きてます!”。さらに男前やのに毎作品ごとに顔面博覧会ぶりが楽しめる間宮祥太朗とのコンビネーションも抜群だし、トレーニングシーンの体を張った頑張りや、ゲームセンターで見せるダンスのキレはさすが高校から創作ダンスで全国大会に出場し、日女体大の舞踊学専攻を学んでいただけある!
 クライマックスは、なんといっても琵琶湖での実際の鳥人間コンテストの設営飛び台での撮影シーン。大会が終わって、映画のために解体するのを延長したというだけあってリアリティたっぷり。しかもかなりの高さから人力プロペラ飛行機って飛んでるんだなあと再認識。もし自分なら完全尻込みしてしまう。もちろん飛行シーンはCGを組み合わせながら描いているも、狭い運転席の中でサウナ状態の中、汗だくでペダルを漕ぎながらのセリフのやりとりも、実際もこんなんだろうなぁと思う臨場感が味わえ、アオハルムービーとして最高です。
 あと、滋賀県と言えば、全国的に有名なゆるキャラセレブ、ひこにゃんもカメオ出演しているのも嬉しいです。
 ちなみに同じ琵琶湖が重要な場所として登場する万城目学原作パワースポットアクション映画偉大なるしゅららぼんと併せて見ると、さらにマザーレイクの神秘と雄大な魅力を味わえること間違いなし。
『マンハント』
マンハント
 「男たちの挽歌」「ミッション:インポッシブル2」「レッドクリフ」シリーズと、漢映画といえばのジョン・ウー監督が、彼が大好きな高倉健主演の1976年公開の「君よ憤怒の河を渉れ」をリメイクしたのが今作。
 日本で、しかも大阪を中心に3ヶ月の大規模な撮影を行うという情報を知った時は、大阪人だけにかなりテンションが上がったものの、完成し公開された作品を見たあとは思わず「・・・」という気持ちに。高倉健主演作もかなり荒唐無稽な印象を受けたけれど、リメイク版も荒唐無稽を越した滑稽無双な印象をものすごく抱いて以後、再見する事を封印していたのだけど、今回取り上げるに当たって“落ち着いて”見直したけれど、やはりいろんな意味ですごい映画だなと再認識。
 顧問弁護士として天神製薬の顧問弁護士として契約しているドゥ・チウが列席した次期社長の新薬開発責任者就任パーティーの翌日に、死体で発見された社長秘書の犯人として容疑をかけられたことから逃亡犯として追われることに。ひょんなことから知り合った謎の女性や、途中から彼の無実を信じる捜査一課の矢村刑事とともに、真実を迫っていくというもの。
 リドリー・スコット監督の、大阪が舞台の映画「ブラック・レイン」は当時、道頓堀の戎橋(通称ナンパ橋・ひっかけ橋と言われていた)のたもとにあったキリンビル大阪が撮影に使われ印象的だったけれど、今作はあべのハルカスが製薬会社天神製薬本社として使われ、展望台では華やかパーティーを展望台で撮影しており映像では「ブラック・レイン」のそれに匹敵するほど強烈なインパクトを残していて嬉しいし、近鉄上本町駅では殺人犯として追われる主人公の国際弁護士ドゥ・チウが電車を避けながら線路を走りまわるシーンは近鉄電車史上初めての本格的な撮影だったそうで、これまたあのホームが!とさらに嬉しかった。でも、中之島の堂島川では水上バイクのチェイスシーンや大阪城を望む新鴫野橋では急にだんじりが走り回る場面は、さすがに無理あるなぁ感がすごくて気持ち的にどんどん冷めていく自分が。しかもそういった場面のところどころにジョン・ウー印ともいうべき、鳩が飛び、スローモーション多様、飜るコートというこれまでの作品にも登場するお約束が披露されると“あぁそんなサービス精神を大阪で披露しはったか・・・”と気恥ずかしさを覚えてしまったり。
 それでも娯楽作としては楽しめるし、チャン・ハンユーと福山雅治はじめ役者陣の熱演は凄いし、大阪でこういった大規模な撮影とアクションが繰り広げられたことは誇りに思います。さらにこれから2025年に万国博覧会を控える大阪でいろんな邦画、洋画を撮影してくれたら、盛り上がるんじゃないかなぁと期待。その礎の一本として今作は記憶されるべき作品だなぁと受け入れることにします。

青山シアターにはほかにも、今となっては残念ながらトラブル系役者が大挙出演していた「パッチギ!」(作品は名作)やその続編「パッチギ! LOVE&PEACE」、周防正和監督の和製ミュージカル「舞妓はレディ」や宮藤官九郎脚本のドタバタコメディ「舞妓Haaaan!!!」、高倉健の遺作となった雲海に包まれた竹田城が印象的な「あなたへ」、滋賀県を舞台に北村匠海と浜辺美波が初々しい「君の膵臓をたべたい」、京都を舞台に福士蒼汰と小松菜奈の淡く切ないラブストーリーの「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」、戦国時代にタイムスリップした女性を描いた「本能寺ホテル」といった作品が。さらに「ゴジラ」シリーズも「ゴジラvsスペースゴジラ」、「フランケンシュタイン対地底怪獣」、「ゴジラvsビオランテ」、「ゴジラ×メガギラス G消滅作戦」、「ゴジラvsメカゴジラ」、「「ゴジラ FINAL WARS」といった作品に破壊される街などで関西が数多く登場してますのでぜひチェックしてみてください。

Writer | 仲谷暢之

ライター、関西を中心に映画や演劇、お笑い、料理ネタなどなどいろいろ書いてます。

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