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これも愛。人間の奥深さを描いたラブストーリー5選

2020.02.19(Wed) | 足立美由紀

2月は愛を語る月! ということで、今回はラブストーリーを5本ご紹介いたします。といってもハッピーでスイートな恋愛ドラマではないですよ。思わず唸ってしまうような人間の奥深さを描いた作品をセレクトしてみました。これも愛、なんです。

共感度0%の、“究極の愛”の行き着く先『彼女がその名を知らない鳥たち』
彼女がその名を知らない鳥たち
“イヤミスの女王”の1人、沼田まほかるによる20万部越えのベストセラー小説を映画化。第93回「キネマ旬報ベスト・テン」で日本映画監督賞に選ばれた『ひとよ』『孤狼の血』の白石和彌監督がメガホンを取り、蒼井優、阿部サダヲ、松坂桃李、竹ノ内豊ら豪華キャストがゲスい人物たちを熱演。蒼井さんは本作で第41回日本アカデミー賞・最優秀主演女優賞に輝いています。

毎日を怠惰に過ごす十和子は、15歳年上の男・陣治と暮らしています。陣治への嫌悪感を露わにしつつも、彼女を溺愛する彼にパラサイトする日々。そんなある日、彼女は昔愛した黒崎によく似た男性・水島(松坂桃李)と一線を越えてしまいます。

クレーマー女の十和子、不潔で無教養な陣治、イケメンだけれどズルい妻子持ちの水島…と、共感度0%の人物ばかりが登場し、絆と言うにはあまりに利己的な彼らのつながりが、愛・欲情・執着ないまぜに生々しく描かれます。そこに5年前の失踪事件がからんでくることで、物語は息もつかせぬ展開に。

畳みかけるように明かになっていく全体像にハラハラとさせられ、切なすぎる陣治の“究極の愛”に衝撃が走ること請け合い! 登場人物たちの表情をアップで捉え、うちに秘めた想いまでも克明にスクリーンに刻み付けた白石監督は、これが愛と呼べるのか? と我々に問いかけます。
現代女性の心理を描く、ユーモアあふれる婚活ラプソディ『美人が婚活してみたら』
美人が婚活してみたら
松岡茉優主演作『勝手にふるえてろ』の大九明子監督が、婚活女性の本音をリアルエピソードでつむいだユーモアたっぷりの婚活ラプソディ。原作は漫画アプリ「Vコミ」で累計1000万PVを突破した人気コミックで、お笑いコンビ「シソンヌ」のじろうが脚本を手掛け、 “結婚はゴール”という既成概念を前に揺れる女性心理に迫ります。

不倫を繰り返したタカコ(黒川芽以)も、気づけば32歳。不毛な恋愛をやめ結婚しようと婚活サイトに登録します。そこで紹介された、高学歴だけれど私服のセンスは最低な園木(中村倫也)とデートを重ねるものの、いまいちその気になれません。そんな時に知り合ったイケメン・バツイチの歯科医・矢田部(田中圭)に、タカコは惹かれていくのですが。

仕事も容姿も恵まれているのに、恋愛偏差値は低いタカコ。彼女を応援しながらも結婚生活に悩みを抱える親友・ケイコ(臼田あさ美)とは、ふとしたきっかけで大げんかに。お互いがないものねだりの本音をぶつけ合うシーンでは、女優2人の演技合戦も堪能できます。

選択肢が多いが故に悩める現代女性ならきっと共感できる本作。ダサかわいい園木を演じた中村さんと、余裕めいたモテ男に扮した田中さん、それぞれの魅力が炸裂するドキドキシーンもお楽しみに!
憎しみと贖罪に囚われた2人が垣間見せる<極限の愛>『さよなら渓谷』
さよなら渓谷
原作は「悪人」、「怒り」「楽園」など著作の映画化が続く芥川賞作家・吉田修一の長編小説。モデルのYOSHIKIを抜擢したことでも話題になった『タロウのバカ』の大森立嗣が監督・脚本を務め、心に傷を負った妻役に扮した真木よう子は本作で第37回日本アカデミー賞・最優秀主演女優賞を受賞しています。

緑多きのどかな渓谷の町で幼児殺害事件が起こり、実の母親が犯人として逮捕されます。その共犯者として隣の部屋に住む尾崎俊介(大西信満)に嫌疑がかかりますが、実は警察に通報したのは俊介の内縁の妻・かなこ(真木)。そんないわくありげな俊介の経歴に違和感を覚えた記者・渡辺(大森南朋)は、調べを進めるうちに15年前の悲惨な事件にたどり着くのです。

