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これからの日本映画界を牽引する注目の女性監督による作品5選

2020.02.05(Wed) | 谷直美

 ここ数年、ハリウッドでは映画製作者のジェンダーバランスがたびたび大きな話題になっています。日本映画界においてもまだまだ男性優位で女性監督は数少ないのが現状ですが、そんな中で奮闘する注目の女性監督にスポットを当ててみました。

大久明子監督「勝手にふるえてろ」
勝手にふるえてろ_poster
 1999年「意外と死なない」でデビュー以後、人生に不器用で鬱屈とした女の子をコミカルなタッチで描いてきた大久明子監督の代表作。本作で初主演を演じた松岡茉優はこの作品を機にブレイクし、今や最も旬な女優のひとり。

 綿谷りさの同名小説の映画化で、24年間恋愛経験ナシ、絶滅動物愛好家、妄想癖のOLヨシカの日常を描いた暴走系恋愛ラブコメディ。
 監督・脚本に加え撮影も女性で、リアルな女性の感性に振り切った作品で、実に痛快、トホホな共感もひとしおです。

 脳内では妄想とおしゃべりが止まらないのに、実際はあくまで口ベタ。そんな思い込みの激しい女子を演じる松岡茉優がとにかくはまり役。かなり素っ頓狂なキャラクターであるにも関わらず、なぜか身近でリアリティーを感じてしまう主人公の魅力が作品をぐいぐい引っ張っていきます。

 バラエティー・コメディ出身の監督だけあって笑いと間のセンスはさすが。ミュージカル仕立てのシーンや独特の音響効果などの演出も相まって、終始高揚感が心地良いエネルギッシュな作品です。
タナダユキ監督「お父さんと伊藤さん」
お父さんと伊藤さん
 時代の空気を軽やかなユーモアで表現することに長けたタナダユキ監督。監督10作目となる本作は、現代の高齢化問題にフォーカスを当てたホームドラマです。

 若い世代は旧来の家族という形に縛られない多様化の流れの中にあり、一方親世代の老いとどう向き合っていくかという問題も抱えていて悩ましい。
 世代間ギャップを抱えてぎくしゃくする父娘と20歳も年の離れた娘の恋人、伊藤さんがひょんなことから同居することになり・・・。奇妙な3人の共同生活がコミカルに描かれます。

 長年仕事に人生を捧げ、一家を支えてきたプライドの高いお父さん、厳しく育てられた反発もありながら、父への愛情と責任感で素直になれない娘は、とても今風で、身につまされる親子像です。
 そんな父娘の間でひょうひょうとしている伊藤さんは、バツイチフリーターの50おじさん。一見社会的にはゼロみたいなのだけど、実は誰よりも自立していて、同時に家族の大切さも一番理解している。
 他人ならではの風通しの良い関係性が新鮮で、気負わず楽しんで見ながらも、これからの家族の形について考えさせられる、タナダ監督らしい時代性を持った作品です。
山戸結希監督「溺れるナイフ」
溺れるナイフ
 現役女子大生監督として2012年に自主映画「あの娘が海辺で踊っている」を発表、以降「5つ数えれば君の夢」の監督、オムニバス映画「21世紀の女の子」の企画プロデュースなど、思春期の少女を描くことを得意とする山戸結希監督が、ジョージ朝倉の人気少女マンガを実写化した作品です。

 若手俳優では申し分ない人気と実力を誇る小松菜奈と菅田将暉を主役に据え、刹那的な十代の景色を、美しく激しく詩的な感覚を持って描き出しています。

 監督自身が主人公夏芽と近い世代であり、少女の感性に深い理解をもって演出しているゆえ、女の子が女の子のリアルをそのままに描いている面白さがあります。
 若さの自己拡大した、しかし切羽詰まった十代の切実さを表現すべくさまざまな工夫が凝らされた演出、とりわけクライマックスの夢と現実を行き来するような陶酔的なシーンが印象的です。
枝優花監督「少女邂逅」
少女邂逅
 若手映画監督の登竜門である映画祭MOOSIC LAB(ムージック・ラボ)で観客賞を受賞した23歳の枝優花監督による長編デビュー作。

 14歳の頃に遭ったいじめとそれによって場面緘黙症になって声が出なくなってしまった監督自身の実体験を元に作られた作品です。

 子供っぽさの残る何気ない会話の中の、生きるか死ぬかぎりぎりの綱渡りをしているような繊細で切実な感覚。一見台詞の少ない寡黙な作品ですが、少女達の心の中は嵐のようにドラマチックに動いていて、終始息を詰めて見守るような張りつめた緊迫感があります。

 また、少女の心象風景の独自の映像表現が効果的で素晴しく、引き裂かれた世界でいじらしく必死に生き延びようとする少女たちのあやうさと無垢な美しさに胸が締め付けられます。

 シリアスな本作のアナザーストーリーとして作られたWEBドラマ「放課後ソーダ日和」はぐっと楽しく可愛らしい作品になっており、こちらも要チェックです。
穐山茉由監督「月極オトコトモダチ」
月極オトコトモダチ
 会社員として働きながら製作した自主映画ながら、東京国際映画祭に出品、MOOSIC LAB2018で4冠を受賞するなど、高い評価を受けた穐山茉由監督の長編デビュー作。

 徳永エリ演じるWEBマガジンのライター那沙が、めんどくさい泥沼にはまる心配のない、安心で気兼ねない男女の友情は手に入るのか?をテーマに、「レンタル友だち」を仕事とする柳瀬と取材目的で月極契約をするというストーリー。

 終始さらりとライトなラブコメディの雰囲気なんだけれど、時折どきっとするようなリアルな女性心理が垣間見える。傷つかずスマートにやりたいと思いながらも心の奥のざわざわした欲は抑えきれなくて。そんな不格好でいじらしい那沙の女の子ぶりに親近感を憶えます。

 レンタル友だち柳瀬のほどほどのイケメンぶり、つかず離れずの距離感と言ってほしいことやってほしいことを心得た絶妙な振舞いに脱帽。主人公と同年代の女性監督ゆえに、柳瀬が女性にとって完璧にツボを押さえたある意味「理想」のキャラクターになっているところも納得です。

 監督の男女比は男性が9割以上を占める日本映画界。しかし紹介作品のように、女性監督だからこその深い理解や独自の視点や問いが面白さにつながっている作品を見ると、今後、女性監督から新鮮な表現が生まれることがますます増えそうな予感。 ジェンダーの壁を超えて活躍する才能がどんどん開花することに期待したいです。

Writer | 谷直美

映画と旅と赤ワインをこよなく愛するフリーライター。映画レビュー・コラムのほか、人物インタビューやイベント取材など幅広いジャンルで執筆中です。

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