幸せになるために一緒にいるわけではないのに、激しくお互いを求め合う“俊介とかなこ”、幸せな結婚をしたはずなのに体の関係はない“渡辺と妻”。2組の夫婦のまったく異なるこじれた関係が対比的に描かれます。俊介とかなこの因縁はあまりに悲しく、2人の間には到底埋められそうにない暗い溝が横たわりますが、憎しみと贖罪に囚われた彼らが時おり垣間見せる、かすかな希望のような<極限の愛>には激しく心を揺さぶられることでしょう。
「綺麗な手」をきっかけに始まる片恋物語『愛がなんだ』
愛がなんだ
2020年上半期に3本の映画が公開される今最も旬な今泉力哉監督が、『おじいちゃん、死んじゃったって。』の岸井ゆきのと『スマホを落としただけなのに』の成田凌共演でつむぐ切ない片恋物語。角田光代による純度100%の恋愛小説を映画化した本作は、第31回東京国際映画祭・コンペティション部門出品作品です。

28歳のOLテルコ(岸田)は、知り合いの結婚パーティでマモル(成田)と出会い、彼の綺麗な手に一目ぼれ。最初はテルちゃん、マモちゃんと呼び合うような恋の予感にあふれる2人だったのに、いつしかマモルはテルコのことを「山田さん」と苗字で呼ぶようになったのです。

体の関係はあるのにテルコのことを“友達”だと言い張るマモル。風邪をひいた時にはテルコを家に呼びつけ、用事が済んだら終電も気にせず彼女を外に放り出してしまう自分勝手さには思わず腹が立ってしまいます。それでもテルコはマモちゃんが大好きで、どんな形でもそばにいたいと思う~そんな恋のドロ沼でもがく彼女の必死の恋心は、切ない恋愛経験がある人なら理解できるのでは? 今泉監督はテルコがハマった「正解のない恋」を真正面から描き、ほろ苦な余韻を残す恋愛ドラマに仕上げています。
ゲスな監督の「才能に惚れる」という愛し方『下衆の愛』
下衆の愛
『グレイトフルデッド』『獣道』の内田英治監督が、インディーズ映画界の片隅に生息するダメ人間たちの葛藤と映画愛を描く。『泣き虫しょったんの奇跡』の渋川清彦を主演に、でんでん、木下ほうか、津田寛治ら個性派俳優たちが、人間味たっぷりに“ゲスな奴ら“を体現しています。

39歳のテツオ(渋川)はカネなし、甲斐性なしの自主映画監督。昔、映画祭で賞をとった栄光をよすがに、実際は演技指導のレッスンなどで日銭を稼いで暮らしています。そんな折、新人女優ミナミ(岡野真也)にキラリと光る才能を見出したテツオは、久々に新作映画への意欲を燃やすのですが…。

映画への出演をエサに売れない女優たちと快楽にふけり、助監督がハメ撮り映像で稼いだ金をピンハネするゲスなテツオ。ようやく本気を出せる脚本&女優が出現したにも関わらず、映画製作は邪魔が入ってしまいなかなかうまくいきません。

映画の魅力にとり憑かれ、底辺をさまよう人々を活写した本作。商業映画で成功した監督へのマクラ営業やこびへつらう様子は皮肉な笑いを誘いますが、その一方でミナミの才能に心底惚れたテツオが、現実の壁にぶち当たり打ちのめされるシーンはインパクト大でかなり痛々しい…。やさぐれ感たっぷりな中にも、熱き想いをにじませる渋川さんの名演が胸に迫ります。

「これも愛」をテーマにセレクトした5作品、いかがだったでしょうか。ご紹介したのは人生という迷路で右往左往する人々たちを味わい深く描きつつ、“さまざまな愛”を提示したヒト癖ある作品ばかり。もし興味をひかれたら、この機会に本編映像でご堪能くださいね。

Writer | 足立美由紀

フリーライター&エディター。某インターネットプロバイダで映画情報サイトを立ち上げた後、フリーランスへ。現在は各種情報誌&劇場用映画情報誌などの紙媒体、ネット情報サービスほかにて映画レビューや俳優・監督のインタビュー記事を執筆。時には映画パンフレットのお手伝いも!試写室と自宅を往復する毎日です。

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